シルクロードコンサートツアーⅥ~トビリシ後編

いよいよこのツアーの最終公演となりました。
グルジアは音楽や芸術が溢れていて、街には絵を売る人や古本屋さんなどがいっぱいありました。男性のコーラスは世界的に有名ですし、「グルジア人は音楽とともに生きる人々」という言葉を先のバクーでも聞きました。

ルスタベリ劇場の正面

最後の公演はルスタベリ大通りに面した素晴らしい、国立ルスタベリ劇場での公演。こういう所ではもう滅多に演奏する機会は無いだろう、と思う位豪華な劇場でした。ここでは演劇を中心に上演しているようです。すぐ隣にはオペラ専門の劇場もありました。

      
 こちらは劇場の天井。かなり凝ったつくりになっていました。私の安カメラでは良く判りませんが・・。

この日のステージはこんな感じ。

!グルジアの日本大使館は今年出来たばかりで、私達の公演も大使館主宰としては初めて。もちろん日本人がグルジアで演奏したのも初めてということで、大使館としても気合が入った公演となったようです。

左が大使、真ん中は前出の矢野さん。そして右が大使夫人。気さくな方でしたので、パーティーも楽しかったです。

こちらは大使館のスタッフの皆さん。
スタッフ2
ちょっと太目の男性は、なんとこの日の朝、

素晴らしい劇場で素敵な人たちに囲まれての、ツアーのラストコンサート。本当に素晴らしいツアーとなりました。

今日のおまけはこちら。

空き時間に、とにかくトビリシには街にも郊外にも古い教会がそのまま残っていて、見所いっぱい、美味しさいっぱいの魅力的な所でした。

半月に渡るコンサートツアーもこれで全ての公演が終わり、シルクロードの旅もこれでおしまい。

思えば、琵琶を始めた頃、「琵琶を背負ってシルクロードを旅してみたい」と漠然と周囲に言っていましたが、あれから長い年月を経てそれがはからずも実現しました。その間、今回私が訪れた国々にとってはソ連からの独立があり、日本大使館が出来、政治的に色々な変遷があったことでしょう。
グルジアやトルクメニスタンなどは日本大使館が出来たばかりという、このタイミングでコンサートツアーが出来たことは、本当に凄いことだと思います。正に何かの縁に手繰り寄せられるようにして実現したツアーでした。

しかしながら、感無量の想いと同時に、時間というものは実に淡々と時を刻み、無常なまで
にこちらの意思とは関係なく進んでゆくものだな、と実感しました。
何か特別な気持ちを持とうとする私の心が一人で踊っているだけで、ふと気がつけばイスタンブールに向う飛行機の中にいたり、普通では入国できないアシュカバットで散歩していたり・・・・。

現実は人の心が作り出した幻想である、と仏教では教えているようですが、満開の桜を愛でて、葉っぱだけになった桜には見向きもしない、そういう都合よく身勝手な人間の心は、物事の本当の姿をどれだけ捉えているのだろうか・・。とそんなことが頭に浮かびました。

このツアーも多くの縁が繋がって実現したものですが、いくら私が思い入れを持とうが何しようが、シルクロードはそこにあり、人々もまたそこに生き、日々を過ごしているのです。何だか浮かれている自分が小さく見えました。

ただ私の演奏を聴いた人が、淡々と過ぎ行く日々の生活の中で、極東から来た琵琶法師の姿と音楽を記憶のどこかに留めてくれたならこんな嬉しいことはありません。
私はそうやって色々な土地の、色々な人々に音楽を聞かせて歩いているのですから・・・。

シルクロードコンサートツアーⅤ~トビリシ前編

喧騒のバクーを何とか飛び立ち、このツアーの最終公演地トリビシに向う。機内からは、前回の日記の最後にも貼り付けたようにコーカサスの山々がその雄大な姿を見せて我々を迎えてくれました。

トビリシの空港に到着。とても綺麗で清潔な空港。日本を除き空港の職員はだいたい怖い顔をしているのですが、ここの国の人は穏やかな顔をしている。バクーでの出入国の困難がうそのよう。ゲートも普通の検査だけですんなりと通してくれて、パスポートを渡しながらWelcome to Georgia と声をかけてくれる。それもグルジアではない、ジョージアと言っている。
そう、ここグルジアは旧ソ連ではありますが、完全にアメリカを向いているのです。ロシアとの対立、小競り合いは記憶に新しい所ですが、街中にそういった不安要素は全く見えませんでした。

