
20日日曜日は、毎年夏の恒例SPレコードコンサートをやります。琵琶樂人倶楽部も今回で187回目。よくまあこんなに長く続いてますね。まあ儲けるつもりが無いのと、孔子様の言うように、努力して苦しんで頑張ってやるよりも、毎回楽しんでやっているから続くんでしょうね。来年のスケジュールも既に今組んでいまして、9月には決まると思いますが、来年も楽しませて頂きます。

さて今回のSPコンサートは、永田錦心、田中旭嶺、豊田旭穰の演奏を聴いて頂きます。それにしても大正から昭和にかけての演奏家は、皆さんレベルが高いですね。現状が本当に寂しい限りです。音楽性は別として、少なくとも技術に関してはどのジャンルでも、時が経てば経つ程に上がる事はあっても落ちるという事はないのですが、薩摩・筑前の琵琶樂に関しては、その技術の落ち込みが著しいですね。薩摩では水藤錦穰さんほどの技術の方は未だ出て来ませんし、筑前でも一部の方を除いて、当時の演奏家の正確なまでの技術は聴いたことがありません。特にSP時代にはピアノとデュオでやっている録音が結構あるのですが、西洋音楽と対峙しても引けを取らないその技術は大したものです。今回かける田中旭嶺さんもピアノとの録音がありますが、洋楽的な音程やリズムに関しては見事なものです。
SPレコードはやり直しの効かない一発録音だという事を考えると、その技術は現代では考えられないようなハイレベルだったのだと思います。また演奏の気迫も、今の何でも加工できる時代の演奏とは全く違いますね。

毎年こうしてSPレコードを聴いていて、本当に色々と思う所、考える所があります。音楽は時代が変われば社会の中で、その在り方も変わるし、生きる人々の感性も変わるので、それに伴って音楽も変わって行くものです。歌詞だけを見ても大正や昭和の初期に出来上がった歌詞は現代に生きる人とは全く違う感性だというのは当然の事ですし、それを変えようとしないのは、ろくに歌詞の事を考えていない、つまり単なるお稽古事としか思っていないという事でしょう。本気になって音楽を創ろうとしないのであればリスナーと乖離してしまっても仕方ありません。逆に言えば、SP 次代の琵琶樂はその時代に生きた人々と共に在ったからこそあれだけのハイレベルが実現したのだと思います。

私は若き日に流派で少しばかり勉強しましたが、常に不思議の連続でした。音楽は、素晴らしい曲があり、弾き手が居て、そしてそれを聴くリスナーが居て初めて成り立ちます。これは楽器マニアにも言える事なのですが、自分が演奏する事にしか関心がない人が多いのです。楽器でもいくら高級な材料で見事な細工を施した楽器でも、それから美しい音を紡ぎ出す弾き手も、素晴らしい曲を創る作曲家も、受け入れるリスナーも居なければただのものでしかありません。楽器として命が無いのです。
琵琶人も今に生きる人の感性や心に沿って創ろうとしない限り、その音楽に命は宿りませんし、誰も受け入れてくれません。私には当時の(今でも)閉じこもってサークル活動している琵琶人達がどうにも不思議でなりませんでした。ロックでもジャズでも、クラシックでも、常に時代と共に新しいものが創られ、創りたいという人が溢れているのにね。これでは現状の琵琶樂に明日があるとは思えませんね。少なくともSP時代は一般大衆が琵琶樂に熱狂していたのです。今琵琶人達はそれを完全に忘れている。残念ですね。
私はこれからもどんどん新たな琵琶の作品を作曲して、演奏して、自分の思う琵琶樂の世界をやって行きますよ。小学生の時に初めてギターを手にしてから好きなように曲を弾いて演奏してきました。もちろん習いにも行きましたが、やりたい事をやるには創るしかないですからね。誰かのコピーや焼き直しをやって喜んでいる人の気が知れません。永田錦心が新しい琵琶樂を創ったように、私も自分のやりたい琵琶樂を創って行きます。



後半は今年も昨年に続きジャズの特集をします。ジャズは薩摩筑前の琵琶樂とほぼ同時期に興った音楽。やはり大衆に熱狂的な指示を受け発展し、現在は既に琵琶樂と同じようにその形は形骸化してしまいました。しかし琵琶樂と違う所は、その音楽は色々な形に変化して、様々なジャンルの中に今生きている事です。
私自身もジャズをやっていたからこそ、今琵琶で好きなように曲が創れるのであって、その素養無くしては今の私はありえません。単なる技術や知識というだけでなく、次代を切り開いて行く精神や、行動力は、マイルスやコルトレーンから学んできたのです。そういう所は現在生徒の中にも同じ質を持った人が出て来ているので、きっと何かしらの形で受け継がれて行く事と思います。
余談ですが、上に張り付けた画像のカウント・ベイシーと
は握手したことがあるんです。可愛いおじいちゃんという感じでした。マイルス・デイビスは目の前まで行きましたが、怖くて手が出ませんでした。若き日の想い出です。
お待ちしています。