日はつれなくも秋の風

昼間はまだまだ暑いですが、もうすっかり秋の風を感じるようになりましたね。この時期になると芭蕉の「あかあかと 日はつれなくも 秋の風」という句を想い出します。そしていつも思うのは、やっぱり琵琶は夏が似合わないという事。薩摩琵琶だったら秋から冬、樂琵琶だったら春もいける。しかし夏だけはどうも琵琶の音は響いてこないですね。まあ私のイメージでしかないのですが・・・

琵琶樂人倶楽部にて photo新藤義久

琵琶の音が響き出すのは、秋の風を感じ始めてから、と毎年思います。今年は夏が結構忙しかったのですが、例年ですと8月は月に3・4回程度の演奏会しかなく、毎年夏はゴロゴロ夏休み状態です。9月に入ると気合も元気も上がってくるのか、演奏会もぐっと増えてきて、秋の演奏会シーズンに向かって、調子が戻ってくるのが常です。
先日は琵琶樂人倶楽部にて朗読家の櫛部妙有さんと演奏してきたのですが、樂琵琶の音と、しっとりとした櫛部さんの語り口がいい感じでマッチして、静かな良い会となりました。ここら辺りが秋のスタートですかね。今月も半ば過ぎから、結構忙しくなります。ありがたいことです。
そして今回のこの櫛部妙有さんとのプログラムは、ほぼ同じ形で10月18日埼玉県の入間市にある、武蔵藤沢の武蔵ホール(https://musashihall.art/)にて再演することとなりました。詳細は近々HPのスケジュール欄にUPしますので、是非チェックしてみてください。
マイルス210代の頃はマイルスやコルトレーンを聴いて、「NYに行くぞ」なんて毎日ほざいていました。
音楽を聴いていて、音楽の内容は勿論の事、それ以外に、風景や風、光等、何かが+アルファで想起されると、グンと沁み入って来ますね。得てして優れた音楽と演奏は、演者側はそんなつもりがないのに、リスナーが色んなイメージを掻き立てて聴いている、聴くことが出来る何かを持っているものです。そうすると音楽は確実に記憶に残って行きますし、人の心を捉えるのではないでしょうか。私にとっては10代の頃から狂ったように聴いていた、マイルス、コルトレーン、そしてアルボ・ぺルト、高橋竹山・・ect.こういうものは今聴いても、一瞬でその世界に飛んで行ってしまいます。想像力を掻き立てられると、音楽の染み渡り具合が全然違うんです。逆に「こういうもんだ」と押し付けるような音楽・演奏は、押しつけがましく作為的過ぎて、どうにも想像力が動き出しません。

作曲する方から言うと、私はいつも風や月、空など、自然の風景をイメージし、テーマにしています。私が春になると梅だの桜だのと毎年ブログに書いているのも、そのイメージを追いかけて、自分の中で膨らませているからです。まあ遊んで回っているようにしか見えないと思いますが・・・。特に私の曲は歌詞が無い分、作曲の動機としてのイメージはとても重要なのです。特定の風景や、ストーリーを盛り込む事も多いのですが、そのものを表現するのではなく、イメージを根底にして、ある種抽象化して行くように自由に音楽を創り演奏します。だから共演者の方によって捉え方が様々で、表面の形はどんどんを変化してきます。でもどんな方がやっても、そこはかとなく根底にあるイメージが浮かび上がる。そんなのを目標にしています。リハーサルでも、音を出しているより曲について話をして、共演者のイメージを膨らませてもらうようにしています。皆さん素敵な感性を持っているので、その人なりのイメージで音楽に命を与えてくれるのが嬉しいですね。


10年前の高野山常喜院演奏会入口看板 共演の笛奏者 阿部慶子さんと。常喜院脇の紅葉

秋の風が吹いてくると詩情も掻き立てられ、曲も浮かんできます。上の写真は10年前の高野山での演奏会のものです。あの頃は毎年10月になると高野山金剛峰寺の前にある常喜院さんで演奏会を開いていたので、高野山のパワーと霊気を体に浴びていたんでしょうね。様々なイメージが浮かび上がり、今とはまた違う勢いがありました。それにしても10年前は若いな~~。
活動の仕方もあの頃と今ではかなり変わっています。意識的に変えたのではなく、自然と今の形に導かれたという感じですね。30代には30代なりの、40代には40代なりのスタイルというものがあり、それは肉体や精神と共に緩やかに変化して行くものです。今50代になって、より自分らしく無理がなくなってきたのは良い事だと思っています。来るべき60代に向けて、もう少し変えて行く必要も感じていますので、来年辺りからまた次の段階へと進んで行くことと思います。

今はやはり作品創りですね。もう少し私独自の世界を形作る為にも、今年来年位で、様々な作品創りが重要課題だと思っています。今一番に考えているのはバラードです。それも薩摩琵琶を使ったバラード。薩摩琵琶では、バラードというスタイルが無かったですので、是非創りたいのです。途中盛り上げて、ストーリーで構成するのではなく、あるイメージや気分、匂い、想い・・そういうものを次は創ってみたいですね。さてどんなものが出来上がるのやら。
ゆううんLive

今月は27日にちょっと素敵なサロンコンサートがあります。

赤坂見附のドイツワインの専門店「ゆううん」にてライブ&生配信による演奏会です。第一部が尺八の藤田晄聖君を迎えてデュオ&ソロによる演奏、第二部はメゾソプラノの保多由子先生を迎えて、メゾソプラノと薩摩琵琶による演奏という、新たな形の琵琶歌によるライブとなっております。これは私が考えて来た琵琶の次世代の姿でもあり、今回が初の試みです。それぞれHPのスケジュール欄に乗せてありますので、ご覧になってみてください。

劇場などのイベントに対して、規制が緩和されてきましたが、是非演奏会はこれからも良い形で続けていきたいですね。配信など、映像はこれからどんどんと進化発展して行くでしょうし、今後の活動でもかなりの比率を締めて行くと思いますが、生琵琶の響きもぜひ体感して頂きたい。次世代の演奏会の形を、これから模索していきたいと思っています。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.