昨日、毎月開催している琵琶樂人倶楽部で「薩摩琵琶三流派 敦盛 対決」をやってきました。お客様はちょっと少な目でしたが、若い世代の方が何人も来てくれました。琵琶の会はどうしても先輩格の方々が多いので、若い世代にもっと聞いて欲しいですね。


こちらは今回のお客様。携帯カメラなので、あまりはっきり写っていません、あしからず・・。他のお客様も撮ったのですが、残念ながらぶれてしまっていました。
今回は私の琵琶を作ってくれている石田克佳さんを演奏家として迎え、薩摩正派の「小敦盛」を演奏していただきました。

私の琵琶は塩高スペシャル仕様になっていて、ボディーサイズからちょっとした構造まで全てが私専用に作られています。石田さんが時々私の演奏を聴きに来てくれて、私の求める音や弾き方などしっかりとデータを取って作ってくれるという訳です。楽器の制作者と演奏家がコミュニケーションを取って音楽を作ってゆくというのは、理想的な形だと思います。こういうパートナーシップがないと良い音楽は生まれませんね。これからもよろしく!!
ちなみに私の大型スペシャルはエディーヴァンヘイレンのうねる低音を琵琶で出すべく作ってもらいました。
こちらは中型スペシャル
琵琶は確かに題材のほとんどが古典だし、曲は長いので、現代のエンタテイメント音楽とは程遠い所にあると思います。しかしそこにはとっても味わい深い魅力もあるのですよ。ショウビジネスとしては難しいかもしれませんが、演奏する側も、どうやって聞かせるべきか、しっかり考えないといけません。先ずは面白がってでもいいから体験してもらうことから始めようと思って、こんな企画をやっています。聞くのはもちろん、手にとってみるのはとても良い体験だと思いますよ!。
私は演奏の終わった後は必ずお客様に琵琶を触ってもらいます。実際に手で触り、膝上に抱えてみるとその印象は、聞いただけよりもずっと豊かになって、コミュニケーションも弾むんです。この体験からお付き合いが始まった方も数多くいます。
新しい曲を初演する時には、作曲家の方には私の家に来てもらって、実際に自分で音を出してもらってから曲を作るように常にお願いしています。本だけ読んで、実体験も無く琵琶の曲を作ろうとする作曲家がいかに多いか・・・。これでは琵琶の音色は響きません。作曲家と演奏かもよきパートナーシップが大切です。余談ですが、有名な先生が書いた和楽器について書いた本があるのですが、残念ながら琵琶の所はそのチューニングからして???。全然勘違いなのです。残念ですね。
私は常日頃、洋楽の色眼鏡で邦楽を見るな!!と何時も叫んでいるのですが、皆さん自分のテリトリーは微塵も崩そうとせず、しっかりと保ったまま、邦楽を分析しようとする。先ず洋楽の知識や理論をはずして、作曲家とか先生とかいう肩書きも下ろして、自分の身を投げ出して、まっさらな感性になってレッスンを受けて、体験して、作曲して欲しい。ドレミで琵琶唄を書き取ったりしているようでは何時まで経っても聞こえてきません。まずは体験し、それから、自分の学んだものを、ドレミで現代の人に判りやすく記譜してゆくのは良いと思います。五線譜の方が色々な情報が書き込めるのは確かですから。しかし音楽を文化として捉え、洋楽の亜流ではなく、日本の最先端を行くようなつもりで取り組んで欲しいものです。
琵琶樂人倶楽部の会場として使わせてもらっている阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロン
また演奏する方も、演目やプログラムなど、得意曲をただ並べるのではなく、舞台全体を見据えた視野を持たなくてはいけません。作曲もどんどんしてゆくべきだと思います。古典を継承するには創造が必要です。現代という時間の中で、古典が持つ意味を常に確認する為にも創造という感性が無くてはやっていけません。
継承すべきは形式なのか、書かれた音符や歌詞なのか、それとも形ではなく精神なのか。そして何を創造してゆくべきなのか。琵琶人はもっともっと考えてゆかなければなりません。
やる事はいっぱいだ!!
今日から全6回に渡って「琵琶を知ろう」という講座が杉並区西荻窪の松庵舎にて始まりました。第一回目は「琵琶の起源~ペルシャよりアジアへ」

松庵舎こじんまりとしたとても良い感じの空間です。
私の講座の他、写真やいけばな、文章教室などもやっています。
いつもやっている琵琶樂人倶楽部でもレクチャーはやっているのですが、こちらはキャパが10名程度の空間ですので、もう少し楽しみながらCDをかけたりして、もっと身近な雰囲気で受講している方々の質問に答えながらやって行こうと思っています。今日はちょっと雑学風にお話ししました。

