
地下の劇場に向う壁には歴代出演者のサインがひしめいて、ちょっとアングラな雰囲気も漂う所ですが、タシュケントの人でこのイルホムを知らない人はいない、というほどの有名な劇場でもあります。
もちろん琵琶法師もしっかり名前を書いてきました。
この日は打ち合わせが午後からでしたので、午前中ちょっとだけ市内を回ってきました。さすがにサマルカンドまでは行けませんでしたが、旧市外にあるモスクとバザールで少しばかりの観光気分を味わいました。
ガイドしてくれたのはエレーナさん。日本語もばっちりで、ジョークも飛ばすなかなかの方。途中、通訳のローザさんもバザールで合流し皆でウズベキ料理の昼ごはんを食べてきました。

今回同行したメンバーと
素晴らしい装飾のモスク


モスクでご奉仕していた女性達。
さてイルホム劇場では、このツアーのレパートリーとは違って、私の代表作「まろばし」を演奏してきました。日本では琵琶と尺八(又は能管)のデュオでいつもやっているのですが、イルホムでは芸術監督であり、作曲家のアルチョムキムさんがアレンジしてくれました。
まず相方はネイと呼ばれる横笛。他の国でもネイという、斜めに吹く尺八のような楽器もありますが、ウズベキのネイはちょうど日本の篠笛と同じように横に構える笛です。Batirさんというネイの名手の方が吹いてくれました。彼はとっても気さくでフレンドリー。画像が悪いですが、こんな感じです。
こちらはリハーサル


これが本番の時の写真
このデュオのバックに弦楽四重奏と管楽器が付き、ノヴェンバーステップスの小さいヴァージョンのような形で演奏しました。
とにかくむちゃくちゃ格好良かったです。いつかレコーディングしてCDで出したいと、本気で思いました。
何だか怖そうな顔をしていますが、私の隣の方が作曲家で芸術監督のアルチョム・キムさん。The Omnibus Ensembleという現代音楽のグループを率いていて、作曲家としてもヨーロッパで高い評価を得ている方です。
イルホムではお客さんとの距離が近いせいか、演奏も他のホールでの演奏と違い、気合がそのまま伝わるようで実に気持ちよかったです。
やはり自分の音楽がシルクロードの地で高らかと鳴り響くというのは気持ち良いものです。それもウズベキの音楽家達との共同作業で作り上げ、演奏するというのは、何にも変えがたい素晴らしい体験でした。ぜひぜひまたもう一度やってみたいです。
帰りにはこんな美しい女性にサインを求められ、一緒にパチリ!
この日のおまけは大使館の栗原さんお勧めのウズベキ料理店「ジョセフィーヌ」
演奏後の打ち上げで行きました。
ここは本当に美味しくて、普段滅多にパンを食べない私が、どうにも手が止まらない位、このパンは美味しかったです。

そしてこのラグマンという麺料理。これが極めつけに旨かった!麺は手打ちなので、もちもちとして上質のうどんのよう。汁はトマトベースなのですが、とっても品良く、箸が止まらないほどにどんどん腹に収まってゆく感じで、久しぶりの麺に舌鼓。
ここはラム肉もとっても柔らかく、何を食べても美味しく、メンバー皆大満足でした。
大興奮のウズベキスタンでした。さてお次はアゼルバイジャンのバクーへと飛びます。
我々のレパートリーの他、彼女の伴奏をしたり、島唄の前山君とユルドゥスさんのデュオで盛り上がりました。さすが島唄は生活の中から生まれた民謡だけあって、ウズベキの民衆の唄とも何の違和感もなくすんなりと合うんです。皆びっくりしてしまいました。
伝統的な島唄の三線伴奏に乗って唄われるウズベキの唄には会場を埋め尽くした500人の観客もやんやの喝采でした。写真が手元にないのが残念。
こういう時に琵琶は楽器としても、歌の面でもなんとも融通が利かない。あまりに日本的に洗練され過ぎているためでしょうか。せめて楽器の面だけでも三味線のように色々と対応できたら良いのですが、スケールにも転調にも対応しない構造が憎らしかったです。
この日も琵琶楽というものの本質が更に見えた様な気がしました。結局、私はユルドゥスさんのバックでちょっとだけ弾いて終わってしまいました。
しかしこの日は、本番もさることながら、とんでもないアクシデントが発生。リハーサル中に前山君の三線の糸巻きが折れてしまったのです。すぐさまドラムの撥を削って糸巻きを作ろうと皆で話していると、照明の通訳をしている若者が、地下に楽器修理の職人さんが常駐している、というのです。
さすがは国立音楽院!
さっそく地下にすっ飛んでいって頼んだ所、3時間で直せるというので、すぐにやってもらいました。なんという縁なのか、神様のお導きなのか、スタッフ全員、まるで何かに守られてでもいるような気がしてなりませんでした。
このおじさんがその修理屋さん。実に格好良い職人さんでした。見栄えも良い見事な修理で前山君もヴォルテージが最高潮になって、上記の大盛り上がりのデュオに繋がったという訳です。
もちろんその夜のヒーローは前山君。地元TV局が何局も押しかけ、6台のTVカメラに囲まれる中、ラストはここでも観客全員のスタンディングオベーションで大成功の内に終えることが出来ました。演奏時の写真が今手元にないので残念なのですが、本当に良いステージでした。
そして今日のおまけはこちら。