人もアラブ系はほとんど見かけない。車の運転も東京に比べればまあそれなりですが、バクーから来るとかなりマナーは良い感じに思えました。

空港では、大使館から矢野さんが迎えに来てくれていました。矢野
こちらが目ぢからバッチリの矢野さんです。
公演の時も細やかに対応していただきました。出国までガイド&通訳、大変お世話になりました。

井上・宝川こちらは同じく大使館職員の井上さんと宝川さん。色々とお世話をかけました。
グルジアは私の先輩で黒澤組の役者でもあるI 藤さんがここ何年か凝っていて、色々と話を聞いたり、先輩が主催して開いたグルジア展にも行ったりして、期待が高かったのですが、その期待を大きく上回る素晴らしい街でした。

街の教会

              高台から見た町並み

町並みとにかくこの街は大小の教会が無数にあって、都会ながらとても歴史を感じる風情ある街なのです。日本で言えば京都という感じ。
道も石畳の所が多く、古い建物と相まって、本当に落ち着いた気分になります。公用語は一応ロシア語ですが、人々の言葉も穏やかで、アゼルバイジャンと同じ言葉とはとても思えません。

街行く人々は普通のおばちゃんもバスの運転手さんも、皆教会の前をと通れば十字を切っていて、信仰と生活がとても密接な関係にあることが伺えました。

泊まったホテルは旧市街の路地にあるKOPARA Hotelというところで、こじんまりとした感じがとっても気に入りました。
初日は大使館の方々とホテルのレストランで顔合わせを兼ねて食事をしたのですが、ここからの夜景はもう本当に美しく、見とれずにはいられませんでした。凄かった。
都会の人工的なそれではなく、無数の教会など古い建物が歴史を背負って佇む姿。それを優しくライトアップしている光は、正にろうそくの明かりのようで、街全体が教会のようでした。残念ながら私の安カメラでは捕らえきれませんでしたが、ぜひ観光で行ってみることをお勧めします。
グルジアは今年日本大使館が出来たばかりで、まだ直行便も通っていませんが、これだけの観光資源があれば、これから観光の面で大いに発展して行くと思います。

さて、このグルジアでは久しぶりににんにく風味の料理を食べました。グルジアは今までの3カ国と違って石油などの資源が無いので、農産物に力を入れているそうで、野菜が結構豊富です。またワイン通にはグルジアワインはこの所にわかに人気が上昇しているということです。もちろん私達も頂いてきました。
料理はちょっと塩が強いのですが、ミネラル分が多いのか、いわゆる塩辛いという感じがしません。そしてにんにく風味がグルジア料理の特徴です。

左はほうれん草をすりつぶして作ったほうれん草饅頭みたいなもの、右はくるみソースを使った料理。とにかくグルジアは日本人にとって、料理に関してはとっても相性の良い国なのです。

そしてグルジアといえばヒンカリ。これに尽きます。まんまショウロンポウで、中身が肉だったり、きのこだったりして大変に旨い!先ずはちょっと穴を開けて、中の肉汁をすすってから食べるのがお作法。

実はヒンカリハウスなる所に皆で行くことになっていたのですが、私一人だけおおぼけをかまして行かれなかったので、ひそかに一人でうずうずしていた所、今回の公演で照明を担当してくれた畠中さんが気を利かせて連れて行ってくれました。感謝。ちなみに畠中さんは大変な料理好きで、帰国後グルジア料理を自分で再現して作っているようです。新年会は畠中邸に決まりだ!!

更にこちら。ちょっと画像が悪いですが、ホルモンなどの内臓肉で出来たソーセージ。好きな人と嫌いな人にはっきりと分かれましたが、私は◎ おかわりしてしまいました。

という訳で、グルジアは街も料理も人も全てが私を癒してくれました。
さあ、これから最後の公演。グルジアでも最高級の歴史ある劇場 国立ルスタベリ劇場の幕が開きます。
後編を乞うご期待!!!

