旅がらす~カリブ編カルタヘナ

カリブツアーの最後はカルタヘナです。キュラソーからカルタヘナへとまた船に揺られ行きました。船旅の途中、飛鳥船内のホールにて、手妻と琵琶の舞台をやってきました。

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沖から見たカルタヘナの街 なかなか大きな街なのです

大きな船ですので、船内のホールと言えども500人ほどのキャパがあります。手妻や琵琶が珍しかったと見えてお客様は満杯。しかしながら船上ということで多少の揺れもあって、藤山新太郎師匠はやりにくかったんじゃないでしょうか。残念ながら演奏中の写真が無いのですが楽しい舞台でした。こういうエンタテイメントの舞台は私には似合わないものの、やればなにかしら勉強になるものです。客観的に自分の音楽を見つめることも出来、自分に何が出来て、何が出来ないのかよく判ります。今回も色々と勉強させてもらいました。

さてカルタヘナでは、少しだけ観光をしてきました。
此方は古い城跡。街中に突然出現するので、風情は今一つでしたが、すぐ傍が海ということもあって、何だか開放感が気持ち良かったです。
カリブの国々は車はほとんどが日本車でした。ほとんどの車がボロボロの状態で走っているものが多く、そのボロっぷりが何とも南国という感じでした。
常夏ですから、色んなところが緩いんですよね。日本人でもこういうのが好きな人も多いんだろうな~~。

税関の所には、フラミンゴやオウムが放し飼いになっていて、それがまたカリブっぽい感じ満点でした。
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帰りはコロンビアの首都ボゴタのエルドラード空港へ行って、そこからヒューストン、そして成田へと帰ってきたのですが、毎度琵琶を飛行機に持ち込むのは本当に大変。毎回、私自身用と琵琶用の2枚のチケットを常に用意して行くのですが、カウンターでは「なぜチケットを2枚持っている」という質問を散々浴びせられ、機内に入ってもキャビンアテンダントから色々言われ、もうとにかく説明が面倒。また日本の航空会社のように親切な所はまず無いし、とにかく優しくない。毎回、飛行機に乗るのが一番大変なのです。それに私は狭い所に長い時間居るのも苦手なので、海外公演は積極的にやりたい反面、移動が最大のストレスなのです。
ファーストクラスで行けるようになりたいもんですな。

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日本橋富沢町 樂琵会にて

途中は、待ち時間6時間なんてのも何度かありまして、へとへとでしたが、とにかく無事に帰って来れて、帰った次の日にやった「日本橋富沢町 樂琵会」も無事務めることが出来、一安心。安心したとたんに花粉症に見舞われました。

良い経験をさせてもらいました。

旅がらす~カリブ編キュラソー

ポートオブスペインを出て、カリブ海で丸2日船に揺られ、キュラソーという世界遺産にも登録された島に上陸しました。場所としてはベネズエラの沖なのですが、オランダ領になっています。

     

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ここは貿易上、重要な位置にあるらしく、スペインに侵略され、原住民は断絶し、その後オランダに占領され、奴隷制が敷かれたりして、歴史に翻弄された島です。

キュラソーの街並み
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ご覧の通り、街の建物はパステルカラーになっていて、絵になる島でしたが、古い城壁(右写真)なども残され、歴史に翻弄された島の姿が感じられました。
しかしちょっと綺麗過ぎて、短時間では見所は感じなかったですね。もっと時間があれば魅力的な所がいっぱいあったと思うのですが・・・。この前のポートオブスペインなんかは正直街は汚いし、山の方は危ない感じがしたのですが、そこには人間の生きている空間が良くも悪くも感じられました。キュラソーは今観光で成り立っていると思うのですが、ちょっと整い過ぎでしたね。

18それでも市民の生活はしっかりあって、八百屋さん魚屋さんがドカ盛で商品を並べてました。
魚屋さんなんか、ハエが山のようにたかっていても全然気にならないらしく、ちょっと日本人にはキビシイ感じでしたね。

上の写真の城壁の中がちょっとしたショッピングモールがあって、ブランドショップなどが並んでいるんですが、そこにSUSHI SHOPがありました。看板を眺めていたら一人の日本人女性に話しかけられました。何でもこの地に住んでここで働いているとの事。詳しい事情は聞きませんでしたが、色んな人生があるものだな~~と常夏の島で感無量。

