有明アーツ・フォーラム 日本舞踊 in College

昨日、私が非常勤講師をしている有明教育芸術短期大学で、タイトルのような日舞のフォーラムがありました。

ariake art nichibu
同短大の教授である花柳寿南海先生、花柳翫一先生、杵屋勝国先生が中心となって、講師の福原徹さんや藤舎呂英さん他、囃子の方々がずらりと揃い、豪華な催しでした。

演目はどれも素敵だったのですが、最初にやった長唄「翁・千載・三番叟」はとっても気に入りました。若手の男性5人と花柳翫一先生による群舞でしたが、実にすがすがしくて美しい。いわゆる日舞特有の「しな」を作ったりしない、きりりとして見事な舞台でした。
一緒に観ていたバレエ界の大御所 S賀先生も「男性のレベルの高い踊りは本当に素晴らしい。今日はこれを見ただけでも幸せ」と関心しきりでした。

20代の若手の男性がこれだけ揃っていて、しかもレベルの高い芸を身につけている。これは本当に素晴らしい事です。現代ではどの分野に於いても男女の区別はしないという方向で進んでいますが、それでも肉体の差は歴然とあります。優劣という事でなく、その違いが生きて花開いたら、それぞれに素晴らしいものが出来上がるのは確かな事です。
琵琶の世界はプロとして活動している人も数えるほどしかいませんが、それもほとんどが女性ばかりになっています。20~40代の男性は本当に少なくなってしまいました。そして何よりも全体のレベルが著しく低い。このレベルではとても他のジャンルと一緒には出来ません。昨年琵琶奏者が10人集まってやったサザンシアター公演でも、そのレベルの低さにあきれたという意見をお客様から沢山聞かされました。何とも悲しむべき状況なのです。

もちろん女性の琵琶は水藤錦穣先生以来、独自の芸風が誕生して、現在でも坂田美子さんが女性ならではのスタイルを確立してがんばっていますが、元々薩摩琵琶は武士道教育のための音楽。男性も是非頑張って欲しいものです。
今回出た日舞の若手男性達は皆、姿が美しかった。皆、将来を十二分に担える素晴らしい逸材でした。尺八や長唄などでも有能な若手男性が次々に出てくることを思うと、琵琶の世界の衰退を感じずに入られません。

さて今日の主役、寿南海先生は御存知の方も多いかと思いますが、日本舞踊界の重鎮で、流派の垣根を越えて後進の指導をし、自ら古典はもとより創作舞踊にも次々に挑戦する正に現代を代表する存在です。先生は足の具合が良くないとの事でしたが、最後にやった翫一さんとの「賤機帯」では、翫一さんが上手く動いてサポートし、不安を感じさせない見事な舞台でした。
また昨日は学部長のM木先生との対談コーナーもあり、その気さくで可愛い人柄にも触れる事が出来ました。
大学という場で、こういう機会を作るというのはとても大切な事だと思います。学生達にはもちろんの事、一般の方や我々講師にとっても交流の場となります。
こういう公演を大きな劇場でやるには大変なお金がかかってしまい、チケット代も跳ね上がり、結局は弟子筋の関係者でいっぱいになって、「成功、盛況でした」なんて宣伝するのが関の山。琵琶のリサイタルなども関係者しか来ないことがとても多いのです。もっともっと日本の文化を普通に暮らしている人が、日々の暮らしの中に見い出すようであって欲しいものです。

最後にこの有明教育芸術短期大学には琵琶のクラスがないので、学園の理事長に直訴してきました。(私はここでギターの先生をしています)

桜1
 photo MORI Osamu

         
さあ新しい春に向けてのんびりしては居られません。今日も明日に向かて走り出します。

久しぶりの便り

私の友人、台湾の二胡奏者 葉文宣さんから久しぶりにメールが来ました。相変わらず元気そうで、以前にも増して活躍しているようです。
彼女は「国立実験国楽団」という、伝統楽器のN響みたいな存在の楽団のメンバーなのですが、ちょっとヘンな日本語を操る感じが面白く、かなりイイ感じでキャラが立っているんです。

国家実験国楽団
前列右より4人目が葉さん
葉文宣

 

