友 遠方より来る2013~その弐

昨日、台湾の琵琶奏者 劉 芛華さんがやってきました。
昨年、彼女は台湾で、笛奏者の方とジョイントリサイタルをやって、その時に私の作品「SOROCCO」を演奏してくれたのです。

   劉リサイタルパンフ1劉リサイタルパンフ2劉リサイタルパンフ3

こちらがその時のパンフレットです。右端の曲目紹介の所、上から2番目に我が曲が記されているのですよ。プロフィールもちょっと詳細されていました。書いてある文章はよく判らないですが・・・。彼女のDVDを観ていて、やはり私はどんどん曲を書くべきだと改めて思いました。

劉さんはとにかく日本の文化が好きな方で、先日亡くなった中村勘三郎の台湾での公式ファンクラブ代表を友人二人でしている程(もう一人は時々当ブログに登場する二胡奏者の葉文宣さん)今日も海老蔵を観に行くと言ってました。
毎回そうなのですが、日本語英語のちゃんぽんと漢字での筆談をしながら、途中から仲間も入って皆で道元や空海の話を延々とやりあい、盛り上がりました。劉さんはお酒がかなりいける口なので、この通り。

2013-1-15-4台湾では古典楽器でもドレス姿で演奏するのが一般的らしく、背が高い彼女は、舞台でドレスアップするとモデルさんみたいな感じになる方ですが、普段は大変気さくで楽しいのです。
劉さんは今、台湾で大変活躍しているだけあって、二胡の葉文宣さん共々その技術の方も驚くほどで、古曲は勿論の事、現代曲もかなりのクオリティーで演奏します。私の曲も私以上に細やかに且つ音楽的に弾いてくれました。
劉さんとは音楽の方向性や考え方がとても合うのです。あくまで古典を土台にしながらも、常に革新的であり、次世代を見つめて行くというその姿勢は、日本の邦楽器演奏家には少ないので、海を越えた良き仲間なのです。
とにかく高度に訓練された技術と音楽性がしっかりあるというのは素晴らしいですね。巷には思い入れは強くても、技術や音楽性は??な人が多いですからね。

        劉リサイタル葉書演奏会葉書

話をしていても専門とする中国音楽だけでなく、クラシックやジャズ、フラメンコに至るまでとにかく幅広い。「何時かパコデルシアとアルディメオラのMediterranean Sundanceを弾きたい!」なんていう言葉が出て来る位だから、私とはばっちり話が合う訳です。彼女のように、開かれた心で音楽に精進している仲間がどんどん増えると嬉しいです。
では私の演奏する「SIROCCO」を最後にどうぞ。

    

世界は繋がって行く。

雪景色の記憶2013

昨日は凄い雪になりました。成人式の方は大変でしたね。久しぶりの大雪でした。

        

私の家の居間には大き目の窓が有るのですが、昨日はブラインドを目いっぱい上げて、雪の降る様を眺めながら、自慢のチューブアンプJUDO J7(作者による改造を施してある逸品物)に灯を入れて、朝からずっと音楽を聞いていました。やっぱり手をかけた再生装置は良い音がしますな。私はイヤホンなんかでは絶対に音楽を聞きかないのです。古い人間ですいません。

ディースカウこんなにゆっくりと音楽を聞くのもそういえば久しぶりです。降りしきる雪がこんな気分にさせたのか、心に音楽が沁み渡り、満ちた時間でした。コワルスキーせっかくの雪の日ですので、ディースカウの「冬の旅」からはじめて、ドミンゴ、コワルスキー、スラヴァ、グルベローヴァ、シュトゥッツマン、オッターと声楽ばかり延々と聴き入ってました。

そして最後は、どうしてもいつもここに行きついてしまうという私の定番、ぺルトの「タブラ・ラサ」。中でも「フラトレス」という曲ではクレーメルの極限に佇むようなViが叫びとなって我が心に深く深く突き刺さります。あの世界に意識が完全に飛んでしまいました。

