新相棒来る!Ⅱ

先日UPした継琵琶には色々と反応がありました。是非分解した写真を見てみたいという声もありましたので、いくつか紹介します。

分解全体ネック細工

こんな感じになります。ネックとボディーは凹凸の細工がありまして、その細工をカバーするのがこちら

細工カバー

ボディーの受け側にもこんな感じのカバーが付きます。もう本当に石田さんの技が冴え渡り、分解・組み立てを繰り返しても、サワリがおかしくなる事はありません。私の琵琶は1本調子という一番低い調子にチューニングされていて、絃も極太のものを張っているので、一の糸のサワリはちょっと気を使いますが、他の絃及び各駒のさわりは全く問題ないです。

これがケースに入るとこんな感じ。実際は駒カバーや覆手カバーをつけて収納します。

ケース内部

そして上蓋の方にソフトケースを入れて運びます。旅先では一度組み立てたら、組み立てたまま運ぶ方が音が安定しますので、ソフトケースも持っていかないと、行った先でいくつかの演奏があるツアーは出来ません。一回だけの演奏の時はもっと小さなケースに入れて運びます。

嘉辰小谷デュオ150918-s_塩高氏

左:音霊杓子の小谷さんと朗詠「嘉辰」演奏中 右:箱根岡田美術館にて

もうここ数年は薩摩琵琶と樂琵琶の両方を使う演奏会が主になってきていて、いつも誰かに手伝ってもらっていたのですが、これでやっと自分ひとりで、そういう演奏会にもある程度対応が効く様になりました。
演奏会では、琵琶の歴史や変遷の話をしながら演奏をするのですが、それは何よりも琵琶楽の長い歴史が育んだ豊かな世界をぜひとも味わっていただきたいからです。だから近現代の薩摩琵琶と共に、最古典の樂琵琶も演奏します。そうなるとやはり常に二つ抱えてゆくしかない、という訳なんです。

薩摩琵琶の会では、「古典です」と言い切ってやっている演奏会もよく見かけますが、私はいつも能や長唄のベテランとやっていることもあって、薩摩琵琶が「古典です」とはとても言えません。薩摩琵琶は流派というものが出来てまだ100年程。曲のほとんどは大正から昭和に出来た曲ですし、鶴田流にいたっては70年代から80年代にかけて流派となったくらいですので、やはり琵琶楽の中でどれが古典で、どれが近代で、どれが現代なのか正確な情報をアナウンスするべきだと思います。その上で、古典も現代も聴かせる演奏会を開くのが、全うな琵琶人の在り方だろうと思っています。
琵琶楽の正しい歴史と変遷を判ってもらって、魅力ある色々な琵琶楽を聴かせて、是非琵琶ファンを増やしたいですね。

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巷では薩摩・筑前の近現代の琵琶しか聴けない演奏会がほとんどなので、古代から続く樂琵琶を聴いていただくと、その音色や楽曲にびっくりされる方がとても多いです。今まで刷り込まれていた琵琶=耳なし芳一、べんべんというイメージではなく、樂琵琶から流れ出る音楽はメロディアスであり、且つ大きな空やさわやかな風を感じるような大らかな世界なのです。だからその大きな世界に接っしていただくと、様々な感想を投げかけてくれます。
私は源氏物語などの話もしながらやるので、中には古典文学に描かれているエピソードと共に、想いをいにしえの都へと膨らましてゆく方も居るし、遠くシルクロードへと想いを馳せる人も少なくないです。やはり樂琵琶を抜きに琵琶楽は語れないですね。

千数百年という時間を経て、時代と共に様々に形を変え、連綿と受け継がれている「琵琶」というものをやっている以上、私は古典から現代まで聴いてみたいし、弾いてみたい。自分のオリジナリティーは何よりも大事ですが、だからといって自分の世界に閉じこもって、その深く長い魅力的な歴史に目を瞑る訳には行かないのです。私は聴きに来てくれる方にも是非とも、琵琶楽の最先端と最古典を聴いてもらいたいのです。だから今回の継琵琶は素晴らしい相棒になってくれると思っています。そのうち樂琵琶の継琵琶も作ってもらわないと・・・・?

先ずは来月頭の京都大阪の演奏会で、樂琵琶とこの新相棒を持って行って、お披露目です。

T32
兵庫芸術文化センターホールにて

さてこれから演奏会が目白押しです。色々ありますが、先ずは一昨年から俳優の伊藤哲哉さんとのコンビでやってきた「方丈記」を日本橋富沢町樂琵会でやります。昨年はかなりの演出も含めた形での舞台でしたが、今回はごくごくシンプルに聞いていただきます。継琵琶といえばなんといっても鴨長明ですから、ドンピシャという感じですね。6月15日富沢町の小堺化学ビル地下MPホールで開催します。

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そして次の16日には東久留米の成美教育文化会館にて、ヴァイオリンの糸井マキさんとのジョイントコンサートです。薩摩琵琶の迫力ある音色をたっぷり聞きたいという人にはこちらがお勧め。ゲストに尺八の吉岡龍之介君を迎えて「まろばし~尺八と琵琶のための」、弾き語りで「壇ノ浦」など演奏いたします。

よき相棒を得て、更に充実した演奏会をどんどんとやって行きたい。乞うご期待!!なのです。

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