華やぐ時

先日の舞踊作家協会公演は、満員のお客様に御来場頂き、とても華やいだ会となりました。今回は花柳面先生が芸術監督となり、尾上墨雪先生、藤陰静枝先生という大ベテランが最後を締めるプログラムだったのですが、会の数日前に墨雪先生が芸術院会員に選出されて、その式典が当日の昼間にあり、その足で舞台に駆けつけるという事で、出演者、スタッフ、お客様も皆さんお祝いモードで、会場が何ともいい感じに盛り上がっていました。私のような洛外の者には縁遠い世界ですが、何だか華やかな雰囲気の中に居るのは気持ち良いですね。

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終演後 尾上墨雪、藤陰静枝、花柳面、福原百之助 各先生方

舞踊作家協会の舞台では、もう幾度となく演奏させてもらってきました。いつもですとバレエやモダンダンス等、様々なジャンルの踊り手でプログラムを構成するのですが、今回は全ての演者が日舞という事で、何だか背筋がぴんと通っていて清々しい会でした。また今回は長唄囃子方の福原百之助さんとも久しぶりの共演で、その他の曲で助演した福原百貴さんともゆっくり話が出来、楽しい時間となりました。
琵琶をやっている皆さんは日舞や長唄と一緒にやることがあまりないと思いますが、私は邦楽の初舞台が長唄福原流の寶山左衛門先生の舞台でしたし、面先生の舞台は活動を始めた頃から毎年やっていますし、先生の弟子の面萌さんともアンサンブル「まろばし」で組んで色んな曲を創って上演していましたので、日舞は最初から身近な存在でした。長唄は、百之助さんと同じ福原流の笛奏者 福原百七さんとライブハウスから演劇舞台、レコーディングと何度も共演し、長唄五韻会や創邦21などでは百之助さんと私と百七さんとのトリオで演奏したこともありましたので、日舞や長唄とは最初から縁があるのです。また演劇舞台も琵琶を始めた頃からずっと関わっていますので、毎年何かの舞台に立ってます。

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左:キッドアイラックアートホールにて ASaxのSoon・kimさん、ダンスの牧瀬茜さんと
中:麻布区民ホールにて劇団アドック公演にて、俳優の伊藤豪さん、三園ゆう子さんと
右:太田守信さん率いる劇団黒薔薇少女地獄公演にて

私が天邪鬼なせいか、琵琶人とはあまりお付き合いがないのですが、その分、長唄・日舞、能、尺八、筝曲などの邦楽ジャンルや、その他演劇や洋楽系の方々とは活動当初から常に多くの御縁を頂いていて、そのお陰で今飛び回って演奏活動が出来ていると言っても過言ではありません。私はこうした縁のお陰で舞台の持つ華やかさというものを体験し、これらの経験を通して、私は自分がどういう存在なのかを勉強させられてきたのです。私はフロントで面先生や墨雪先生のように舞うようなスターではありません。しかしだからと言って伴奏者タイプでもありません。ではどうしたらこの自分の持つ個性と音楽を届ける事が出来るだろうか、そんな事をずっと考えて来ました。
今やっと自分の道がはっきりとして独自のやり方でやっていますが、琵琶の様な個人芸はともすると自分が得意なものを披露するというオタク感覚に陥入りやすい。これではとても活動は展開して行けません。私はこれ迄様々なジャンルの先輩達に囲まれてきた事で、そんなオタク感覚に陥る事無く、目を開かせてもらい、やっと自分のやり方や行くべき道が見えて来たと思っています。

2010-6相模原17m
左:寶山左衛門先生追悼の会 大分能楽堂にて 福原道子さん 福原百桂さんと

中:相模原南市民ホールにて 俳優の伊藤哲哉さん コントラバスの故 水野俊介さん ヒグマ春夫さんの映像作品と

右:琵琶樂人倶楽部にて 能楽師の安田登先生と


琵琶樂にももっと華やかな舞台が欲しいですね。曲の題材もいつまで経っても人の死ぬような話ばかりでなく、恋の歌あり、アップテンポのノリノリの曲あり、若者の心情をうたった曲などバリエーションのある演目が出来上がって行くと、リスナーにも共感を持ってもらえるし、舞台も華やかになると思います。正直言って今の弾き語り曲は全てパターンが同じで、歌詞が変わっているだけで何を聞いても同じ曲にしか聞こえない。軍国時代の旧価値観で出来たものを未だにやっていてはリスナーは付いて来ません。何もバンドを組んでポップスをやるという事ではなく、新たな感性で様々な曲調や色んなジャンル・奏者との共演や、今迄にない演奏形態をどんどん創り上げて、琵琶樂の魅力を次世代のリスナーに届ける位で良いのではないでしょうか。

舞台は日常を離れ、異次元へと誘われる場所です。そこには華やかさが不可欠なのです。私は派手なものは出来ないですが、私なりの華やかな舞台を創って行きたいのです。

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