音楽の背景には哲学も理論も歴史もあります。音楽を生業としている以上、それらはしっかり勉強すべきだし無視は出来ないのですが、中にはそんな理論や歴史等学問・教養の方に走ってしまい、芸術の、音楽の、官能とロマン、そして感動を忘れてしまう人も多いですね。邦楽には今、ちょっとそんな人が多すぎるような気がします。大変残念です。
是非こざかしい知識や経験は置いといて、頭も手も空にして音楽に接して頂きたいものです。先ずは官能を心に刻まなくては!!お勉強はその後で。

バンヘイレンナタリー・デセイ能
    Met劇場

今こそ、この混迷した現代にこそ垣根を越えて魅力ある音楽を聞こう。長い歴史の中で人類が連綿と育んできた芸術・音楽は、我々を在るべき姿へと回帰させてくれるものだと思います。理屈は後で勉強すれば充分。こだわりも、何も捨てて溢れるばかりの官能に満ちた舞台を観よう。そこに全身を浸し、味わおう。そんな想いを強くした一日でした。

「音楽は叫びと祈りである」黛敏郎

熱狂的音楽愛好のススメⅨ「皇帝ティートの慈悲」

Met Live viewing「皇帝ティートの慈悲」を観てきました。新春にぴったりの煌めくような気持ちの良い作品でした。

      

スター達が、その魅力を全開にして魅せた舞台でした。選ばれた者だけが立つことを許される世界最高峰の舞台。そんな舞台を観ることが出来るのは本当に幸せなのです。観ていて嬉しくなって涙が出てきました。
モーツァルト最期のオペラとして知られるこの作品は、人によっては皇帝への媚を売るもので評価しないという意見もありますが、もう現代ではそんな所は超越しているし、私は純粋に作品として良いと思います。確かに他の作品とは違う面もあり、大団円のラストシーンは御祝儀曲みたいな所もありますが、それでもこの舞台には喜びが満ちていました。

         ガランチャ1
セスト役のエリーナ・ガランチャはもう最高としか言いようがなかったですね。男性の役(オペラではズボン役といいます)でしたが何の違和感がなく役をちゃんと自分のものにして、歌も演技も最高でした。カルメンの時とはしっかりキャラを変えている。さすがです。「あなたの頬にそよ風を感じたら、それは私のため息だと思ってください」なんて歌いあげる様は言いようがなく素晴らしかった。

そして、いつもは淑女系の役が多いヴィッテリア役のバルバラ・フリットリは、ものの見事に悪女を演じていました。まるでこっちの方が地なんじゃないかと思えるほど!凄い迫力でした。やられた~~!

他にやはりズボン役でアントニオを演じた
ケイト・リンジーがなかなかに素敵でした。最初はちょっと声が細いかな、と思ったものの、第2幕でのアリアは実に素晴らしかった。観ている内にどんどん惹きつけられて行きました。宝塚の俳優さんみたいで、美しい男性という感じが◎。まるで少女漫画からそのまま飛び出してきたようで格好良かった。スターは絵にならないといけないのです。実に良い姿をしていました。これから注目ですね。

こういう舞台を観ていると、オペラの舞台は選ばれし人の為にあるのだと、つくづく想います。現代はライブをやりたいと思えば誰でも舞台に立てる時代。ちょっと出来るようになるとすぐライブ。そしてライブをやることで満足してしまう・・・・。色々なタイプの音楽家が居るのは良い事だと思いますが、私は最高のものを観て、聞きたいのです。選ばれし者しか立つことが出来ない、最高峰の舞台はいつの時代にもあって欲しいですね。

