このところの東京は、どうにもならない状況が続いていますね。先日は新宿の中規模の劇場での舞台公演にて、クラスター感染があったという事で、今後の舞台を開いてゆけるのか、音楽人演劇人は大変心配しています。
クラスターのあった劇場は新宿のビルの中にあり、窓一つ無いかなりの密閉空間。演目は盛り上がるエンタテイメント系の内容だったそうですが、時期を考えると、ちょっと配慮が足りなかったとしか言えませんね。邦楽でも語りを主とする舞台は、大きな舞台を使って、客席も半分以下に間をあけて使わない限り、今後簡単には会は開けないでしょう。
幸い私は歌はほとんど歌わないので、こんな状況の中でも少しづつ小さなライブを重ねて行ってますが、これからを考えると、出口が見つからないですね。


そして来月には、座高円寺にて戯曲公演「良寛」が控えています。大きめのステージに出演者は3人のみ。客席も間をあけての上演です。エンタテイメントではないので、観客と盛り上がるような内容ではないですが、主催者で、脚本を書いた和久内明先生もさぞかし多方面に気を遣いながらの運営だと思いますが、やる方としては、充実した会にしたいです。
この演目は、もう何度も再演をしているのですが、上演の度に台本も書き直され、キャストも変えて再演されています。今回は主演の津村禮次郎先生と私の他、(以前は笛の大浦典子さんも一緒でした)新たなキャストに中村明日香さんを迎えての公演となります。中村さんはダンサーであり、歌手でもあり、非常に幅広い視野で活躍している方ですので、「良寛」も多彩さを増して幅が広がって行くと思います。
中村明日香オフィシャルサイト https://tamentai-asuka.com/

ここはとっても小さなお店なのですが、開けっ放しで、オープンスペース的な感じに出来るお店という事もあり、6月からやらせて頂いています。フラメンコギターの日野道夫先生のお声がかりで、ウードの常味裕司さんや尺八の藤田晄聖君などが定期的にライブをやっています。
私の次のライブは8月1日土曜日、フルートの神谷和泉さんとデュオのライブをやります。18時開演です。是非お越しください。
また8月は琵琶樂人倶楽部で、夏恒例のSPレコードコンサートを開催します。
今回は珍盤もあり、今までかけていないSPをかけます。前半が琵琶のSP、後半はマスターがセレクトした古関裕而の曲をかけて行きます。古関裕而は朝ドラ「エール」で話題ですが、視聴していて思ったのは、往年の歌手達の歌が上手さです。素晴らしいクオリティーです。これについては、また改めてお知らせします。
これからの演奏活動については、本当に先が読めません。先日も琵琶仲間と話をしたのですが、いくら対策をしても、小さな会場では、大きな声を出して語る芸をやることは、新宿のラスターの件の事もありますので、本当に難しくなってくるでしょう。邦楽関係者はよく考えなければいけないと思います。お客さん自身も来場する事を敬遠するでし、特に年配者の方は気を付けないといけません。小さな会場でのライブはこれからどうなってしまうのでしょう。
琵琶樂人倶楽部は解説と演奏で、あまり歌が無いので、まだ何とかやっていますが、これからは地方公演や海外公演、サロンコンサートなどが、事実上消滅しかねない勢いです。

日本橋富沢町楽琵会にて 津村禮次郎先生と
このような未曾有の時には、文化芸術は後回しという意見もありますが、私は今、文化を忘れたら、人間も社会も崩壊してしまうのではないかと思っています。日々の生活や、お互いの関りが根底から崩れてしまうようなこんな時にこそ、文化が人間を人間として保ってくれるような気がします。マスク着用が義務の様になり、挨拶の仕方までも変わって、これまでの生活が根こそぎ変わってしまうかもしれない、そんな今の社会の姿は、新しい時代と言えばそれまでですが、かなり社会としては厳しい所に来ていると思うのは私だけでしょうか。
国家を国家として成立させているのは「文化」です。それぞれ独自の文化の上にその国なりの政治や経済が成り立っているので、文化の無い国家はありえないのです。もし今の日本人が、「音楽なんて楽しけりゃいい、腹の足しにもならない」という感性しか持てなかったら、日本はほどなく滅んでしまうでしょう。音楽の無い民族はどこにもないのです。それだけ文化・音楽は人間の営みに直結しているのです。医療の在り方についても同じですが、目の前の事しか見えない近視眼的な視野思考は、良い結果をもたらさないとしか思えません。
それに日々消毒液を所かまわず振りまいていたら、虫や植物、我々を守ってくれる微生物は生きて行けなくなって、コロナは防ぐことが出来るかもしれませんが、その状態は人間にとって大変危険な状態になっていないでしょうか。人間そのも
のも、触れ合う事を避けて暮らしていたら、何よりも心が崩壊しかねない。その上、人間を取り巻く環境も破壊してしまったら、いったいどうなるのでしょう。今の先の、次の社会の事を考えなければ、本当に日本が崩壊してしまいます。
のも、触れ合う事を避けて暮らしていたら、何よりも心が崩壊しかねない。その上、人間を取り巻く環境も破壊してしまったら、いったいどうなるのでしょう。今の先の、次の社会の事を考えなければ、本当に日本が崩壊してしまいます。

昨年の「あうるすぽっと」公演より 安田登先生 玉川奈々福さんと photo 山本未紗子(BrightEN)
この未曾有の時代に、自分が出来ることはやはり音楽を創り、演奏することだと思っています。確かにコロナウイルスに効く訳ではありませんが、効率的に役に立つことだけを追いかけていたら、人間は生きて行けないのです。それは甘いお菓子も、酒もなくなり、美味しい食卓も、家族のだんらんも無く、ビタミン剤のみで生きているようなものです。社会にも時代にも、そして個人にも弾力のような余裕があってこそ、私たちは生活して行ける。むしろ毒のようなもの(例えば酒)が人を生かし、文化を生み、知性を生み、社会を創って行くのではないでしょうか。ステレオタイプに生き、決まりきった生活おt行動しかしない、昔のSF映画に出てくるような人間だけが居る街に、あなたは住みたいですか?。陰陽、清濁、光と影、あらゆるものが共存して多様性に溢れているからこそ、人間の社会と成り得るのではないでしょうか。
今は何よりも医療が優先だと思いますが、目の前に振り回されて自分の首を絞めていては、日本の社会のサスティナビリティーは限りなく低くなってしまいます。だからこそ、いつの時代も、どんな時でも良い音楽が溢れていて欲しいのです。