Various facets2018

梅雨のじめじめとした日々ですね。蒸し暑かったり、妙に寒かったりして、体調には厳しい時期です。
そんな中ですが、相変わらず演奏会の日々を送っています。定例の琵琶樂人倶楽部、広尾の東光寺「能を語る 狂言を語る」、日本橋富沢町樂琵会「薩摩琵琶古典から現代へ~石田克佳さんを迎えて」、早稲田スコットホール「神田音楽学校創立40周年記念演奏会」をここ2週間ほどでやってきました。

スコットホール神田音楽学校40周年神田音楽学校40周年公演m
スコットホールでの演奏と手作りのチラシ。この学校の気さくな校風がそのまま出てますね

特に神田音楽学校の記念演奏会では、いつになく盛り上がりました。この学校はとにかく講師陣がハンパなく面白い。各講師のレベルも高いし、指導も大変熱心にがんばっていて頭が下がります。今回も華のある素敵な演奏をしてくれました。さすがに現役バリバリで活躍しているプロは違う!!。琵琶のお師匠さん達もこれくらい元気ないと。

私はこういう異ジャンルの人から学ぶ事がとても多いのです。普段のお付き合いも、邦楽以外の人との交流ばかりです。逆に琵琶人とのお付き合いがあまりありません。学ぶというと硬いですが、一緒に話をしていて、多くの事に気づかされるという感じでしょうか。勿論音楽家だけでなく、美術家や文学系の人。芸術家以外にも武道家やお店をやっている人や、お勤めの方等々、自分とは違う形で生きている人と会って、話しをしたり呑んだりするのが、実に面白いですね。
IMG_0105日本橋富沢町樂琵会にて photo Mayu
私は常にモダンということを指針にしていて、そこはずっと変わりません。何をやっても現代の中での琵琶という視点を持ってやっています。そういう点では先日の国立劇場の新作初演も、古代の楽器で最先端の音楽をするという趣旨でしたから、まさしく私が弾くべき曲だったんでしょうね。
あくまでこの現代に生きる音楽を演奏するのが私の仕事。現代人はこの混沌とした世の中で、あらゆるものと関わりながら生きています。だから音楽も多くのものとの関わりの中で演奏され、聴かれるのが現代の琵琶楽の姿だと思っています。世の中とさして関わりなく、自分の好みの世界だけでやっているものは単なる個人的趣味であり、音楽が現実逃避の場にしかならない。そこに本当の夢や創造があるでしょうか・・?。刹那的個人的な快楽があるだけでしょう。

音楽が現実の社会と常にコミットしているからこそ、リスナーと共に分かち合うことが出来る、と私は何時も思っています。時代と共にあるからこそ、そこに夢があり、喜びがあり、そのほか様々な現代に生きる人の想いが、共感を持って次の時代へと受け継がれてゆくのではないでしょうか。
当然世代が変われば形も時代と共に変わって行きます。逆に変わらないものは、激動するこの世の中に背を向けているとも云えるかもしれません。過去の形をなぞっているようなものは、既に分かち合える音楽ではない・・・・そんな風にも思うのです。
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若き日、日暮里の和楽器ライブハウス和音にて

私は琵琶奏者の中では誰よりも様々なタイプの形で演奏をしていますが、樂琵琶も薩摩琵琶も演奏する曲はほとんどが自分で作曲したものだし、即興演奏も譜面でのアンサンブルも弾き語りも、どれも私の中では同一線上に在るので、エンタテイメント系を除き、常に塩高節状態。表面の形が変わっても、中身はさほど変わらないのです。壇の浦を弾き語っても、ダンサーと即興演奏していても弾く内容はほとんど同じです。
20年程前、琵琶で演奏活動を始めた頃、日暮里の和楽器ライブハウス和音で演奏した時、旧い友人が来て「楽器がギターから琵琶に変わっても相変わらず塩高君だね」といってくれましたが、自分の音楽をより確実に表現しようと思って琵琶に転向したのだから、琵琶に持ち替えたら、より明確に私の音楽が出て来て当然なのです。モダン、現代という視点が基本的に変わっていない以上、表面の形が変わりこそすれ、皆同一線上に繋がっているのです。様々な経験を経て、試行錯誤もしてきましたが、私は私以外にありえない・・・。

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キッドアイラックアートホールにて Per:灰野敬、尺八二:田中黎山各氏と即興によるライブ

日本人はこの道一筋というのが大好きですが、この道一筋という方ほど、幅がありますね。実は色んなことをやっていて、その様々な営みの中で確実に作品を発表している。よくよく見て居ると、時代と共に表現のやり方も形も変えている。古典芸能の達人たちは皆そうですね。
そんな方々とは、話をしているだけでも多方面に話が渡って本当に面白い。きっと自分の専門分野を極めていくと、色々なものがそこから見えてくるのでしょうね。自分の知らないことに常に興味津々としているし、知識一つだけをとっても、自分の持っているものに安住しない。求めている。

残念ながらオタク状態の音楽家はとても多いのが現状ですが、私は、様々な音楽に触れて生きてきた自分の人生の中から湧き上がる音楽をやっていくのが、一番ピュアな姿だと思います。誰の真似でもなく、流派などのこだわりも無い。琵琶に於いては永田錦心や鶴田錦史の志を自分なりに受け継ぎたいと思うものの、あくまでオリジナルな作品を作って行く。それがどう評されようが、それしか出来ないですね。
東洋大学講座L季楽堂2018

今週も色々な演奏会をやります。土曜日は井上円了ホールにて津村先生と「方丈記」の公演。明けて7月1日には朗読の櫛部妙有さんと練馬季楽堂にて公演と続いていますので、なかなかのんびりという気分にはなりませんね。そろそろ創作のための時間を取りたいと思います。

是非演奏会に起こし下さい。

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