夜は、同船したマジシャン石井裕さんのテーブルマジックをマリナーズ倶楽部というバーで堪能。いやはやプロのテクニックというものは凄いものです。何故カードの絵が一瞬にして目の前で変わるんでしょう???。何度見ても魔法のような超能力のような技でした。同席した皆さんも大盛り上がり!!こういうエンタテイメントは楽しいですね。

朝は人が滅多に来ない後方デッキに陣取り、カリブ海を渡る風に身を任せ、のんびりと読書三昧。考えてみれば、こうして色んな仕事やら雑用を忘れ、本当の意味でゆったりと過ごせる時間をいつ味わっただろう??。東京に居ると、毎朝PCに向かい、メールや電話に追われ、ろくに譜面に向かう時間すら無く、常に何かに追われ、何件もの仕事を同時進行で抱えているのが現実。しかし船の上は電話もネットも通じないので、何をあがいても無駄。すっぱり諦めがつき、かえって色んなものから解放されてゆっくり出来るのです。今回は古代史関係の本と、井上靖の「敦煌」を再読。良い時間を頂きました。こういう時間も人生には大切ですね。

キュラソーでは演奏が無かったので、たっぷり遊んでしまいました。まあこれも役得役得。

旅がらす カリブ編~ポートオブスペイン

2月の半ばから、カリブ海の国々を巡ってきました。しかし今回は帰国の次の日が「日本橋富沢町 樂琵会」。それも記念すべき第一回目の演奏会だったので、とにかく飛行機がちゃんと飛ぶか気が気じゃなかったですが、予定通り帰国でき、且つ「日本橋富沢町 樂琵会」も無事に終わりホッとしましたので、気持ちも落ち着きました。落ち着いたとたんに花粉症の症状が出てきました。体は正直ですね。

早速カリブのご報告を。

     
       お決まりの機内窓から見た雲海と、船上からのカリブ海の眺め

先ずはヒューストンまで飛行機で行き(ここまでで13時間もかかるので、これだけでもへとへと)、そこからトリニダードトバゴの首都ポートオブスペインへとたどり着きました。ここは何と言ってもスティールパンの聖地。色々な個性のパンのグループがひしめいていて、世界的なコンテストなども開催されています。私自身は南国にあまり縁の無い方なのですが、知り合いにスティールパン奏者が居るので、ちょっと本場の生音を聞いてみたいという気持ちはありました。実は私が行くすぐ前に日本人のスティールパン奏者がこの街で殺されるという、痛ましい事件があったばかりなので、ちょっと切ない感じもしていたのですが、結局街中では演奏を聴くことは出来ませんでした。少し残念に思っていたのですが、今回は移動が船でしたので、ここを離れる出港の際に地元の演奏家とダンサーが、こんな感じで見送ってくれました。

     

この明るさ、リズムなどは日本の風土からは到底出て来ませんね。雪が降るような国では、こういう風に体が動きません。やはり風土があってこそ感性が生まれ、音楽が生まれるということを実感しました。かの地で聞くスティールパンの音は気持ち良かったですよ。亡くなった若者もこの魅力に惹かれここに来たんでしょうね。無念だったでしょう。
こういうものに触れると、素晴らしいと思うと同時に、武満さんの「音楽にはやはり国境があるのですね」という言葉を想い出します。私は、音楽が万国で解り合える共通言語だとは思っていません。地域によって風土がこれだけ違えば、感性もまるで違う。ロックやポップスのような歴史の無い、無国籍のものだったらいざ知らず、風土に根差した民族の音に関しては、なかなか理解すら及ばないのが当たり前だと思います。

判らなくても、違う感想を持っても良いのです。多様なものがこの地球上に在るのだということが判ればそれでいい。一つの価値観に押し込めようとする、同じ感想や想いを押し付けようとするノー天気な理想主義の方がよっぽどおかしいし、怖いです。多様であるということが、生命の基本であり、文化の基本です。モンテーニュのいう通りです。今の邦楽そして日本という国に、その多様さがあるでしょうか・・・・・・?。

今回は手妻の藤山新太郎師匠と一緒だったのですが、とてもシンプルで且つ、話芸と共にやる手妻は外国の人には判りずらいのでしょうね。また琵琶の、あの静寂精緻なあの空気感も、彼らにしてみれば異国のお経を聴かされているような気分なのかもしれません。でも自分達のものと違うものがあるということが判ってくれるだけでも良いかなっと思います。
日本人は奈良平安の時代から、自分達に無いものを取り入れてきました。舶来主義はもう筋金入りなのだと思いますが、邦楽器でジャズやポップスをやったり、クラシックの曲を弾いて、カッコイイとか凄い現代的なんていわれるのは、世界の音楽の中でも邦楽だけだと思いますね。そう思うのは私だけなのでしょうか?

