外はかなり春の気配となってきましたね。我が家の近くの善福寺緑地では梅花が咲き出し、春の陽射しが満ちて気持ち良い日々になってきました。春になると様々なものが動き出し、正に芽吹くという生命の躍動を感じます。演奏会の方も3月からぼちぼち始まります。という訳で先ずはこちら、Team NOSARUの演奏会のお知らせから。

実は、この夏ヨーロッパツアーが予定されていまして、そのチームの名前が「Taem NOSARU」といいます。能楽師の津村禮次郎先生を筆頭に、笙の真鍋尚之さん、ソプラノの廣瀬かおりさん、作曲の渋谷牧人さんらと一緒に行ってくるのですが、このツアーはスペイン・バルセロナのサグラダファミリア、同じくバルセロナのコロニア・グエル教会地下聖堂、フランス・ブザンソンの古楽器フェスティバル、そしてデンマーク・コペンハーゲンでのワールドミュージックフェスティバルの演奏が決定してます。なかなか凄い事になってます。JTBでツアーも組むとのことですので、NOSARUと一緒にヨーロッパに行ってみたいという方は是非以下にお問い合わせください。上記HPでは短いプロモーション用の動画もご覧になる事が出来ます。
尚、このプレ公演はサローネフォンタナにて、3月4月5月と開催し、6月には武蔵小金井駅前の宮地楽器ホールにて、少し規模を大きくしてやることになっております。私は3月と6月の登板です。是非是非お越しくださいませ。
この他3月11日には、毎年恒例となっている笛の長谷川美鈴さん主催の「和の音」。今回は相模原の日庭寺で開催です。

今回はこの演奏会の為に新曲を仕立ててみました。篠笛と琵琶の曲は昨年静岡のお寺での演奏会の時にも新曲を創ったのですが、今回の作品は、その構成を基にしながら創ってみました。今までにないちょっと新鮮な曲です。乞うご期待。


photo 新藤義久
私はとにかく創り続ける事が、自分の仕事だと思っています。やはり音楽も芽吹いて行かないと、世の中と共に在り続ける事は出来ません。私はの仕事は見事に琵琶を弾く事ではないなとやればやる程に感じます。作品を創り、それを聴いて頂く、それが私の仕事です。
そして創る為には視野も感性も柔軟でいなければ質の高いものは出来ません。私の音楽の土台となる古典やその他様々な音楽・芸術への視線も更に深めて、過去の経験や知識に寄りかかる事の無いように心がけてます。現代はリリースすればそのまま世界発売な訳ですから、大声出してコブシを回しても、そんなものは世界の人にしてみれば単なる形としか認識してくれません。閉じられたドメスティックな感性、メンタルを開放して行かないと、琵琶の音は世界に響きません。
人は音楽からエネルギーを感じているのです。技芸を聴いているのではありません。明確に伝えたいものが自分の中にあってはじめて技芸にエネルギーが満ちて来ます。琵琶の音で伝えたい世界は何なのか。そしてそれは何故自分が伝えたいのか。そこを先ずクリアにして、そしてそれを具現化することが出来て、初めて世界中に溢れる音楽と同じ土俵に上がれるのです。そこまで持って行かない限り、世界の人に琵琶樂の魅力を伝える事が出来ません。意識をどのように持ち、どこに視点を向けるか、そこが一番大切ではないでしょうか。私は「世界の中の私」という感覚が、今後もっと必要になってくると考えてています。

こういう創作活動をこれまで続けて来れたのは、とにもかくにも「お陰様」というしかないですが、季節の風情を感じ様々な植物の躍動を観る事が私の中では、とても重要な事だと思えるようになりました。それは心の中の余裕が出来たとも言えるし、感性が開いて色んな所に視野が向いて来たとも言えるかもしれません。

特に梅の花は、まだ肌寒い頃に咲き、私たちの心に温かさと潤いを感じさせてくれます。桜の華やかさに比べれば地味な存在かもしれませんが、その佇まいにはケレンが無く、ただ密やかに咲く姿は、私の一つの理想です。人間は皆どこかに、評価されたい、良く見せたい、良く思われたいという俗な心が少なからずあります。それがあるからこそ人間は向上心が湧き上がり、文明を築き上げてきたのでしょう。私自身も自分の音楽を聴いてもらいたいし、気に入ってもらいたいし、評価も欲しい。決して悪い事だとは思っていませんが、そういう感性は時に肥大し、いつしか欲に振り回され、振り回されている事にも気づくことなく人生を過ごしてしまいます。こういう姿は、何も求めずただ静かに咲く梅花の無垢な風情には程遠い。
だからこそ毎年春の初めに梅花を愛で、自らの心に溜まった澱を祓い浄化させているのかもしれません。