この舞台でMetデビューをしたセルヴィリア役のルーシー・クロウはMetの若手育成プログラムで学び、今回デビューしたそうですが、インタビューで、Metで歌える事が最高の幸せだと、観ているこちらにビンビン伝わって来るような笑顔で答えていました。世界中からMetを目指して才能と実力のある若手が集まって来る。でもその中でも選ばれるのはほんの僅か。その選ばれた者だけが舞台に立てる。だからこそMetはこれからも世界最高のレベルで在り続けるだろうし、世界がMetに注目する。そして煌めくのです。

邦楽にもこの煌めきが欲しい。家元制度もけっして反対ではないのですが、代々家の人だけが受け継ぐのでは、ちょっともう狭い感じがします。現代社会を考えたら、日本という小さい枠だけでは小さすぎる。良いものはもっと世界に向けて発信する位でいいのです。そして舞台は最高のレベルを持って輝く場であって欲しいのです。簡単に手が届かない、最高レベルの選ばれた者が舞台に立っていて欲しい。そんな舞台が日本にもあって欲しいですね。

        場面1

毎回そうなのですが、素晴らしい舞台は最後のカーテンコールを観ると鳥肌が立ちます。この華やかさと感動は何物にも代えがたい。今邦楽に、琵琶に、この鳥肌が立つような感激と感動があるだろうか?。豊かな人生を謳歌し、視野を世界へと広げ、人間の営みの素晴らしさを実感し、賛美する、官能に満ちた時間を、邦楽の舞台でも味わいたい。上手、お見事、偉い、珍しいなんていうちまちましたものでなく、この身が震えるような音楽を、舞台をやりたいのです。

Metを観ると元気になります。年明けから良いものを観ることが出来ました!

薩摩琵琶三流派対決2013

今年も新春恒例の薩摩琵琶三流派対決をやってきました。今回も琵琶の制作家でもある石田克佳さんを迎え、「女性を主人公にした琵琶曲」というテーマでやりました。石田さん2013-1-9-2には私の使っている琵琶の全てを作ってもらっていて、彼の存在なしには私の音楽はあり得ないという位お世話になっている方なのですが、演奏家としても、薩摩正派をきっちり演奏する貴重な存在です。今琵琶界になくてはならない方ですね。写真は石田さんと古澤さん、私に加え、御来場の薩摩4弦のベテランOさんです。流派を超えて交流できるのが琵琶樂人倶楽部の良い所!。どんどん垣根を外して越えて交流を深めて行きたいと思います。
今日の演目は古澤さんが「潯陽江」の上段、石田さんが同じく「潯陽江」の下段、そして私が「静~緋色の舞」という演目でした。

       okumura pfoto8

琵琶樂人倶楽部ももう足掛け7年という事ですっかりライフワークになって来ていますsmall。この看板絵も大分定着してきました。ありがたいことに年々琵琶の仕事も充実して来ていますので、もうライブ感覚の演奏はきっぱり卒業して、私の主催や企画を中心にしていこうと思っています。私は活動の最初から、全て私の作曲作品でしたし、他の人と組んでも私の作品を演奏していますので、スタイル自体は最初からかなりの主張を持ってやっていたのですが、曲だけでなく活動についても、もう自分のやり方を明確に打ち出す頃だと思っています。

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若い筝曲家が「文化とは現代に生きる人が創るものだ」と某雑誌に書いていましたが、私はその意見の全面的に賛成です。
何時も書いているように、薩摩琵琶には古典となるような曲がほとんど無い。特に錦琵琶(五弦薩摩)の方は楽器が出来あがってまだ間もないのですから、全てが現代曲です。古典曲というものはあり得ない。そんな状況の中で、琵琶が今、魅力的な音楽として響いているでしょうか?音楽を聴いて、感動が沸き起こらなければ人は動きません。教養・お勉強になってしまっては、もはや音楽ではないのです。先ずは何よりも琵琶楽が魅力的な音楽であって欲しいし、その方向で、作曲・演奏の活動を広げて行きたいと思います。