シルクロードコンサートツアーⅢ~タシュケント後編

地下の劇場に向う壁には歴代出演者のサインがひしめいて、ちょっとアングラな雰囲気も漂う所ですが、タシュケントの人でこのイルホムを知らない人はいない、というほどの有名な劇場でもあります。
もちろん琵琶法師もしっかり名前を書いてきました。

この日は打ち合わせが午後からでしたので、午前中ちょっとだけ市内を回ってきました。さすがにサマルカンドまでは行けませんでしたが、旧市外にあるモスクとバザールで少しばかりの観光気分を味わいました。エレーナ

ガイドしてくれたのはエレーナさん。日本語もばっちりで、ジョークも飛ばすなかなかの方。途中、通訳のローザさんもバザールで合流し皆でウズベキ料理の昼ごはんを食べてきました。

              今回同行したメンバーと

素晴らしい装飾のモスク

                   モスクでご奉仕していた女性達。

さてイルホム劇場では、このツアーのレパートリーとは違って、私の代表作「まろばし」を演奏してきました。日本では琵琶と尺八(又は能管)のデュオでいつもやっているのですが、イルホムでは芸術監督であり、作曲家のアルチョムキムさんがアレンジしてくれました。

まず相方はネイと呼ばれる横笛。他の国でもネイという、斜めに吹く尺八のような楽器もありますが、ウズベキのネイはちょうど日本の篠笛と同じように横に構える笛です。Batirさんというネイの名手の方が吹いてくれました。彼はとっても気さくでフレンドリー。画像が悪いですが、こんな感じです。

こちらはリハーサル


                                             これが本番の時の写真               

このデュオのバックに弦楽四重奏と管楽器が付き、ノヴェンバーステップスの小さいヴァージョンのような形で演奏しました。
とにかくむちゃくちゃ格好良かったです。いつかレコーディングしてCDで出したいと、本気で思いました。
何だか怖そうな顔をしていますが、私の隣の方が作曲家で芸術監督のアルチョム・キムさん。The Omnibus Ensembleという現代音楽のグループを率いていて、作曲家としてもヨーロッパで高い評価を得ている方です。

イルホムではお客さんとの距離が近いせいか、演奏も他のホールでの演奏と違い、気合がそのまま伝わるようで実に気持ちよかったです。

やはり自分の音楽がシルクロードの地で高らかと鳴り響くというのは気持ち良いものです。それもウズベキの音楽家達との共同作業で作り上げ、演奏するというのは、何にも変えがたい素晴らしい体験でした。ぜひぜひまたもう一度やってみたいです。

帰りにはこんな美しい女性にサインを求められ、一緒にパチリ!

この日のおまけは大使館の栗原さんお勧めのウズベキ料理店「ジョセフィーヌ」演奏後の打ち上げで行きました。

ここは本当に美味しくて、普段滅多にパンを食べない私が、どうにも手が止まらない位、このパンは美味しかったです。


そしてこのラグマンという麺料理。これが極めつけに旨かった!麺は手打ちなので、もちもちとして上質のうどんのよう。汁はトマトベースなのですが、とっても品良く、箸が止まらないほどにどんどん腹に収まってゆく感じで、久しぶりの麺に舌鼓。
ここはラム肉もとっても柔らかく、何を食べても美味しく、メンバー皆大満足でした。

大興奮のウズベキスタンでした。さてお次はアゼルバイジャンのバクーへと飛びます。

シルクロードコンサートツアーⅡ~タシュケント前編

我々のレパートリーの他、彼女の伴奏をしたり、島唄の前山君とユルドゥスさんのデュオで盛り上がりました。さすが島唄は生活の中から生まれた民謡だけあって、ウズベキの民衆の唄とも何の違和感もなくすんなりと合うんです。皆びっくりしてしまいました。
伝統的な島唄の三線伴奏に乗って唄われるウズベキの唄には会場を埋め尽くした500人の観客もやんやの喝采でした。写真が手元にないのが残念。

こういう時に琵琶は楽器としても、歌の面でもなんとも融通が利かない。あまりに日本的に洗練され過ぎているためでしょうか。せめて楽器の面だけでも三味線のように色々と対応できたら良いのですが、スケールにも転調にも対応しない構造が憎らしかったです。
この日も琵琶楽というものの本質が更に見えた様な気がしました。結局、私はユルドゥスさんのバックでちょっとだけ弾いて終わってしまいました。

しかしこの日は、本番もさることながら、とんでもないアクシデントが発生。リハーサル中に前山君の三線の糸巻きが折れてしまったのです。すぐさまドラムの撥を削って糸巻きを作ろうと皆で話していると、照明の通訳をしている若者が、地下に楽器修理の職人さんが常駐している、というのです。

さすがは国立音楽院!さっそく地下にすっ飛んでいって頼んだ所、3時間で直せるというので、すぐにやってもらいました。なんという縁なのか、神様のお導きなのか、スタッフ全員、まるで何かに守られてでもいるような気がしてなりませんでした。
このおじさんがその修理屋さん。実に格好良い職人さんでした。見栄えも良い見事な修理で前山君もヴォルテージが最高潮になって、上記の大盛り上がりのデュオに繋がったという訳です。

もちろんその夜のヒーローは前山君。地元TV局が何局も押しかけ、6台のTVカメラに囲まれる中、ラストはここでも観客全員のスタンディングオベーションで大成功の内に終えることが出来ました。演奏時の写真が今手元にないので残念なのですが、本当に良いステージでした。

そして今日のおまけはこちら。

ちょっとわかりずらいですが、国立音楽院の演奏会の前の日に大使公邸の晩餐会におよばれして、和食のコース料理を頂いてきました。いや~~旨い!!!まだほんの何日しか日本を離れていないのに、なぜこんなに鰹だしに郷愁を感じるのだろう??

