先日、毎月恒例の琵琶樂人倶楽部をやってきました。この琵琶樂人倶楽部も早丸4年。来月から5年目に入ります。毎月毎月、古澤錦城さんと二人で、レクチャーと演奏で淡々とやってきました。
ずっと続く秘訣は、やはり「無理がない」という事です。そして加えるなら、毎月何かしらの勉強や用意をしないといけないことでしょうか。只自分のレパートリーをやるだけでは、すぐにネタも尽きるし、飽きてしまいます。
レジュメを書くにも、よく本を読み勉強しますし、普段やらない曲は練習します。そんなふうにやっていると、自分の中で充実感がしっかりと残るのです。だから続くのでしょうね。
普段の自分の活動では、常に「最先端」「最高クォリティー」を目指し、誰よりも多くの演奏会をこなし、技術的にもトップレベルでいなくてはいけない、等々そんな事が常に頭の片隅にあります。もちろんそうしたことを思わなくなったらプロでは居られませんが、琵琶樂人倶楽部があるおかげで、私個人の活動に適度な緩急が付き、全体が続けていられるように思います。
染織の志村ふくみさんは、「伝統というものは今の時代が加わって変化する 前衛 なのです。常に私達の仕事は前衛。前衛が過去になれば伝統になって行く」と言っていますが、私はこの言葉を、何かにつけて思いながら活動をしています。
自分にしか出来ない仕事を常に追求する、自分でやるべきものを考え、考えうる一番充実した内容の仕事をする。そんな覚悟と、責任と、自信を私に与えてくれます。
しかし全てにフルパワーというだけでは、どこかで破綻してしまいます。努力にも色々な形があるし、活動自体にもヴァリエーションが必要です。私は薩摩琵琶と楽琵琶そして作曲という3つのことをやっていますが、活動も色々な形でやっています。仲間達との自主企画、小さなライブ、独演会、依頼されて弾く仕事、等その形態は様々ですが、そんなヴァリエーションの中の重要な一つが琵琶樂人倶楽部なのです。
このヴァリエーションがあるからこそ志村さんの言う「前衛」という状態で居られる。そして続けられるのです。
これからも自分の中で良いヴァリエーションを持って、時代の前衛であり続けたいと思います。
人の弾いたレールの上は走らない。自分の道を走るのみです。

さて、来月の琵琶樂人倶楽部は、「女流三流派対決」です。11月16日 19時30分開演です。ぜひお越し下さい。
昨日は、川越の三番町ギャラリーにて演奏してきました。オーナーさん以下皆さんが笑顔いっぱいで、とても良い雰囲気で演奏できました。
今回は乾漆の作家 永井里依さんの作品個展で、作品と琵琶との相性もちょうど良く、良い時間を頂きました。

これが永井さんの作品。いわゆる木地に塗る漆ではなく、麻布を型に沿って固めて作るやり方で、古い時代の仏像などと同じ方法ですので、作品の形が大変変化に富んでいて面白い。ちょっと可愛い感じで、センスの良さを感じます。特に写真中央の空豆のような形をした重箱はとても存在感があって、しかも変な主張をしない。これ気にいってしまいました。他にも酒器などとても洒落ていて、高級感もあって、余裕があったら欲しい物がいっぱいでした。
どの作品にも、ちゃんと作家の持っている世界が見えて、よどみのない良い仕事でした。16日までやっているので、ぜひ行ってみてください。
川越東口 三番町ギャラリー 049-226-7735 です。
三番町ギャラリーには10年ぶりに伺いましたが、ギャラリーのオーナーさんも、10年前に会った方も皆さんお変わりなく、笑顔がいっぱいでとても楽しい会でした。やっぱり笑顔にあふれている人の所には、笑顔の人が集まるんですね。そういう人が集まる場は、大変気持ちが良い!私も笑顔でいよう。黙っていると怖そうな顔してますので・・・。
今回の作家さんも謙虚でさわやかな感じの方でした。

音楽をやっていると、自己顕示欲の塊のような人にしょっちゅう出くわします。確かに舞台に立つことは、自己顕示欲がなければ出来ないことですが、どうも周りとバランスが取れず、音楽をやりたいのか、有名になりたいのか判らない感じで、突っ走ってしまう方がこの所目立つように思います。それも年齢は関係ないですね。
何かをする時、その根本に対し余計な欲が付いている人は、どうしても余計なものを巻き込んで、本質が深まらない。いつも有名人の周りでコバンザメの如くうろついている人や、年配の方でも腕はそっちのけで、この道何十年というつまらないプライドで自分を大先生と勘違いしているような人があまりに多い。

