劇団アドック公演「壁」

先日、野方区民ホールにて、劇団アドックの「壁」(脚本 神尾哲人 演出 伊藤豪  原作 三浦綾子「壁の声」)を見てきました。
ぐっと骨太の社会派の内容に大変満足!!音楽でも演劇でもこの満足感は久しぶりでした。一昨年辺りから演劇にも関わるようになったのですが、昨年、横浜赤レンガ倉庫で音楽を担当した「雛 (脚本 神尾哲人 演出 伊藤豪 原作 芥川龍之介)」を超える素晴らしい舞台でした。

               アドック「壁」

アドックとのお付き合いは昨年から本格的に始まったのですが、昨年の公演では地味で目立たなかった、若手の関根秀直君が大大大成長していて、びっくりしました。
今回は彼が主役。表情といい、台詞といい、動きといい、あの関根君が!!!と驚くほどの成長ぶりで、以前の彼を知る仲間も驚いていました。

関根君は今年の新年会で、「この道でやっていきたい」とはっきりと宣言していましたが、きっと精神的に大きな決断と変化があったことだろうと思います。今回は本当に素晴らしかった。今やアドックの若手看板俳優です。見ていて本当に嬉しくなってしまいました。今後もぜひとも精進を重ねていただきたいと思います。

こういう若手に私がしてあげる事など実際はほとんどありませんが、何か機会があったらどんどん応援してあげたいと思います。そして次世代に向けた逸材として、ぜひまわりの先輩達も暖かく見守ってあげて欲しいと願うばかりです。

さて、内容は三浦綾子原作の「壁の声」。相変わらず伊藤豪さんの演出も冴えていて、内容がグイグイとこちらに迫ってきました。無実の吃音症の青年が死刑となって行く話しなのですが、「人を裁くとは何なのか」「裁かれるとは・・」「生とは、死とは・・」深く深く問いかける充実した内容の作品でした。

今は、何処を見てもエンタテイメント。何でもかんでもエンタテイメント。ほとほと嫌になる事がたまにあるのですが、そういう時代に流されずに、且つ仲間内だけで盛り上がる観念的な前衛に逃げることなく、ブレない信念を持って、この世の中に腰をすえて演劇活動しているアドックに賞賛を送りたいと思います。

今後のアドックの活動に注目です!!
アドックHP  http://gekidan.ad-hoc.jp/adhoc_is.html

真夏の夜の夢~演奏後記

この所度を越したような暑さが続いていますが、皆様は如何お過ごしでしょうか。東京では毎日光化学スモッグ注意報が発令されているんですよ・・。

お陰様で腰の痛みはほとんど取れたのですが、右足太ももに若干痛みとしびれが残り相変わらず難儀しています。この腰痛の最中色々演奏会もありましたので、先ずは御報告。

ともしび先ず、コルセットを巻いて出かけたのが、前回のブログにもちょっと書いた行田市の未来ホール。こちらは混声合唱団「ともしび」のゲストで出演しました。残念ながらぎっくり腰真っ最中で写真を撮る余裕は全く無く、ちらししかないのですが、行田周辺の方はケーブルTVで流すようですのでご覧になって下さいませ。

「ともしび」は指揮の新井康之先生、ピアノの宮本廣子先生が指導するアマチュア合唱団なんですが、すでに定期演奏会は38回開催しているという伝統ある合唱団です。
私は何にも知らずにゲストでノコノコ行ったのですが、すでに私のCDも渡っていて、新井先生とは共通の知り合いもいたりして、和やかに務めさせていただきました。行田は熊谷の隣ということで、もちろん御当地ソングの「敦盛」をやってきました。
合唱団の皆様は皆素敵な笑顔でしたね。

次は定例の琵琶樂人倶楽部

          琵琶樂人倶楽部2010-7
今回は「語り物の系譜Ⅲ」というテーマで、語りの寿佐美まゆみさんをゲストに迎えて、寿佐美さん作の「知盛」を私の伴奏で語っていただきました。写真は寿佐美さんと琵琶樂人倶楽部代表の古澤錦城

壇ノ浦での「見るべきほどの事は見つ」の名台詞の部分をクライマックスに語っていただきましたが、現代の言葉で語ると内容も良く判り、お客様には大変好評でした。もう少し琵琶の部分を練り上げて再演したいと思っています。