ちょっとわかりずらいですが、国立音楽院の演奏会の前の日に大使公邸の晩餐会におよばれして、和食のコース料理を頂いてきました。いや~~旨い!!!まだほんの何日しか日本を離れていないのに、なぜこんなに鰹だしに郷愁を感じるのだろう??
メニューは
前菜 盛り合わせ 〆鯖と青大根のなます
厚焼き玉子 えびのてんぷら
椀物 帆立真丈清汁仕立
造里 鯖 サーモン
焼物 茄子田楽
煮物 平目 白菜 信田巻き豆腐ロール
食事 御飯 味噌汁 香の物
甘味 季節のフルーツ
どうだ!ウズベキスタンでこれですよ。まいった。
さて次はいよいよ最高ヴォルテージアップのイルホム劇場です。乞う御期待!!
11月15日より30日まで半月に渡るシルクロードコンサートツアーから帰ってきました。
憧れのシルクロードでの演奏会ということで期待はあがりっぱなしだったのですが、先ずは最初に訪れたトルクメニスタンの首都アシュカバットの報告です。
最初から私も含めメンバーがお腹の調子が悪く、ちょっとした旅の洗礼を受けました。なにしろ未知の土地での演奏会とあって、皆緊張もあったと思います。
泊まらせて頂いたのはちょっと古めでしたが5スターの豪華なホテルでしたので、ゆっくりお風呂につかって一休みできました。
トルクメニスタンはいわゆる専制政治の国で、中央アジアの北朝鮮とも言われている国なので、無事に入国できるか正直心配でした。中央アジアの国々はどこでも空港は軍の管轄らしく、軍服にピストル姿の人が必ずいて、話しかけられたりするとちょっと怖かったです。案の定、アシュカバットの空港ではずいぶんと待たされ、入国に時間はかかりましたが、大使館の方とガイド&通訳の方々がゲートの向こうで待っていてくれてゲートを抜けた時にはほっとしました。
右は大使館の小寺さん。中央は黒髪が美しいガイド&通訳のジェネットさん。そして左がトルクメニスタンの将来を熱く語るコブラン君。入国から出国までお世話になりっぱなしでした。
コブラン君はウクライナの大学で学び、その後群馬大学に留学、来年は一橋大学に更に留学して、クリーンエネルギーの研究に情熱を傾ける秀才。将来のトルクメを想い自ら行動してゆく、トルクメの坂本竜馬のような有望な逸材。ジェネットさんも来年は日本に来て、日本語をもっと完璧にしてトルクメと日本を繋ぐガイドになりたいそうで、日本の感性を勉強したい、と言っていました。お二人と再会できることを願って止みません。
トルクメニスタンでは電気と水道がただ!!そのせいか夜になってもビルは色々な色で煌々とライトアップされ、街の中はさながらディズニーランドのよう。首都ということもありますが、その後行った国の中でも一番道が整備され街は綺麗でした。もちろん旧ソ連時代の寂しい感じの古い建物もありましたが、思っていた以上の都会でびっくり。インターネットなどはまだ制限があるそうですが、お酒も普通に買えるし、思っていたよりは自由な感じがしました。ただ娯楽施設のようなものは全く無かったですね。
アシュカバットは50年前に大きな地震があり、街は全て新しかったので、日本人が思うようなシルクロードの雰囲気はなかったですが、シルクロードの地で琵琶を弾くという事は、大きな刺激でした。