時代はどんどん進み、新しい価値観も技術も次々に生まれて行きます。古い価値観で周りや若手を見ようとしたり、古い価値観を若い世代に押しつけ、優等生を周りに侍らせ徒党を組んでいるようでは、器が知れるというもの。キャリアを積めば積むほどに新しい動き、新しい感性に注目して、自分を鍛錬しなければならないのです。
徹底的に自己の中を見つめて行くミクロの部分と、自分と違う感性・世代と広く交わり、柔軟に対応し吸収昇華して行く、マクロの部分。この二つがバランスよく保つことが出来る人間だけが、プロとしてその道で生きてゆけると思うのです。私自身にも自戒を込めて・・。
昨日は、気持ちの良いひとときを頂きました。
北鎌倉古民家ミュージアムでの、CD発売記念演奏会、無事終わりました。
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ライブの時の写真が無いので、レコーディングの時のものを。
今回はCDに収録された曲と、録音されながら、ノイズの関係で収録を見送った曲を演奏しました。演奏会場は、こんな展示ホールをお借りしました。
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ここは古い農家を移築した美術館なので、太い梁や柱がふんだんに使われていて、静かでとても落ち着いた雰囲気なのです。また北鎌倉という土地が更にしっとりとした風情を感じさせてくれます。
庭もとても良い感じで、変に手が入っておらず、自然な感じが実に気持ち良いです。
毎年ここで演奏しているのですが、楽の音が響くと、庭から聞こえて来る虫の声や、落ち着いた空間から生み出される何とも言えない空気感が、かえって際立つようで、現世の次元を超えた空間が立ち現れます。
今回はオープニングとエンディングが、CDと同じように私の楽琵琶独奏でしたので、特に一音がゆったりと響き、最後まで精緻な空気感に包まれました。

それは正に夜音(よと)という言葉がよく似合うものでした。きっと平安時代の琵琶弾きは、こんな静かな秋の夜に琵琶を弾き、それを皆が聞いていたのではないでしょうか。
寒くも暑くもない、ちょうど良い今頃の夜は、琵琶の音にぴったりです。自分でもますます楽琵琶の響きが好きになってきました。
良い季節に、素敵な場所で演奏の機会をいただけるというのは、幸せですね。
この場所と北鎌倉という緑豊かな静かな街、そして足を運んでくれた皆様の多くの縁に包まれて響き渡る楽琵琶の音には、小さな「我」や「欲」等微塵も感じませんでした。
自分の想いや感覚を表現しようとする音楽も良いですが、もっと大きな世界に身をゆだねられるような音楽も良いものです。
現代では人間が何でも出来ると思い込んで、強い意志と行動力で願望を実現する事が美徳とされますが、それがどうも奢りのようになって、バランスを崩しているように思えてなりません。
私達は、多くの縁、この大地、地球に生かされてこそ存在している。我々を存在たらしめるものを「はからい」と言う人、「神」と言う人、色々な言い方はあるかと思いますが、目の前の喜怒哀楽を超えて、もっと「大きな世界に包まれ、身をゆだねている」と、ふと思わせる夜音が、心地良い演奏会でした。
先日、かねてから観たかったドキュメンタリー映画「Get Loud」を観てきました。久しぶりに血が騒ぐナイスな映画でした。

なんたって、ジミーペイジ、ジ エッジ、ジャックホワイトが3人でギター談義をやるんだからこれは見逃せません。もしクラプトンやベックとの3大ギタリストだったら陳腐になってしまうけれど、3世代のトップギタリスト、それも三人三様スタイルが違うというのが面白い。ジャックホワイトについてはあまり知らなかったのですが、一気にファンになりましたね。彼とは同じ血が流れていると感じました。
またエッジとジャックホワイトは、共にパンクを通り越しているのが良いですね。既成概念に囚われない。世間の常識など関係ねー、というパンク精神旺盛で、技術の追求に陥ったロック界に強烈なパンチを浴びせています。

日本では、ビートルズや美空ひばりなんかを批判してはならない、みたいなことがまかり通っていますが、私は全然好きではないし、ポップスや歌謡曲にも全くもって興味が無いので、ジャック・ホワイト、ジ・エッジの二人が語った「ポップスはくだらない音楽だと思っていたよ」との言葉に激しく共感しました。
日本では、「これが常識だ」という具合に考え方を押しつけて来る人がとても多く、歌謡曲を知らないやつは日本の音楽が判っていないだの、ビートルズを知らないやつは音楽やっている資格無し、みたいなことを平気でいう人が多いです。それも少しばかりライブ活動をしているような人に多い。私はそういうことを口にする人は基本的に信用も信頼もしていませんし、感性も知性が足りない人だと思っています。だからこの映画は実に痛快でした。
私は元々歌のある洋楽が好きではなかったし、ポップス的なものは全然受け付けなかったので、本物のロックと信じているツェッペリンの「フィジカルグラフィティー」やクリムゾンの各LP、ジェフベックのインスト作品は、正に私という人間を作り上げるバイブルだったわけです。そしてそのツェッペリンの音楽を作っていたジミーペイジが観られるんだからたまらないわけですよ。