そしてつい先日の21世紀トリオ

            ベルカント2010-7-24-9

相変わらず中村、菊池の二人は若さ爆発してます。私は大分腰の痛みは取れていたのですが、今一つ本領発揮とは行きませんでした。まだまだ修行が足りません。

今回は西荻窪にある音楽サロン「ベルカント」というこじんまりした所だったのですが、何だか落ち着いていて良い所でした。名古屋から音楽仲間のH氏も来てくれて、久々の再会をしました。こういうな仲間がいるというのは嬉しいですね。サロンコンサートはお客様とのコミュニケーションも充分に取れて、とっても好きです。
ここでは来週8月2日にまたライブをやりますので、ぜひぜひお越し下さい。昼・夜の2公演です。詳しくは私のHPのスケジュール欄に出ていますのでご覧になってみてください。特に予約を頂かなくても、当日突然気が向いたという方大歓迎です。よろしくお願いします。

ベルカント2010-7-24-8      ベルカント2010-7-24-4

左は演奏風景、右はスタッフの方々。この日はプロデューサーの久保木氏も腰を痛めていて、二人してずいぶんまわりに気を使わせてしまいました。

音楽は音を出したとたんに虚空に消えてしまうものですが、その音は記憶の中に残り、真夏の夜の夢となってふとまた甦る、そんな心に残る音楽をやりたいものです。私個人としてはドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は正にそんな曲の代表です。
まだまだやらねばならない事はいっぱいありますが、色々な機会を通して、私が作り奏でた音楽が、聞いてくれた方々の心と記憶の中に生命を宿すようなものであったら嬉しいです。

さて今週中に完全復活をしないと、体が持ちません。来週は8月2日に上記の21世紀トリオ、4日に地元でのライブ、5日に長野での演奏会、6日にかっぱ橋 なってるハウスで、フリージャズのSOSトリオと過密スケジュールが続いてます。

休息はなかなかやってこないですね。

佐藤重雄 Live at ウナカンツォーネ

カンツォーネ歌手の佐藤重雄さんのライブを聴きに、四谷のウナカンツォーネに行って来ました。先のブログにも書いたように雑用に追われる日々ですが、少しリフレッシュするつもりで出かけてみました。

           バースデイライブー3s

私は佐藤さんの3枚のCDすべてで琵琶を弾いていて、今回は何と吉幾蔵さんの「酒よ」をイタリア語に訳したカンツォーネヴァージョンでベンベンやってます。CDは全曲イタリア語でこの日も全ての曲をイタリア語で歌っていました。ちなみにCDタイトルは「SAKE」です。

今回のCDは私の先輩でいつも「熊さん」と慕っているベースの熊谷博さんが全アレンジを担当しています。もちろん昨日も熊さんがバックを務めました。

バースデイライブー8s

こちらが佐藤さんと熊さん

熊さんのアレンジはどこまでも歌を生かすように出来ていて、実に気が効いています。佐藤さんの歌も以前よりすっきりとして、本来の声の魅力が今までになく発揮されていました。サウンドやアレンジに懲りすぎて、歌が添え物になっている音楽も多く見かけますが、この日のライブ(とCD)には、どこまでも高らかに歌い上げる「歌」が満ちていました。惚れ惚れするというのはこういうことでしょうか。

昨日はゲストに歌手の加藤順子さんも駆けつけて、佐藤さんと「アモーレ」をデュエットしてくれました。

           バースデイライブー2s

ピアノは上田正樹ライブでも弾いていた堺あつおさん(ごめんなさい写真が撮れませんでした)いつもいい所でいい音を鳴らしてくれるピアニストです。こういう人の伴奏だと歌手は気持ちよく歌えるんでしょうね。

そして熊さんバンドでもおなじみ久保田容子さんと池野弘美さんがコーラスで加わりました。このお二人は以前、熊さんバンドのライブを青山マンダラでやった時も、激!格好良かったんですが、何時見ても何処で見ても絵になりますね。お二人が加わるとぐんとゴージャスになるんです。
琵琶法師も一度はこういう美しいお姉さんをバックに平家物語をやりたいです?????

