もうすっかり新緑の季節になりましたね。若葉というのはやはり気持ち良いもので、新しい命の萌える緑の中を歩くと本当に元気をもらったような気分になります。日本人は自然と共生して生きるのが基本。これからの人生は豊かな自然の中で暮らしてゆきたいものです。
私は「一匹狼」とよく言われます。まあ私は組織というものに属していないので、旧態然としている邦楽の世界から見ると、自ら作曲して、CDを発売して、自分で演奏会を張って活動するやり方が、一匹狼的に見えるようです~ジャズやロックでは当たり前なのですがね~~。
そもそも音楽家・芸術家というのは独創性や創造性こそが命であって、群れの中に安住しているようでは、ろくなものは出来ないもので、古今東西、芸術集団などは常に作っては分裂、消滅を繰り返しています。集団は少し続くと、芸術性よりも集団を維持しようという方向になることが多く、自由な活動が制限されてしまう。そのような所に到底芸術家は居ることが出来ないのです。芸術家も音楽家も基本は孤高の存在です。集団の肩書きや名前を掲げているような人は、少なくとも芸術家ではありえません。
幸い薩摩琵琶は他の邦楽ジャンルとは事情が異なり、まだ流派というものが出来て100年程度なので、血統やら何筋というものも無いし、基本的に個人芸ということもあって組織としての縛りもありません。また市場そのものが無いので、自分で開拓出来る実力さえあれば、自由に活躍出来るのが私にとって好都合でした。
そんな私も、50代になって常々思うのは、パートナーの大事さです。以前は演奏のパートナーに何でもかんでも「あれを演奏してくれ、これも演奏してくれ」と次々に曲を書いては頼んでいましたが、それは単に相手に依存していただけなんですね。やはり相手を生かすような曲を書かないと良い音楽に成りません。私自身がもっとパートナーの個性を尊重していれば、そんな要求はしなかったでしょう。
遅ればせながらやっと私も余裕が出てきたのか、「この曲は○○さんに、あの曲は○○さんに」という具合に相手の持ち味を考えて作曲するようになりました。パートナーは一人ではなく、色んな場面・分野に夫々パートナーが居ていいし、相手と良きパートナーシップを築けてこそ、演奏環境も良くなり、楽曲も舞台もクオリティーが上がるのです。
皆一人一人得意分野もあるし、独自の音楽性もある。結局は相手をどれだけ理解し付き合えるか、もっと言えば愛を持って接することが出来るか、そういうことだと思うようになりました。これは人間だけでなく物事全般にわたると思いますし、楽器にも夫々の特徴を生かすような使い方をしてあげないと、良い音は奏でてくれません。
ルーテル市ヶ谷教会にて 花柳面先生と
考えてみれば、私は良き師匠にも恵まれました。これも一つのパートナーシップ。20代に作曲の石井紘美先生や、ジャズギター潮先郁男先生などに世話になったことが、今の自分の活動の源になったような気がしています。小学生の時にはクラシックギターを習っていたのですが、その先生がとても柔軟な方で、それまで聞いたこともなかったフォークやカントリーを教えてくれたのが、今考えてみると、外に目を開かせる良い体験になったと思います。その他、邦楽舞台のデビューは、長唄の寶山左衛門先生の舞台でしたし、何時もお世話になっている音楽学の石田一志先生、能の津村禮次郎先生、日舞の花柳面先生、哲学の和久内明先生から教えられたこともとても大きいですね。振り返ってみれば良き先輩達に恵まれていたんだな、と今更ながらに思えてきます。
私には学歴も受賞暦も何にも無いですが、良き先輩方々恵まれ、演奏活動でも全国を回らせていただき、海外ではヨーロッパやシルクロードでコンサートツアーもやらせていただいたりして、本当に多くの貴重な機会にことに恵まれたと思っています。多くの先輩、先生そしてこれらの体験が出来たことは何ものにも代え難いですね。これも夫々のパートナーシップがあったからこそ、だと思っています。
普段の音楽活動に於いても、私は本当に色々な演奏のパートナーにも恵まれていると最近良く感じます。色んなことを話し合うことが出来、アドヴァイスをくれる仲間も居るし、様々な分野の仲間が色々と教えてくれたりもします。皆財産としか言いようがないですね。
音楽をやっている最中、例えば作曲したり、琵琶を弾いている時は一人なので、孤独な作業を延々とやっていますが、これをネガティブな意味での孤独とするのか、それとも森有正が「バビロンの流れのほとりにて」で書いているように、尊いものとして捉えるのかで大分違いますね
芸術家は基本的に孤独な存在であるのが第一条件だと、私は思っています。勿論尊い孤独でなくてはいけません。その上で多くのパートナーシップを持つのが理想的だと思います。我が身の「真の孤独」を実感せずに徒党を組むと、必ず馴れ合いが生じ、組織の論理が優先します。それでは個としての感性が薄れ、自分の表現活動が出来ない。先ずは個としての孤独の自覚が何よりです。
個として自立した存在であるからこそ、他者とパートナーシップが築けるのです。これからも素敵なパートナーと良い関係を築いてゆきたいものです。