これがウイグルのルバーブという楽器。今日はこれを持ち込んで音を聞いていただきました。鉄弦で乾いた感じのシルクロードの音が出ます。
私は民族楽器を演奏しているので、どうしてもその楽器が背負っている歴史や背景などを知らぬまま演奏は出来無いのです。邦楽器を全く新しい素材として、オリジナルな音楽をやる事もいいかもしれませんが、私は元々古典文学や歴史が好きなせいもあって、新しい曲を生み出すにも、どこかに「継承」ということも考えずには居られないのです。
仏教でも仏のはからいに身を任せてこそ、成仏すると説かれていますが、自分が考えて作り出したオリジナルな作品も、一度何千年という人類の辿ってきた歴史の中に身を投げ入れて、そこからもう一度この現代に戻ってくるような過程がある方が、より深いものが出てくるような気がしています。
我々現世を生きる人間は勉強すればするほど、知識も経験も多くなってくるのですが、いつしか自分が得た知識・経験だけを土台にしてものを観てしまう。実はしっかりと勉強したつもりでも、自分の得た知識や経験などたかだか数十年のほんのわずかなものに過ぎないのに、勉強してきた事に満足して(言い方を変えればおごって)自分が基本になってしまいがちです。
私は歴史を辿ることで、その奥深さを何時も感じていたいと思ってます。
ぜひこんな講座をきっかけに素晴らしい文化を育んできた日本に、歴史に興味を持ってくれると嬉しいです。魅力的なものがいっぱいあって楽しいですよ。
「松庵舎講座~琵琶を知ろう全6回」
第一回 1月17日(日) 琵琶の起源 ~ ペルシャよりアジアへ ~
第二回 2月14日(日) 雅楽の琵琶の世界
第三回 3月28日(日) 中世の琵琶楽 ~ 薩摩琵琶誕生とその周辺 ~ 盲僧琵琶と平家琵琶との関わり
第四回 4月25日(日) 近代の琵琶楽 ~ 薩摩琵琶と筑前琵琶
第五回 5月30日(日) 現代の琵琶楽 (ゲスト:尺八 田中黎山)
第六回 6月27日(日) 平家物語を語る ~ 壇ノ浦
■ 時 間: 13:00-15:00
■ 参加料: 2,500円 (各回) *第5回は3,000円となります。
■ 定 員: 25名
■ ご予約/お問合せ: 松庵舎 10:00-19:00 月曜定休
℡ 03-5356-6606 fax 03-5941-6166
E-mail: shoan-sha@nifty.com
昨日は劇団アドックの新年会でした。
昨年、劇団アドックが横浜赤レンガ倉庫ホールで上演した、芥川龍之介作 神尾哲人脚本の「雛」に参加したのですが、今回はその時の仲間達との半年振りの再会。
私は何時も一人で演奏会をやる事が多く、仲間と作り上げてゆくという作業は年に数えるほどしかないので、アドックの稽古にお邪魔して、劇団員達が一つ一つ作品を作り上げてゆく姿に大いに刺激されました。
チームをまとめて行くこと、それを作品として練り上げ、上演までもって行く事等々、アドックからは色々と教わりました。
こちらがアドックを主催する伊藤豪さん。映画やTVドラマにも多数出ているので御存知の方も多いかと思います。
伊藤さんと話をしていると本当に色々と勉強になります。アドックへの参加に当たっては、わざわざ私の家までお越しいただきました。お世話になりっぱなしです。
ちらはアドックの看板女優 三園ゆう子さん
伊藤さんと共にアドックを引っ張るベテラン女優です(ばりばりの薩摩おごじょ)。
昨年は主役として素晴らしい演技を見せてくれました。いつか三園さんの一人芝居と琵琶でやってみたいですね。その為には私の方がしっかりと精進しないといけません・・・。
お隣は某大学の名誉教授でもある経済学者島岡先生。どうみても大学教授というより役者にしか見えないユニークな方。「雛」上演の時には上演前のプロローグをやってくれて、ついに舞台デビューを果たしました。島岡先生は経済の授業に演劇を持ち込んで教えてきた方で、着流しで大学に現れる名物教授だったそうです。
こちらはアドックの若手俳優3人。
左の関根秀直君はいわば性格俳優という感じの独特の雰囲気を持っている期待の若手。「俺は役者で食って行くぞ」宣言を聞かせてくれました。がんばれ!!
真ん中のイケメンは大門拓君。モデルとしても活動しているだけあって、姿良し、性格良し、声良しの3拍子揃った二枚目です。色々な可能性を秘めているので、これからがとても楽しみ。
そして右の女性は三園さんと共にアドックにはなくてはならない若手女優 直江美樹さん。「雛」ではお母さん役をやってくれました。息子役の大門君をピシャっと鯨尺で打つシーンで、私が音をはずしてしまい申し訳なかったです。反省・・・・・。
3人共これからが楽しみな逸材です。今年は劇団結成10周年。こんなメンバー達が次にどんな作品が上演するのか大変楽しみです。私も何か参加できないかと虎視眈々と狙っている所です。
やっぱり芸術家の集まりは楽しい!!前向きで元気があって、夢を語る。こういう空間が何と言っても好きです。この日は「雛」を観て劇団に参加を決意したという方もいて、話も大いに盛り上がりました。ショウビジネスもいいのだけれど、やっぱり芸術舞台は素晴らしい。色々な才能や個性が織りなすアドックの舞台をぜひご覧あれ。
劇団アドックHP http://gekidan.ad-hoc.jp/index.html
毎年、新年の仕事始めはM.M.Jamin’Sparckでのライブから始まります。これはもう10年も前からの恒例で、今年もやってきました。
このライブはジャズボーカリストでアレンジャーの伊達佑介先生が毎月企画しているもので、アマチュアからプロまで色々な人が出演します。ジャンルも様々。
場所は新宿3丁目の伝説的ライブバー「ノアノア」。このお店の事を知っている人がいたら、かなりの芸術通です。1960年代70年代にはここに当時の音楽家、演劇人、作家などとんがった芸術家達が集まり、毎晩盛り上がっていた所。グランドピアノも当時から使っているので、音は枯れ切って、伊達先生曰く「筝に近い感じ」というしろもの。店内もかなりレトロです。
このライブからは根本雅也君(形態模写)や竹内ヒロシゲ君(弾き語り)など、もうこれからまもなく世に出ようという若者がやっていて、伊達先生の元に集ってきているのです。私にとってはなかなか面白い連中、そして琵琶を聴いたことが無いお客様との交流の場になっています。

