旅路にて

今週は木曜日から松江に行ってまいります。

先日の焼津を含め、東京、新潟、熊本と小泉八雲を巡るツアーも松江で最後となります。今回はゆかりの地、松江にて「破られた約束」「耳なし芳一」を上演してきます。声をかけていただいた安田登先生には本当に感謝しかないですね。特に今回は八雲の直系である小泉凡先生も一緒なのです。昨年1月の愛知県大府での公演で御一緒して以来ですので、お会いするのは久しぶり。凡先生とはお互いにちょっと乗り鉄気質なので、とても楽しみなのです。

年内の地方公演は、これで終わりです。あとは都内での演奏会だけですが、定例の琵琶樂人倶楽部の他、17日にVnの田澤明子先生をゲストに迎えての日本橋楽琵会があります。これが今年の最後のメインイベントですね。
田澤先生の演奏は、先日聴きに行った中島ゆみ子さんの演奏とは対極にありまして、その音色は私を大いに刺激し、私のポテンシャルをぐいぐいと引き出してくれます。もう何度も御一緒していますが、Vnが鳴り出したとたん、その音色に命が宿ったかの如くうねり出すので、隣に居ていつもドキドキします。私も気合を入れてかからないと、田澤先生のVnとは対峙できません。今回は8thCD「沙羅双樹Ⅲ」にも収録した「二つの月~Vnと琵琶の為の」も久しぶりに演奏しますので大変楽しみなのです。お時間のある方は是非とも聴きに来てください。一押しですよ。

12月17日(金)第23回日本橋楽琵会
       「古から現代へ」
時間:開場18時45分 開演19時00分
会場:小堺化学工業本社KCIビル B1 
   中央区日本橋富沢町11ー7 
   (馬喰横山A3出口直進 まいばすけっと向かい側)
料金:2000円
出演:塩高和之(琵琶) 田澤明子(Vn)
演目:経正 花の行方 
   君の瞳~Vnと琵琶の為の
   二つの月~Vnと琵琶の為の 他
ご予約:小堺化学工業 担当 小堺 03-3662-4701 kosakai_h@kosakai.co.jp
ご予約無くても大丈夫ですが、頂けるとありがたいです。

琵琶樂人倶楽部にて Vnの田澤先生と photo 新藤義久


コロナ禍にありながら、私は昨年も今年も数多くのお仕事を頂き、地方公演も随分とやらせてもらいました。来年は前にお知らせした横浜日ノ出町の7artscafeでのサロンコンサートシリーズも始まります。都内でも定例の琵琶樂人倶楽部や上記の楽琵会など、自分の音楽を表現できる会を順調にやらせて頂く事が出来、本当に感謝しております。
音楽家はともすると、お仕事を頂いて飛び回っている事で満足してしまいがちです。せいぜい面白いライブを時々やる程度で、技術の切り売りのようになってしまう事も多いので、どんな状況でも自分の目指す世界を持って、自分の音楽を創り続けて行かないと、結局お仕事の依頼も長続きしません。
若き日に「琵琶ではなく、塩高で呼ばれるようになれ」と言ってくれた先輩の言葉を、年を追うごとに噛みしめていますね。

琵琶で活動をしてきて、まだまだ到達という感じには程遠いものの、それでも少しばかりは自分らしいスタイルを築けてきたように思っています。
邦楽というとお教室という感じですが、私はあくまで舞台人として活動したかったので、琵琶を手にした最初から、お教室の先生という発想がありませんでした。流派協会という組織のにも馴染みが無かったです。更にはエンタテイメントやショウビジネという所からも遠く、邦楽=江戸文化という風潮にも違和感があるという、凡そ邦楽からは感覚がかけ離れた輩ですので、活動も作品も全て独自に活動を展開して来ました。
何にも媚びない、群れない、どこにも寄りかからないというのが私の信条で、この調子で天邪鬼の如くこれ迄作曲・演奏をやって来ましたが、今になってみると、これ迄このスタイルで続けてきて、本当に良かったと思っています。

池袋あうるすぽっと「能でよむ~漱石と八雲」公演にて

まだまだ私は旅の途中に居るのだと思っています。ずっと一人旅ですが、まだやりたい事も色々とありますし、これからも先へと歩みを進め、もっと自分から沸き起こる音楽を創りたいのです。いつかその旅が終わる時が来るかもしれませんが、その時にはきっと今とは違う風景が見え、これ迄とは違う音楽が流れ出て来るのだと思います。しかしまたそれは次の新たな旅の始まりだったりして・・?。終わりはありそうにないですね。

のんびりと自分の行きたいところに旅をするのが、琵琶弾きとしての私の生涯なのでしょう。行けるところまで行きたいと思います。

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