カリブ海の夕暮れ 

連日とても良いお天気で、海も穏やかでした。海面をトビウオが跳ね、カモメがそのトビウオを狙って飛び回っていました。毎日の夕陽朝陽はとにかく美しく、地球が一つの生命体であるということを感じずにはいられませんでした。照らされる海原は一つとして同じ表情が無く、滔々として、いつまで見つめていても飽きが来ないのです。この生命の躍動に比べたら人間の小さいこと。小さなカテゴリーに拘り振り回され、プライドやら意地やら、無くてもよいような鎧を自ら背負い込み、要らぬ努力をしながら自分を生きている。もっと大きな自然の中の一部として自分を捉えることが、何故できないのだろう???
水平線を毎日眺めながら、人間の存在の危うさ、またその人間の作り出した文化の素晴らしさ、風土に展開した長い歴史・・・・、色々な想いが私の中を駆け巡りました。
普段触れることの無い風土、文化に触れることは大いに刺激になりますね。また一つ視野が広がりました。

日本橋富沢町 樂琵会

ちょっとご無沙汰しました。ここ一週間ほどカリブ海の国々を周っておりました。素晴らしい風景が沢山ありましたが、これはまた日を改めましてご報告したいと思います。

船上甲板から見たカリブ海の夕暮れ

さて今日25日は、「日本橋富沢町 樂琵会」の記念すべき第一回目演奏会を開催します。この会は毎月やっている琵琶樂人倶楽部とは性格を異にしていまして、とにかく琵琶の生演奏を堪能していただくということが趣旨なのです。琵琶樂人倶楽部では琵琶楽の色々な側面をテーマに取り上げ、レクチャーを中心にやって来ていますが、樂琵会の方は、隔月開催で、且つ演奏を中心に、毎回ゲストを入れてやって行きます。またゲストも若手や異ジャンルの人で、なるべく魅力的なものを持っている人を頼んでやって頂きます。

日本橋富沢町 樂琵会の看板絵

琵琶樂人倶楽部が100回を迎えるにあたって、当初の目標通り琵琶楽の歴史や関わる文学等、文化全般に渡り、正に文化としての琵琶楽を色々な側面からレクチャーして行く教養講座的な会に育ったこともあって、この樂琵会ではレクチャーより先ず実演ということでやって行こうと思います。

第一回目は、私が薩摩琵琶・平家琵琶・樂琵琶を演奏して、その違いを聞いていただくお披露目の会です。
第二回目は、4月21日。筑前琵琶の平野多美恵さんを迎えて、薩摩と筑前の違いを聞いていただきます。それも「敦盛」対決!
第三回目は、6月16日。尺八と共に現代曲を合奏で楽しんで頂きます。
第四回目は、8月18日。語りと共に怪談物をやります
とりあえずここまで決まっています。

何れも第3木曜日、19時開演。1000円でお茶付です。
とにかく新たな気持ちで発信して行きます。是非是非是非ご贔屓に!!!

カリブ海の船上からの朝日

琵琶でやってみたい事はまだまだいっぱいあります。樂琵琶は器楽専門に色々やって来て、一応の作品も出来上がってきましたが、薩摩琵琶の器楽曲に於いては、まだまだこれからという感じがしています。声に関しても従来の語り物ではなく、声を使った新たな作品を創るのが私の仕事。発想だけは色々ありますので、これからもっともっと曲を作ってゆきたいのです。

ただ、それらをちゃんと舞台に上げてこそ、初めて形になるので、舞台として聴かせることが出来る所までやらなくては意味はありません。1時間2時間の舞台を自分で張ることが出来る人は琵琶人にはまだ少ないです。上手いのは当たり前。それを自分の舞台で、観客を魅了する所までやらなくては舞台人とは言えません。賑々しいエンタテイメントにしなくても、しっとりとした静かな会をやっても良いと思います。色々なやり方が出来たら良いですね。

昨年12月の料亭福田屋での演奏会にて

自分なりのやり方でこれからもやって行きます。是非演奏会にお越しくださいませ。

間合いの美学

立春も過ぎたせいでしょうか。まだまだ寒暖の差はあるものの、日々春を感じることが多くなりました。今年は花粉症も出ないし、お仕事もまあそれなりに頂いているので、なかなか順調なのですがスケジュールがタイト過ぎて、ちょっと時間配分が大変です。