今、自分がやっている音楽とこれほどまでにリンクするのは久しぶりです。私は彼らとは全然規模が違いますし、比べるのはおこがましいですが、魂はつながっている!!と激しく思いました。
お坊ちゃま、お嬢ちゃま、優等生は勿論の事、無頼を気取りながらアカデミズムに尻尾をふっているような輩にこれを見せたいですね。見せても何にも感じないかも知れませんが・・・。
映画の中で、ジャックやエッジが、スーツを着て携帯で話をしている人を見ながら「何の話をしているんだろうね」「どうせオーガニックの話でもしているんだろ」というくだり、痛快!!でした。

というわけで、私はどんどん私の道を行きます。土曜日は北鎌倉でCD発売記念演奏会がありますので、ロック魂をお持ちの方、ぜひお越し下さい。只激しく演奏するという訳ではありません。既成の伝統に囚われることなく、自分の思う音楽をやるのみです。

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毎度のことですが、今年もこのお知らせが出来ることがとても嬉しいです。
今年は地震・台風と日本列島を天災が襲い、その傷跡は未だ癒えていない状態。その様な中、演奏活動が出来ることに、感謝以外の言葉が出てきません。
まずは今週の土曜日、10月1日には、北鎌倉の古民家ミュージアムで、CD発売記念コンサートが開かれます。CDに収録した曲を中心に演奏します。これからは楽琵琶の演奏会も増えて行くと思いますが、これを一つの転機にしたい、とも思っています。18時開演です。
10月6日には川越の三番町ギャラリーで漆作家の方の個展の記念演奏をしてきます。このギャラリーはもうずいぶん前にやはり記念演奏をやったのですが、ずっと覚えてくれていて。またお声がかかりました。以前にも弾いた「壇ノ浦」を演奏します。
10月8日は藤沢にある朝日カルチャーセンター湘南にて、
琵琶レクチャー&コンサート。
春に続いて2回目です。お近くの方ぜひどうぞ。
お問い合わせは0466-24-2255です。
12日は定例の琵琶樂人倶楽部。今回は薩摩の四弦と五弦で「敦盛」の聞き比べをします。
15日は神楽坂のアートサロン「香音里」にて、私のソロコンサートをします。ソプラノ歌手 郡愛子さんのご自宅を改装してサロンとした素敵な場所です。

薩摩琵琶と楽琵琶による演奏で、久しぶりに「平経正」を演奏します。一曲助演で、尺八の田中黎山君に「まろばし」を吹いてもらいます 。
こちらのご予約は
おんがくの共同作業場042-522-3943 または
香音里 03-6280-8044迄お願いします。
そして11月は関西へ一週間ほどツアーに出ます。大阪のコモンカフェ(久しぶりです)奈良の東大寺門前 夢風ひろば、本薬師寺前のLE PARLOIR、 橿原今井の称念寺などなど・・・。関西方面の方ぜひお越し下さい。
11年11月11日ぞろ目は武蔵野スイングホールにて「饗宴~現代に蘇る中世世界」という企画演奏会をやります。中世野歴史や文学を元にした新作曲を集めるという企画です。
出演は私の他、ピアノの安藤紀子、ダンスのかじかわまりこ、筑前琵琶の大久保旭夏、尺八は田中黎山、藪内洋介、そして招待作曲家として、東保光さんを迎えて、新作の会をやります。
お問い合わせは
オフィス オリエンタルアイズ
orientaleyes40@yahoo.co.jpまでお願いします。
11月の23日には福島県立美術館の招きで「鎮魂~平家物語弾き語り」をやってきます。私の演奏で、どれほどの鎮魂になるか判りませんが、」精一杯やってきます。
12月の頭には恒例の「創心会」をオペラシティー内の近江楽堂でやってきます。
他にも色々とあるのですが、まずはざっとご紹介。本当にこれだけの演奏会に恵まれて嬉しいです。
私が良く書く「生かされている」という言葉は、どこか優等生的なものも感じるかも知れせんが、年を重ねるほどに実感できるのです。権威にも組織にも属さない私は、自分の力で何でもやっているつもりでも、結局もっともっと大きなはからいに生かされている、ということが、やればやるほどに感じられるのです。何というのか導かれているように思えて仕方が無いのです。
ぜひ今後もご贔屓に。