メニューは
前菜 盛り合わせ 〆鯖と青大根のなます
    厚焼き玉子 えびのてんぷら

椀物 帆立真丈清汁仕立
 
造里 鯖 サーモン

焼物 茄子田楽

煮物 平目 白菜 信田巻き豆腐ロール

食事 御飯 味噌汁 香の物

甘味 季節のフルーツ

どうだ!ウズベキスタンでこれですよ。まいった。

さて次はいよいよ最高ヴォルテージアップのイルホム劇場です。乞う御期待!!

シルクロードコンサートツアーⅠ~アシュカバット

11月15日より30日まで半月に渡るシルクロードコンサートツアーから帰ってきました。
憧れのシルクロードでの演奏会ということで期待はあがりっぱなしだったのですが、先ずは最初に訪れたトルクメニスタンの首都アシュカバットの報告です。

最初から私も含めメンバーがお腹の調子が悪く、ちょっとした旅の洗礼を受けました。なにしろ未知の土地での演奏会とあって、皆緊張もあったと思います。
泊まらせて頂いたのはちょっと古めでしたが5スターの豪華なホテルでしたので、ゆっくりお風呂につかって一休みできました。

トルクメニスタンはいわゆる専制政治の国で、中央アジアの北朝鮮とも言われている国なので、無事に入国できるか正直心配でした。中央アジアの国々はどこでも空港は軍の管轄らしく、軍服にピストル姿の人が必ずいて、話しかけられたりするとちょっと怖かったです。案の定、アシュカバットの空港ではずいぶんと待たされ、入国に時間はかかりましたが、大使館の方とガイド&通訳の方々がゲートの向こうで待っていてくれてゲートを抜けた時にはほっとしました。

右は大使館の小寺さん。中央は黒髪が美しいガイド&通訳のジェネットさん。そして左がトルクメニスタンの将来を熱く語るコブラン君。入国から出国までお世話になりっぱなしでした。
コブラン君はウクライナの大学で学び、その後群馬大学に留学、来年は一橋大学に更に留学して、クリーンエネルギーの研究に情熱を傾ける秀才。将来のトルクメを想い自ら行動してゆく、トルクメの坂本竜馬のような有望な逸材。ジェネットさんも来年は日本に来て、日本語をもっと完璧にしてトルクメと日本を繋ぐガイドになりたいそうで、日本の感性を勉強したい、と言っていました。お二人と再会できることを願って止みません。

トルクメニスタンでは電気と水道がただ!!そのせいか夜になってもビルは色々な色で煌々とライトアップされ、街の中はさながらディズニーランドのよう。首都ということもありますが、その後行った国の中でも一番道が整備され街は綺麗でした。もちろん旧ソ連時代の寂しい感じの古い建物もありましたが、思っていた以上の都会でびっくり。インターネットなどはまだ制限があるそうですが、お酒も普通に買えるし、思っていたよりは自由な感じがしました。ただ娯楽施設のようなものは全く無かったですね。

アシュカバットは50年前に大きな地震があり、街は全て新しかったので、日本人が思うようなシルクロードの雰囲気はなかったですが、シルクロードの地で琵琶を弾くという事は、大きな刺激でした。


初日ということもありメンバーも私も細かなミスが少しばかりありましたが、最後はスタンディングで迎えられまずまず成功でした。

今回は奄美島唄の前山真吾君と一緒だったのですが、薩摩藩の支配と搾取の苦しい生活の中で生まれた奄美民衆の唄が身にしみました。また琵琶の音楽が生活の中で生まれた民謡とは大きく違う性質のものだということもしみじみと感じました。この認識は今後の私の活動の中で大きなファクターになって行くと思います。
そして薩摩と奄美が400年の時を経て、お互いの音楽の源流であるシルクロードで同じステージに立つという事に深い感慨を覚えました。

次はサマルカンドで有名なウズベキスタンに向います。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.