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少しづつ仕事の質が変化してきていて、今までやった事のないような面白い仕事が、年を追うごとに増えてきました。ありがたいことです。そしてそんな変化と共に「間合い」というものが益々気になってきました。
この「間合い」というやつは数字ではとても捉えきれないし、同じものでもやる度に違って感じることも多々あります。一筋縄ではいきませんね。「間合い」は常に変化するし、同じということはありません。音と音の間合いだけでなく、リスナーとの間合いというものも大切です。場との間合いも同様、「間合い」は自分を取り巻くあらゆるものとの関係性ではないかと思っています。

ティアラ2016

踊りが入ると音楽は一気にその間合いを変えて行きます。これはフラメンコでも日舞でも、音楽だけの時とはぜんぜんちがう「間合い」になって行きます。来月舞踊作家協会の定期公演にて、日舞とモダンダンスの踊り手が私の曲で踊るのですが、その稽古で先日、日舞の花柳面先生の稽古場でリハーサルをしていた折、当たり前ですがいつもと全然違う「間合い」を感じました。結構前ノリで弾いていたつもりなんですが、こちらが遅れそうな勢いなのです。ちょっと不思議な感じがしました。
シルクロードの国々での演奏会では、演奏だけで行ったので、どこへ行っても「踊りは無いのか?」と聞かれました。民族舞踊系は音楽だけ聞いていると、前ノリで突っ込んで行くようなリズムを感じがしますが、日舞なども、一見ゆったりした雰囲気にみえて、その中ではもっと違う流れがあるのかもしれませんね。まだまだ修行が足りません。

国立音楽院ホール本番1
ウズベキスタン国立音楽院ホール演奏会

左ウズベキスタン イルホム劇場演奏会リハ
右旧グルジア ルスタベリ劇場大ホール演奏会

音楽それぞれにリズムやノリなど色々あると思いますが、そういうものは体に染みついた感性でもあるので、いくら真似した所で自分の基本は大して変わらないのではないか、と近頃は思うようになりました。この我が身に染みついた「間合い」でやるからこそ、自分の音楽になるのでしょう。憧れて真似ているようでは、辿り着けません。私は20代の頃フラメンコギターなどもやってみましたが、なぞるのが精一杯で、とても音楽にはなりませんでした。ジャズも同様でしたね。
いつも書いているように、タンゴもブルースもジャズも色々な国で、新たな命を得て、一つのスタイルやジャンルを創ってきたのです。物真似しているようでは所詮はそこまで。異国のものであれ何であれ、自分の言葉でしゃべることが出来ないと、自分の想いは伝わらないのです。少なくとも自分の「間合い」がはっきりとあり、且つ日本の風土と歴史を感じるような風情が無くては、私が思う琵琶の音楽は響きません。この風情を一番現すのが「間合い」。「間合い」は歴史であり、文化であり個性であります。つまり「間」一つに深遠な美学があると言っても過言ではないと思うのです。

「間合い」を取る事は、自分の存在を自ら確認し表現することだと思います。そこには調和も反発もあります。様々な条件下で、現在の自分がどういう形で存在したいのか、舞台はそこを問われているのかもしれません。
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一つお知らせがあります。今月25日より「日本橋富沢町 樂琵会」という会がスタートします。以前両国でちょっとだけやって頓挫していたのですが、場所を変え新たな気持ちで始めたいと思います。
何時もの琵琶樂人倶楽部は琵琶に関する色々な側面を、レクチャーを主体にして教養講座的にやっていますが、樂琵会ではとにかく演奏を聴いてもらおうというのが趣旨です。難しい話は抜きにしてどんどん聞いてってください。

第一回目は 樂琵琶:楊真操、薩摩琵琶:壇ノ浦、そして平家琵琶をほんのサワリだけ。
第二回目は4月21日、筑前琵琶の平野多美恵さんを迎えて、「敦盛」対決す。
第三回目は6月16日、尺八の田中黎山君を迎えて、現代の琵琶楽を合奏。

先ずは2月25日、午後7時開演、料金:1000円(お茶付)。場所は日本橋東京都中央区日本橋富沢町11-7 KCIビルディング B1階です。最寄駅は小伝馬町です。

是非是非ご贔屓に!!

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