         バースデイライブー7s右が久保田さん、左が池野さん

お二人はソロではもちろんのこと、「THE BELLS」というコーラスグループでも活躍しています。
THE BELLS HP   http://web.me.com/yoko_jk/thebells/toppage.html

私は昔からアンチポップスで通してきたし、大体現代音楽志向なんですが、こうした先輩に音楽の持つ楽しさと、聞いている人をハッピーにさせる力を何時も学ばせてもらってます。佐藤さんや熊さんの音楽に接してから、ポップスの魅力が本当に体に染み渡ってきました。

昔はポップスやジャズボーカルは全く聞かず、ひたすらハードなものばかり聞いていました。以前私の部屋に来た友人がラジオでJポップをかけて「俺の部屋でこんなものをかけるな」と喧嘩した事もある位、ポップスを忌み嫌っていました。
ジャズはマイルスやコルトレーンの60年代もの、ロックはジミヘン、ジェフベック、ツェッペリンやクリムゾン、後は声楽、現代音楽、武満etc.こんなものばかりで、もうポップスの影を感じるものはひたすら避けてきたんですが、お二人に出会い、私の音楽は大きく広くなってゆきました。
ただポップスの魅力を紹介してくれたのではなく、その楽しさを体感させてくれた事は、本当にありがたかったです。もちろん私の音楽にも大きく影響しています。

こういう極上のポップスをぜひ皆さんに聞いていただきたい。人生を歌にかけて生きてきた、この生き様をぜひ見て欲しい。上手いとか下手とかそういうものではなく、歌の持つ魅力をぜひ感じて欲しいのです。

佐藤重雄HP http://www.geocities.jp/tomo_santana/

命が煌き、たからかに歌声が響く素敵な人生が満ちてます。

追われる日々

前回書いたブログでは「演奏会も一段落して、ちょっとのんびりしよう」という感じで本当にのんびりするつもりだったのですが、世の中そんなに甘くない。

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photo MORI Osamu(両方共)

暫しこんな所にでも行って遊びまわるつもりだったのですが、休息はまだまだ与えてもらえそうにありません。

先月は演奏会が多かったので、単に時間的にも雑用が出来なかったのですが、それが一気に来た。いや来たというより目を背けていた雑用が迫ってきたという方が正しい。
秋の公演のための曲作りやリハーサルはもちろんですが、その他写真やプロフィールなど各公演先に何通も送ったり、あちこちで打ち合わせをやったり、と仕事は山のように有ったのです。
しかし先月は自分の脳がそれらに拒否反応をしていて、頭の中から一瞬消して忘れさせていたのです。それがただちょっと気が抜けてのんびりしだしたら「ヌリカベ」の如く目の前に立ち現れたということです。

            雅楽s-1
  

これは最近撮った写真。秋の京都での演奏会のちらし用のものです。このところの雑用に追われ、顔が疲れてます。目の下のクマ、ホウレイ線、何度みてもいやなもんですね。この間撮った和服のプロフ写真の用にシュッとしてないです・・・・・・・・。雅楽の直垂という楽人装束です。

こんな感じで追われている間にも、あちこちから演奏のお話も舞い込んできたもんだから、お陰で秋は都内の演奏会はもちろんのこと、倉敷、高野山、大分、京都と結構やばい強行スケジュールで飛び回る事になりそうです。しかしとにかく機会を頂くというのはありがたいことです。もっともっとやれという使命なのだと思ってしっかりとやらせていただきます。

先日、仲間のあいこ姐さんからも、「雑用ばかりで一日中パソコンから離れられない!!」と悲鳴が響いてきました。彼女は落語会を主催したり、端唄の演奏をしたり、ライブやったりと動き回っていますが、我々のようにショウビジネスに乗らない音楽をやっていると、何でも自分でやらないといけないので、ろくに練習する時間も取れないのです。こうした状況でもやるやつはやるので、負けてはいられませんが、たまには身も心もゆったいりと温泉に浸かって、のんびりしたいものです。

という訳で今後半月ほどの演奏予定です。

7月17日 埼玉県行田未来文化ホール
7月21日 阿佐ヶ谷 琵琶樂人倶楽部
7月24日 西荻 スタジオベルカント 21世紀トリオ
8月2日  西荻 スタジオベルカント 21世紀トリオ
8月5日  長野 西光寺(刈萱堂)
8月6日  入谷なってるハウス SOSトリオ

ぜひお越し下さい。演奏はシュっとしてます!