                こちらは葉さんのプロフ写真

年に1、2度歌舞伎とスマップのコンサートを見るために(中居君の大ファンだそうだ)東京に来るのですが、とにかく度を越した日本通で、一度、中国琵琶奏者の劉さんという仲間の女性を連れてきた時には、私の家の本棚を見て、日本の禅の話で大いに盛り上がり、その知識の豊富さ~というよりオタクぶり~に驚いてしまいました。また大の焼酎好きで、毎回必ず最後は大飲み会になってしまいます。

葉さんは台湾ではソリストとしてもがんばっていて、リサイタルで古典曲の他に、チゴイネルワイゼンを豪快に弾きまくっているDVDを頂きました。マジに恐ろしい位に上手いんです。国立実験国楽団のCDも素晴らしく、「シルクロード」というタイトルのCDなどはのっけから、そのレベルの高さにやられてしまいました。是非聞いてみてください。日本の古楽器アンサンブルとは比較になりません。びっくりしますよ。

海外には、以前コンビを組んでいた尺八奏者、グンナルリンデルさんがスウェーデンでがんばっているし、音楽学者のレイニンガーマリカさんや、作曲の師である石井紘美先生等々、皆さんいいペースで活動してます。尺八のクリストファー遥盟さん、筝のカーティスパターソンさんなどアメリカ人ながら日本国内でも活躍している友人もいます。昨年、ウズベキスタンで共演した作曲家アルチョムキムさんもヨーロッパ・アジアで凄い活躍ぶりだそうです。

こういった海外でがんばっている仲間が元気で便りをくれるのは、とっても嬉しいし、こちらも元気になります。
私は毎年、春は花粉休暇などと称してのんびりしていたんですが、昨年とある人から「花粉休暇なんてスケジュールに書いていたら仕事が来なくなるよ」と叱咤されて、今年はばっちり仕事を入れてます。

私も負けてはいられません!刺激しあえる良き友がいるという事は幸せです。

今年はやるぞ!!

春雷こちらの画像は葉さんから届いた台湾の春の写真です。「春雷」というタイトルが付いていましたが、となりに何故か「ばねの雷 Spring thunder」と書いてありました。さすがに彼女らしいぼけっぷりです。

古都遊宴~幽幻のひびき

来月、桜満開の頃、京都は南禅寺の一角にある、清流亭にて「古都遊宴~幽幻のひびき」なる催しをやることになりました。
4月3,4,5と9,10、11の6日間開催します。

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この界隈は桜の名所として知られている所で、NHKの撮影も入るようです。
ご招待の方メインなのですが、外からも充分聞けますので、お花見にお越しの方はちょっと覗いてみてください。夕方6時30から演奏します。

清流亭HP http://www.daimatsu-kyoto.co.jp/seiryutei.html

共演者は3,4,5が何時も高野山で御一緒している、能管・篠笛の阿部慶子さん。9,10,11が筝の小笠原沙慧さんです。

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    舞台はこんな感じ。

良い感じでしょ。しだれ桜の下で琵琶!!

年配の方なら覚えているかもしれませんが、以前、石原裕次郎が松竹梅というお酒のCMをやった時に、縁側に座っていたあの場所が、この清流亭です。

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これを見て、判る人はお友達です。

この京都の演奏が空いた日には、大阪のコモンカフェでダンスのヤンジャさんとライブをやります。着物を着てびしっと決まった演奏会も大好きですが、ライブハウスでがんがんやるのも楽しいですね。

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という訳で、京都にお越しの際はよろしくです。

日比谷スタンウェイ松尾ホールライブ終了

昨日、尺八の中村仁樹君のミニリサイタルでもある、スタンウェイホールのライブが終わりました。

matuo-holl3左からピアノの菊池智恵子さん、中村君、私

前回は昨年末に、やはりピアノサロンとして有名なタカギクラヴィアでやったのですが、今回もさすがスタンウェイの名を冠に付けているだけあってピアノが素晴らしい音で鳴っていました。
このトリオはマイクやPAを使わないのですが、ピアノの菊池さんはなかなかのテクニシャンなので、こちらも音量で負けてる分、気合いで弾かないとアンサンブルになりません。今回も気を引き締めて演奏させてもらいました。それにしてもここのピアノは凄い迫力のある音でした。

                      matuo-hool2
昨日はプログラムも良く練れていて、中村君も気合いのこもった演奏でしたので、とてもよい流れになり、お客様の反応も上々でした。

前回もやったドビュッシーのチェロソナタ、そしてショパンのノクターンなど、中村君の抜群のテクニックが炸裂していました。まだまだ勉強すべき所はいっぱいあると思いますが、今尺八の世界で技術力に於いてはトップ3に入ると思います。是非これからも道を極めて欲しいですね。

