大変な時代となりました。昨年の秋はまだコロナ禍ではあったものの、結構頻繁に演奏会で飛び回っていたので、年が明けて今年の後半にはもうある程度世の中が動くだろうと、お気楽に思っていましたが、今や日本だけでなく、海外に於いても先が見えない事態になってしまいましたね。今年は秋の演奏会も色々と予定されているのですが、開催出来るかどうかも判りませんので、暑中見舞いも残暑見舞いも出しませんでした。

そういう中で、来月は人形町楽琵会を再開します。ちょっと微妙な感じというのが正直な所ですが、とにかくせっかくの機会なので、やってみようと思います。会場も吹き抜けの大きなスペースですので感染対策も問題ありませんし、何よりも自ら動き出すことで、次の一手も見えてくるというもの。新たな時代にどう動くか知るには良い機会だと思っています。
今後ワクチンを接種していないと仕事が出来ない、演奏会に入場させない等という事態になってくるかもしれません。このネガティブな状況に次の時代への道を見出せるのか。試されているように感じています。とにかく目先の稼ぎや受け狙いに走らず、次の時代にも淡々と活動を続けて行く道を模索したいと思います。
以前の楽琵会にて 鶴山旭翔さんと
今回のゲストは、筑前琵琶の鶴山旭祥(お名前の「翔」を「祥」の字に変えたそうです)さん、笛の大浦典子さんです。私と鶴山さんで、祇園精舎の聴き比べ、他大浦さんとはこれ迄の定番曲から新作まで色々。そして最後に弾き語りで鶴山さんが「平忠度」、私が「平経正」というラインナップです。
昨年2月を最後にこの楽琵会を中止していたのですが、その最後の会が鶴山さんをゲストに迎えた会でした。今回は弾き語りから現代邦楽迄、琵琶の多様な魅力を聴いてみたい人におすすめの会です。詳しくはHPのスケジュール欄を御覧ください。
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さて私が日々何をやっているかといえば、少しばかりのレッスンの他、大体家で作編曲をしています。ゆるりと発想が湧くのを待ちながらやっているので、傍から見るとゴロゴロしているように見えるんだろうと思いますが、音楽家にはこういうお仕事の仕方もあるのです。ただビールを飲んでのんびりしている訳ではありませんよ・・・?。
アーティストにとって、自分の思い描く世界が具現化して行くというものほどワクワクするものはないのです。このろくに身入りも無い時期に、こうしてぶらぶらしていられるのは、作品から沸き起こるエネルギーで、この身に自信が漲ってくるからです。
これまでの作品をブラッシュアップしたり、編成を変えて編曲してみたり、新曲を構想したりして毎日譜面を書いては手直しをするという事を繰り返しているのですが、とりあえず一度出来上がると「儀式」として演奏会用にコピーして、見開き出来るように一枚に繋げて譜面を作ります。その譜面をスタジオに持って行って音出しをして、まずい所をチェックして、また書き直して譜面を作り直してという事を延々と繰り返してます。こういう事が出来るのは時間がたっぷりあるからですね。ありがたい時間です。お陰様で昨年からのコロナ禍で、これからのレパートリーとなって行くだろう作品が、色々と出来上がりました。
今後世の人々の感性が変化して行き、社会の在り方も、音楽活動のやり方も大きく変わって行く事でしょう。それに伴って音楽芸術の姿も、自分自身の作品自体も変わって行くでしょう。風の時代がこうやって訪れるとは思ってもみませんでしたが、とにかく旧価値観が崩れ、社会が変化・進化して行く事は世の習いであり、また膠着化した邦楽の世界にあっては、その変化は良い方向に向くのではないかとも感じています。世阿弥も利休も宮城道雄も永田錦心も、皆新時代の最先端を走り続けました。そしてそんな先人の創り上げたものが、次世代スタンダードになって行ったのです。

このメンバーで10月に池袋あうるすぽっとにて公演があります。photo 新藤義久
これからは自分が何をしたいのか、どう生きたいのか、自分で考え、学び、選択し、自身で責任を持って行動してゆく時代です。他人の作った軸や価値観で生きる時代はもう終わりました。80年代バブルの頃の価値観が、今やとても理解できないように、10年もしたら今の感性や常識が、理解しがたいものとして感じられるでしょうね。今後は今までのように人を集めて、演奏会を開くという事は難しくなるのは目に見えています。大きな発想の転換が必要になってくるでしょう。次代へどんな眼差しを持っているか。そこが重要な鍵になるでしょうね。
今は、私という人間が試される時だと思っています。