Artな日々~踊る妖精&北村さゆり作品展

少し演奏会が落ち着いたので、シアターXでおこなわれた「踊る妖精~六羽のソロ」と、銀座のSILKLANDギャラリーで開催中の北村さゆり作品展に行ってきました。

     シアターX
先ずはシアターXから。
チェーホフのかもめをモチーフにした6人の踊り手の作品の上演だったのですが、メンバーが凄い。

アキコカンダ   ケイタケイ    倉知外子
花柳面        竹屋啓子  折田克子

まあダンスにそんなに詳しくない私でも名前を知っている面々が揃う豪華な会でした。

個々には夫々印象があるのですが、私には2種類の表現が有ったと思えます。振り付けで比較的自身に近い感情又は言葉を現そうとした方と、喜怒哀楽のもっと先のものを表そうとした方。意外と前者の方が多かったように思います。
日本には世阿弥以降、「秘める」ということが日本独自の表現のあり方だと私は日頃思っているので、あまり直接的に言葉や感情が見えてしまう踊りには想像力が沸き起こりませんでした。

そんな中、花柳面さんの作品は一番際立っていたと思います。面さんは知り合いでもあるので、身内贔屓をする訳ではないのですが、バック音楽を務めた清水弾さんの音はどこまでも抽象に徹していて、妙に情景を表現するようなことを一切しない。そこに面さんが登場すると、その存在感がとても凝縮されるようで、静かな表現ながらもしっかりと目に焼きつきました。

面さんの振り付けは喜怒哀楽の感情の部分ではない。もっとその奥に秘めた記憶を辿るような、抽象世界を表現していました。そんな中にふと現実が甦るような部分があり、抽象と具象を行き来する、時間軸を超えたような素晴らしい作品でした。見ていて、自分の想像力・創造力が刺激され私の中の記憶を何時しか自分で辿っているように感じる場面もあり、正に日本古来の感性と技法を土台とした現代日本の芸術作品だと感じました。

その他、アフタートークでもちょっとしゃべったのですが、ダンスの方の舞台では音楽がちょっとぞんざいに扱われている事が目立ちますね。ダンスが主なのでもちろんそれでも良いのですが、この公演ではちょっとセンスを疑う使い方もあってそこが残念でした。

しかしこうした試みに常に挑戦するシアターXには拍手を送りたいですね。なんだかウズベキスタンのイルホム劇場を思い出しました。正に芸術文化の発信基地。素晴らしいと思います。

さて、次は同郷の日本画家 北村さゆりさんの作品展です。

          kitamurasayuri-koten

ちょっと画像が荒いですが、これが北村さん。北村さんは、私のファーストアルバム「Oriental eyes」をデザインしてくれた画家 山田ちさとさんの友人でもあったので、そんな所から私は彼女の作品展に通いだして、北村さんも時間があるときには演奏を聴きに来てくれるという感じで、なんだかんだと10年近く付き合いが続いています。。

今回は5日の日曜日から17日までの開催ですので、ぜひぜひ皆様行ってみてください。銀座ソニービルの少し裏手、みゆき通りと交詢社通りの間にあるSILKLANDギャラリーでやっています。

北村さんは今、日本画家としてはとっても活躍していて、以前よりTVでも特集されたり、挿絵などでも凄い作家達に絶大な信頼を寄せられている方なんです。結して派手ではないのですが、何時までも変わりなく、気さくでとっても可愛い方。しかし芸術の話になると情熱的に語りだす、魅力溢れる作家さんです。

私は北村さんの「映 たわむれる」という水面をテーマとした一連の作品がとっても好きで、個展をやる時には欠かさず見に行っています。上の画像のバックに写っているのがその作品。淡い色彩の中にも命が溢れているようで、それはそれは素晴らしいんです。なんだか作品と何時しか会話しているように感じる事もあったり、ぼんやりと自分がその中に浮かんでいるように感じるときがあったり、色々な自分が見えてくる作品です。

私の演奏は一つの世界を提示して、その場に聞き手を引き込んで、そこから何かを感じ取っていただくようなものが多いのですが、彼女の作品は何かを提示するというより、見る方が作品の前に立つだけでふわっと包み込まれてしまうような柔らかさがあります。そしてその包まれた世界でいつしか自分自身の姿が見えてくる、そんな感じです。
北村さゆりさんの作品お勧めですよ!!

シアターXでは思いがけず知り合いが受付をやっていてびっくりしたんですが、お陰で終わってから劇場のスタッフとその友人と飲みながら楽しい時間を頂きました。

芸術に触れる時間はやっぱりいいな~。色々なことを感じ想い、色々な出会いがあり、とっても豊かな気持ちになります。この柔らかで、穏やかで、刺激的で、ときめく「時」に感謝。

  

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