初日ということもありメンバーも私も細かなミスが少しばかりありましたが、最後はスタンディングで迎えられまずまず成功でした。
今回は奄美島唄の前山真吾君と一緒だったのですが、薩摩藩の支配と搾取の苦しい生活の中で生まれた奄美民衆の唄が身にしみました。また琵琶の音楽が生活の中で生まれた民謡とは大きく違う性質のものだということもしみじみと感じました。この認識は今後の私の活動の中で大きなファクターになって行くと思います。
そして薩摩と奄美が400年の時を経て、お互いの音楽の源流であるシルクロードで同じステージに立つという事に深い感慨を覚えました。
次はサマルカンドで有名なウズベキスタンに向います。

「琵琶を聴く夕べ」2デイズ終わりました。声の調子は万全とはいえませんでしたが、それでもお客様に助けられて、なかなかいい感じで務めることが出来ました。
会場となったこの蒼は、大正時代に建てられた蔵を改装したギャラリーで、とっても雰囲気がいいんです。30数名でいっぱいのこじんまりした所なんですが、二日間ともいっぱいのお客様にお越しいただきまして、無事終わりました。中には横浜や千葉からのお客様もいて、本当に感謝です。
上の写真は蒼の入り口。そして次が私めの雄姿。

最期はギャラリーのオーナーKさんとお母様

終わってから西荻の老舗ビストロ「さて」で牛肉の赤ワイン煮を3人で食べてきました。旨い!!
さて、明日の朝一番でシルクロードに出発です。旅にハプニングはつきものですが、いったいどんな面白いことが起きるやら??
帰りましたら、たっぷりと報告します。
では、行ってきます~~~。帰りは12月の頭です。それでは皆さんお元気で・・。
昨日の琵琶樂人倶楽部「女流琵琶楽Ⅱ」は賑々しく終わりました。これは昨日出演のお三方。実に充実した演奏を披露してくれました。
今回は筑前琵琶の大久保旭夏さんが四弦を弾いてくれたのですが、今、四弦の筑前琵琶を弾く人がほとんどいないので、大変貴重な存在なんです。今後の活躍に期待したいですね。左:大久保さん、中央:樋渡蓬水さん、右:都錦鳳さん。お疲れ様でした!
そしてこちらはお越しくださったお客様。実は3人とも琵琶を弾く方で、薩摩四弦、五弦、筑前の演奏家でもあります。
琵琶樂人倶楽部は流派などしがらみを超えて集うことの出来る会ですので、これからもどんどんお越しいただきたいと思ってます。
さて、今週は大忙しです。
金曜と土曜に私のソロ演奏会が西荻窪のギャラリー蒼であります。土曜日の方が若干席が残っているとの事ですので、ぜひぜひ起こし下さい。
ギャラリー蒼 http://www.galley-so.com
Tel 03-3331-3681
大正時代に建てられた蔵を改装してギャラリーとして運営している素敵な場所です。古きよき杉並の風情が残ってます。
そしてそして日曜日からは「中央アジア~コーカサスツアー」に行ってまいります。![four_j_musicians[1]](https://biwa-shiotaka.com/wp-content/uploads/2009/11/f312a2bb-s.jpg)
これは今回一緒に行く勇士達。特に奄美島唄と薩摩琵琶が一緒に演奏するなんて事は歴史上あり得ないことなので、かなり注目のツアーとなのです。
詳しいスケジュールは
http://www.jpf.go.jp/j/culture/new/0908/08-02.htmlを御参照下さい。
今年は薩摩藩が奄美に進攻して400年という節目。この節目に歴史を乗り越えて「進攻」から「親交」へと手を結ぼうというわけです。島唄の前山真吾君は期待の若手。凱旋帰国公演を是非奄美でやりたいですね。
なんせ薩摩琵琶の演奏家が九州より南の奄美沖縄で演奏した例がないのです。まあ薩摩藩はそれだけ支配体制を南の島々に引いていたということでしょうが、歴史も政治も超えられるのは音楽の良い所。民族の歴史は夫々色濃く背負っていますが、歴史や古典は大事にしながらもそれに振り回されることなく、次世代に向けて演奏したいものです。私が突破口を開きたいと思います。
ツアーは11月15日から12月頭までのちょっと長い旅になります。このブログも旅に出る前にもう一回書けるかな?という所。金土のソロライブの報告もしたいのですが、なかなか準備に追われていてどうかな~~?
という訳で忙しい一週間です。