9年

昨夜の月は見事でしたね。しばし見とれて眺めていました。Worm Moonと呼ばれる月だそうですが、その煌々と照り輝く月下の世の中はコロナウイルスのパニックで、未だ騒然としていますね。ウイルスの実態が素人には判らないので下手なことは言えないのですが、とにかく皆が安心して暮らせるようになって欲しいものです。色々なものが停滞して、社会全体の劣化になって行かないことを願うばかりです。
今年はコロナウイルスに隠れて震災の話題は少なくなっていますが、忘れてはいけないこととして、今年も想いを持って過ごしたいと思ってます。

私にとって春は様々な花を愛でる時期であり、命の輝きを一番に感じる時期であり、そしてまた震災の記憶が甦る時期でもあります。花粉症が出ることもあって、この時期は演奏会も少なく、家で地道に譜面と向き合っているのですが、これからずっとこの記憶は私の人生の中にあり続けるのだと思います。

岡崎史紘君 昨年、琵琶樂人倶楽部出演時
今年は私の主催する琵琶樂人倶楽部が11日にあるので、これ迄行っていた福島の安洞院さんや、和久内先生が主催している追悼集会ではなく、いつものヴィオロンにて琵琶の音を捧げます。今回は筑前琵琶の岡崎史紘君がゲストです。彼は他には無い個性とキャラの持ち主でして、毎年呼んでいるのですが、どんどんと進化して行くのがとても面白い。お稽古事のステレオタイプばかりな琵琶人の中で、こういう独自の個性を持った人が現れてくるのは本当に嬉しいです。これからもこんな琵琶人をもっと応援して行こうと思ってます。こんな時期だからこそ音楽を、そして琵琶を演奏して行きたいですね。私の演奏が追悼になるかどうか判りませんが、語り継いでゆくべきものとして、この日は毎年演奏して行きたいと思います。

あの震災では、本当に色んな事を考えさせられました。私が今迄思ってもみなかった事を突き付けられ、見させられ、感じさせられ、とても多くの事を問いかけられました。私は被災した訳ではありませんが、その問いによって私の音楽に対する感じ方や、社会の中での在り方など、色々な面が変わってきました。またそれまで縁遠かった福島ともつながりが出来、人だけでなく様々な分野につながって行きました。

2018年福島 安洞院3.11祈りの日にて ご住職、出演のみなさんと

震災やウイルスパニック、戦争など、世の中は常に思わぬ方向に動き出して行くものです。人間は常にそういう中に生きていかなければならない。そのためには現状維持だけでは、命は次へとつなげることは出来ないのです。ここで政治談議をするつもりはないのですが、日本全体で頭の中を変えて行かないと、大変なことになりそうです。勿論琵琶樂も同じで、永田錦心や鶴田錦史が強く激しく持っていたイノヴェーションマインドが、今こそ必要なのは明白ですね。

私は音楽を創ることが一つの使命だと、年を追うごとに感じています。薩摩筑前の琵琶はまだ歴史が浅いこともありますが、とにかく様々な作品を創り続けることは、とても大事なことだと思っています。琵琶樂の文化を無くしてはなりません。

日本橋富沢町楽琵会にて。筑前琵琶の鶴山旭翔さんと

緊急事態には、目の前の援助やインフラ整備等それらが先ず第一ですが、こういう時にこそ文化が必要なのです。そして問われます。それは生きる根底に愛を持てるかどうかということ。人間は大きなストレスを与えられると、身を守るという本能から無意識で根拠なき差別や中傷、攻撃へと向かってしまいます。現に欧米ではもうそれが始まっています。そこには世の中全体への愛はありません。更にその近視眼的な視野は全体主義や排他主義に傾いてしまいます。だから音楽家は今こそ音楽を奏で、創り広めてゆくべきだと感じています。「炭鉱のカナリア」とも言われますが、音楽家、アーティストこそが先ずは行動して行かなければならないのです。そしてその音楽は、愛を語るものであって欲しい。ラブロマンスという事ではなく、音楽の根底に人類地球への大きな愛に満ちた眼差しが溢れていて欲しいのです。

想いを新たに、この一日を過ごしたいと思います。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.