演奏活動をしてゆくと、日々色々な事に突き当たります。音楽や芸術の事はもちろん、毎日の生活や経済的な事、家族や将来の事等々、不安になったり、勢いが出てきたり、常に周辺事情に振り回されてなかなか音楽だけに浸っている事が難しいのが現実ですが、そういったところを乗り越えていった者だけが、舞台に立てる、と以前先輩に言われました。

今自分がこの年になってなんとか舞台人の端くれとして生きてゆけるというのは本当にありがたい事だと思っています。そして中村君、菊池さんにもこれから音楽家として末永く活躍していただきたい、ただただそう思うばかりです。

二人は私の息子娘みたいな年齢なので、昨日は何だか彼らのお父さんのような気分になってしまいました。

お父さんもがんばらないと威厳が保てません?

来週は大阪に行きます。

潮先郁男 芸暦60周年記念ライブatピットイン

私は琵琶を弾く前はジャズギターを弾いていました。まだ高校生の頃習い始めたので、すでに遠い遠い昔のお話ですが・・・。

最初に習ったのは、故沢田俊吾先生。沢田先生にはジャズ界の雰囲気のようなものを教わりました。多感な少年には刺激的なものばかりでしたね。楽しい日々でした。その後、潮先郁男先生について、リズムや和音など実践的且つ理論的な指導を徹底的に受けました。私は一応潮先スクールを卒業させていただきましたが、なにせ今の姿は琵琶法師ですので、一番の天邪鬼であり反乱分子です。今こうして作曲や演奏活動ができるのも全ては潮先先生からの教えがあったからこそ。正に私の原点です。

潮先先生は、故平岡精二クインテットから活動をはじめ、今やジャズギター界の大御所として現役活動をされています。その潮先先生が芸暦60周年ということで新宿ピットインで4月17日ライブをやります。
こちらが潮先先生

こんな私にも、今まで何人かの大切な師匠との出会いがありました。作曲の石井紘美先生、琵琶の高田栄水先生、田中之雄先生、皆大切なお師匠様であり、何時までも私の中で輝きを失う事の無い大きな大きな存在ですが、中でも潮先先生は一番の反乱分子の私にいつでも遠くから眼差しを注いでくれていて、私がCDを出すたびに電話をくれてエールを贈ってくれるのです。
武道の世界では「三年学ぶより、三年師を探せ」などと言いますが、人生の中でこういう師匠と知り合えたというのは本当に大きな出来事であり、また自分が死ぬまで師匠として尊敬したいと心から思っています。

潮先先生はいわば梅花のような人。結してフロントに立って華やかに咲き誇る人ではありません。何時も脇にいて、確実にサポートをして、音楽に命を与える人なのです。桜のように華やかな人ももちろん素敵ですが、寒い時期に花を咲かせて、凍えて縮こまっている人を癒し優しく迎えてくれる梅花が私は好きです。
ただ地味という事ではなく、そこに大きな器があってこそ、人を受け入れる事ができるというもの。ひっそりとした姿の中に、深い想いがなくては梅花は咲かせることが出来ないのだと思います。
何時まで経っても梅花のようには成れそうに無い自分は、やっぱりただの反乱分子なのかもしれません・・・・。

潮先先生にはこれまでリーダーアルバムというのがないのですが、代表作はやはりこの「SIDE by SIDE」シリーズです。
ジャズが日本に根付いて半世紀ちょっと。ようやく日本にも日本のジャズが出来つつあります。その原動力となり、中村八大、松本英彦、八城一夫、藤家虹二、世良譲、増田一郎等々そうそうたる大御所達をサポートし、絶大なる信頼を得てきた潮先先生の演奏を是非聴いてみてください。

詳しくはピットインにお問い合わせを。

新宿ピットイン  http://www.pit-inn.com/index.html

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