静かな暮らし

自粛解除になったとたんに、世の中動き出しましたね。私の仕事の方も動き出しています。5月はeテレの「100分de名著~平家物語」の再放送や、同じく昨年NHK文化センターで安田登先生、玉川奈々福さんとやった公開講座などの再放送が相次ぎ、先日はゲンロンカフェでも安田先生、山本貴光さんと共に生配信をさせて頂きました。また夏以降の舞台公演の話や、レクチャーのお仕事、小さなライブのお話、お世話になっている神田音楽学校のレッスン等々が次々に決まり、そのリハーサルやら何やらで朝から動き回っています。こういう時期に本当にありがたいことですが、今後どうなって行くのか皆目見当がつきません。よく考えて今後の活動をして行くつもりではありますが、何しろ今まで通りという訳には行かないと思います。音楽活動だけでなく、日々の生活についても、これからの人生について考える時期に来ている感じですね。

日本橋富沢町楽琵会にて photo 新藤義久
この3か月、じっと籠っていて、譜面を書いたり、今迄のレパートリーの見直しをしたりしながら、色んな事を考えていました。何かいつもと違う状況になってみると、初めて見えるものが沢山ありますね。一般の仕事でも転勤になったり部署を変わるだけで、人生開けたり、逆にストレスにやられてしまったり、色々とあると思いますが、私のような仕事では、これ位強烈な刺激が、ある意味で今後を考える良いカンフル剤になったようです。また舞台に立つ機会がこれだけ長い間無いというのも初めての経験でしたが、この機会に多くの人とメールでやり取り出来て、楽しい時間でもありました。その中で、こういう時期は「自分自身を分析すると良い」というアドバイスも頂き、これまでの自分の軌跡を今一度振り返ってみたりして、自分の特徴や強み、弱み等々改めて自分自身を見つめる機会になりました。私は舞台に立ってこその人生であり、自分の作品を創り演奏するのが私の仕事、という事を改めて認識しました。

私は以前からタレントとして売れっ子になって、大活躍をしたいという願望は無いので、食って行く為に技を切り売りして舞台に立つなんてことは、私にはストレスなだけです。これまでもそうでしたが、地味で小さな舞台だろうが、大きなステージだろうが、自分の音楽・世界をじっくりと聴いてもらうのが仕事だと思っています。またそれが出来なければ音楽家として成り立たないとも思っています。ギャラを稼ぐ為、スタジオミュージシャンのように演歌歌手のバックで演奏するのは、私には無理ですね。もうそういう仕事はギタリスト時代に色々やりましたし・・・。お陰様で、今私は、本当に細々ではありますが、ほとんどの仕事を自分の創った作品のみでやらせてもらっています。今後もそのスタイルはしっかりと貫いて行こうと思っています。
音や金時にて、フラメンコギター:日野道夫、ウード:常味裕司 樂琵琶:私

そして最近よく感じる事なのですが、私が尊敬している音楽家・芸術家は皆さん、良い環境を作り上げています。そんな方々は何か暮らしと音楽がとてもマッチしていて、自然体な感じがするのです。勿論多くの事を経て、苦労も重ね、築き上げたのだと思いますが、その姿には憧れますね。素晴らしいスタジオや稽古場を持っている方も居れば、フラメンコギターの日野道夫さんなんかは、暮らしぶりは地味ですが、常にギター一本かついで何処にでも出かけ、自由にフラメンコ人生を謳歌しています。
暮らしの形はどうであれ、心穏やかに自分の思う音楽・芸術に邁進することが出来、日々を過ごせる環境があるというのは素晴らしい事です。とある琵琶の先輩は、最近東京を離れ、栃木の田舎に移り住んで自由な暮らしを始めましたが、その方の気持ちも判る気がします。
日本橋富沢町楽琵会にて、津村禮次郎先生(photo 新藤義久)。ルーテル市谷ホールにて、日舞の花柳面先生と
この3ヶ月間、東京の街も少しばかり静かになりましたが、解除になったとたんにまた元の喧騒に囲まれてしまいました。前よりもむしろ世の中が集団ヒステリー状態という感じで、過激なまでの消毒やマスク着用などの街の様子を見ていると、同調圧力が過ぎて、どんどんと生きずらい世の中になって行くような気がしてなりません。
まあ私のような貧乏暮らしでは、好き勝手に生きようと思っても、なかなかそうはいかないご時世ですが、音楽を生み出すには、自分自身の心に先ず静寂がある事は勿論の事、環境にも静寂が欲しいですね。何だかちょっとこれからの人生を考えたいな~~という想いも出て来ました。

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奈良 柳生街道

社会がどんな時代でも、その時代や社会の中で生きるのが人間の運命であるし、どんな環境にあってもその中で作品を生み出して行くのが芸術家です。こういう時代に生を受けたのも一つの運命。しかしその運命の中で、自分が求めるように自由に生きるのもまた人生。

もっともっと自分の思うように人生を生きて行きたいですね。

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