DSC09916先日HPをリニューアルしましてサイト(http://biwa-shiotaka.com/)内の「works」というコーナーを整理してみましたら、15年前から40曲以上を作っていました。勿論現在のレパートリーとしては半分がいい所ですが、こうして曲を書いて、演奏してゆくことが一番私らしいのだと、あらためて納得しました。正しい史観を持ち、古典となる雅楽や平曲、能、そして文学、歴史に視点を持ち、現代の琵琶楽を創って行くのが私には良いようです。私は先生として教えるのは、あまり得意でないのですが、これからもより私らしいやり方で、私の音楽をやって行こうと思います。
今年は他にも新機軸を考えていますので、また決まり次第お知らせさせて頂きます。

さあ今年も希望が湧いてきました!


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友 遠方より来る2013~その壱

今年も新たなるスタートを切りました。今年は年明け早々、旧岩崎邸にて演奏会があったので、正月ボケも無く割と順調にスタートを切っています。

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これは来場のお客様が撮ってくれた写真です。とても素敵な建物で雰囲気は良かったのですが、空調設備がないので、手がかじかんで寒かった~~。でも意外な知り合いも来てくれまして、サロンコンサートにしては2回公演で200人は超えようかという満杯のお客様でにぎわいました。

1そんな正月でしたが、岩崎邸から帰ってくると一通の年賀メールが届いていました。それは私の1stアルバムで尺八を吹いているグンナル・リンデルさんからだったのですが、なんとスウェーデンから日本に今来ているというではないですか!勿論早速逢う事に。彼は外国人としては大変珍しく芸大邦楽科の院まで進んだ方で、現在ストックホルム大学の準教授をしていています。尺八を中心とした視点で日本文化の研究をしていて、その成果が素晴らしい本となったので、それらを母校の東京芸大に収め、また更なる資料の収集のために来ていたのです。

   ginyujackets

グンナルさんとは、もう10年以上前あるパーティーで出逢い、それから意気投合して、随分いろいろな所で演奏しました。私の1stアルバムの他、彼のCDにも参加して、演奏に於いても、都内ではもちろんの事、東北や関西などで何度となくツアーをやって、スウェーデン国内でもストックホルム大学や国立民族博物館等で演奏会を開き、その後ロンドンまで一緒に渡って、2ロンドンシティー大学では、我が作曲の師 石井紘美先生の新作を共に演奏した盟友です。(ちなみにロンドンでの演奏はWergo及びNaxosから石井紘美作品集「Wind way」として世界発売になっています)
5年ぶりでしたが、昼間の2時からアメ横の居酒屋で飲み始め、これでもか、という位呑み倒してきました。あんなに呑んだのは久々。も~話も酒も止まりません。音楽の事、人生の事・・あ~楽しかった。改めて考えるべき良い話も色々あったので、これはまた後日書こうと思っています。とにかく美味い酒でした。志を同じくする友とは、何時逢っても良いものですね。

海1また今月は、台湾から琵琶奏者の劉 芛華さん、ドイツからはソプラノ歌手のアイリカ・クリシャールさんが来日して、逢うことになっているので、楽しい華やかな出だしとなりそうです。
その他にも、以前海外で演奏した国々から「あなたの演奏を聞きました」なんてメールが時々来ていますが、海外の知人とストレスなく連絡が取れるなんて、良い時代になりましたね。これからはどんどん海外に向かって行こうと思っています。

今年は本当に私にとって新たな年だと思っています。自分がやるべき仕事をし、それに集中出来る、そんな年になると思っています。これまではちょっと色々なものを抱え過ぎていたのですが、昨年一昨年と、その辺を大分整理出来て、今年は更に自分のやるべき音楽に特化して行けるような感じがしています。

そして何度もくどいですが、今年も私が楽曲を書いているアンサンブルグループ「まろばし」の演奏会が今月の18日にあります。今回は例年と違い小さな音楽サロンの開催となりましたが、是非よろしくお願いいたします。

        marobashi 2013

気合入ってきました。活動開始です!!


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