前列の青いシャツの方が伊達先生。そして伊達先生率いるジャズコーラスグループ「ジンフィーズ」の面々。現在ではオリジナルメンバーも伊達先生のみになっていますが、ジンフィーズはかなり古くから活動をしているバンドなんです。


両側のお二方はこの日出演の
インフィニとネイビースナフ(竹内ヒロシゲ)
私は毎年ここで前年一年の報告をして、一、二曲やって一年の音取りとさせていただいています。今年は蝉丸と博雅の「逢坂山」そして「開経偈」をやってきました。「逢坂山」は普段は先ずやらない曲なので、ちょっと崩れでミスってしまいました(反省・・・・・)。
M.M.Jamin’Sparckではアマチュアでもお金の負担がなるべく少なく出演できるように伊達先生が御尽力している場なので、我こそはという人はぜひ参加してみてください。
M.M.Jamin’Sparckへの問い合わせは
HP: http://m-jam.jp/
Mail: 東京音村info@m-jam.jp( 伊達まで )
さて今年もエンジンがかかって来ました。次の日曜日からは西荻窪の松庵舎にて全6回シリーズの琵琶講座「琵琶を知ろう」が始まります。第一回目は「ペルシャからアジアへ」。こちらも御興味のある方は遠慮なく問い合わせてください。
今年も全開でやります!!よろしく。
「松庵舎講座~琵琶を知ろう全6回」
第一回 1月17日(日) 琵琶の起源 ~ ペルシャよりアジアへ ~
第二回 2月14日(日) 雅楽の琵琶の世界
第三回 3月28日(日) 中世の琵琶楽 ~ 薩摩琵琶誕生とその周辺 ~ 盲僧琵琶と平家琵琶との関わり
第四回 4月25日(日) 近代の琵琶楽 ~ 薩摩琵琶と筑前琵琶
第五回 5月30日(日) 現代の琵琶楽 (ゲスト:尺八 田中黎山)
第六回 6月27日(日) 平家物語を語る ~ 壇ノ浦
■ 時 間: 13:00-15:00
■ 参加料: 2,500円 (各回) *第5回は3,000円となります。
■ 定 員: 25名
■ ご予約/お問合せ: 松庵舎 10:00-19:00 月曜定休
℡ 03-5356-6606 fax 03-5941-6166
E-mail: shoan-sha@nifty.com
明けましておめでとうございます。
新しい年を迎え、気持ちも新たにまた活動してゆきたいと思っております。

これは京都鷹が峰にある源光庵の
「悟りの窓」。いつもお世話になっている京都の呉服屋さん
座工房のM氏が撮ってくれました。
私の敬愛する道元禅師は仏道に精進している姿こそが悟りそのものだとおっしゃっていますが、表面的な技術の練習もさることながら、常に内面的な精進がなくては良い音楽は響いてきません。
琵琶樂人倶楽部で掲げている、「周辺の文化や歴史宗教を含めた文化としての琵琶楽」これが私にとって一番大事な事。この部分があってこそ、琵琶の音が現代に響く意味が見えてくるのです。
私のような凡人はとても道元禅師みたいに生きられるものではありませんが、なるべく余計な衣は脱ぎ捨てて、シンプルな状態でいたいと日々思います。それでも、ともすると自分の中に渦巻く小さな欲や業に振り回されてしまい、あらぬ方向に行ってしまいますので、私にはまだまだ修行が必要なようです。
こんな所で静かに座っていると、自分にまとわり
ついた衣が一枚づつ剥がれて初心が甦ってくる気がします。(こちらも源光庵)
今年も精進したいと思います。
本年もよろしくお願い申し上げます。