もう今年もあっという間にここまで来てしまいました。今年も本当に多くの方々にお世話になりながら、色々なものに挑戦し、実現し、充実した一年でした。沢山の方々に演奏会に来ていただき、心より感謝しております。琵琶奏者として、数多くの舞台の機会を頂き、作品を発表し、演奏し、生業としてやって行くことが出来るという事は幸せな事だと、年齢を重ねるごとに感じております。今年もまもなく一年が終わると思うと感無量です。
今年も多くの記憶が今甦っています。年の初めに船旅でカリブ海の国々に行ったのも面白い体験でしたし、日本橋富沢町樂琵会を発足させたのも大きなチャレンジでした。毎回ゲストを呼んで開催する事を趣旨としてやってきましたが、今月は津村禮次郎先生を迎えることが出来、一年を締めくくるにふさわしい会となりました。琵琶樂人倶楽部の方は100回目を迎え、記念の演奏会もリブロホールで開くことが出来、10年という年月の積み重ねを改めてかみ締めました。
花柳面先生・萩谷京子先生とのティアラの公演も忘れられないですね。樂琵琶の音があんなに生きて響き渡った舞台は今迄ありませんでした。PAも上手く使うと素晴らしい効果が出ますね。
方丈記の公演では、映像と舞台があれほどリンクして異次元を作り出すとは思いもよりませんでした。その続編のように映像作家のヒグマ春夫さん主催のパラダイムシフトシリーズに毎月のように参加して、Soon・Kimさんや牧瀬茜さん、灰野敬二さんらと即興演奏にこれだけ取り組んだ年も初めてでした。
また語り部の方々ともご一緒して、自ら声を出すという事に関しても自分の中で大きな進展を感じました。本当に勉強になりましたね。戯曲「良寛」の公演など定番となってきているものも充実してきて、音楽活動に関しては実に良い一年だったと実感しています。
多くの貴重な日々を頂きましたが、去り行くものもありました。物事でも人でも過ぎ去る時は必ず来るものです。今年は母が亡くなったこともありますが、残念ながら自分の力でどうにかなるものではないということも、また一層心に感じ入った一年でした。
今年は毎月演奏させてもらったキッドアイラックアートホールが年内で閉館。そして琵琶で活動を始めた頃からお世話になっていた民族音楽プロデューサーの星川京児さんも亡くなり、何か時代が次のステップに進んだような気がしました。中には人生色々で疎遠になってしまった人もいたりして、今年はいくつかのお別れが続いた年でもありました。
私が琵琶の活動を始めたばかりの頃、尺八のグンナル・リンデルさんと組んだコンビ名が「Panta Rhei」。これは万物流転というヘラクレイトスの言葉ですが、その名の通り、時の流れとともに、人もものもあらゆるものが変化し続け、今に至っているということです。それらはみな「はからい」というものなのでしょうか・・・・。
しかし今年になって始まった事もあり、また出会いも多々ありました。終りもあれば、ワクワクするような出会いもあって、つくづく縁というものを感じる一年でした。
今また何かが始まる予感が沢山あります。来年は興味深いプロジェクトもいくつか始まりますし、面白く展開しそうなものもありますし、今後コンビネーションが生まれていきそうな知り合いもいます。自分自身の歩いてゆく道筋も更に明確になってきて、自分がやりたい事も具体化してきました。
とにかく私は日本音楽の最先端に居ようと思います。そのためにも伝統というものをもっと勉強し、古典に親しんで行きたい。ジャンルや流派などの小さな枠に囚われることなく、視野を大きくして日本音楽をやって行きたい。けっしてそれが邦楽器ポップスバンドみたいなものではない事は皆さんよくわかってくれていると思いますが、表面をお着替えしただけのようなものは私にとって意味は無いのです。作品は勿論の事、感性も技も次の時代を示すような最先端でありたいのです。次世代に受け継がれるような作品をどんどんと創って、世界に向けて発信していこうと思います。
多くの方のご縁に包まれている事を実感した一年でした。
来年もよろしくお願いいたします。