水無月の頃

毎年何故か、GWが明けた頃から6月~7月頭辺りが大変に忙しくなります。
湿気が多く、琵琶にとって一番最悪な季節に演奏会が多いとは何故なのでしょうね。まあ何をおいてもお仕事を頂くのはありがたいの一言なのですが、とにかくこの時期、楽器も本人も調整に一苦労です。今年も様々なタイプの演奏会がひしめいているのですが、そんな中でも気持ちの良い演奏会をご紹介。

先ずは左のチラシ「琵琶の調べ~紡ぐ響き」。今月27日青梅市 宋建寺での演奏会です。この会は横笛の長谷川美鈴さんのお声がかりで、個性的なメンバーが揃いました。和洋の楽器がソロ・デュオ・アンサンブルを繰り広げます。まだお席も若干あるそうなので是非起こし下さいませ。バリエーションのあるプログラムとなっています。詳しくは私のHPのスケジュール欄を御覧になってみて下さい。
そしてもう一つ。これまで何度か演奏させてもらっている練馬の「けやきの森の季楽堂」での筑前琵琶の演奏会。この演奏会は、日本橋富沢町樂琵会や琵琶樂人倶楽部でお世話になっている筑前琵琶奏者の平野多美恵さん主催の演奏会によるもので、タイトルは「森の中の琵琶の会 薫風」。右の写真は昨年の季楽堂での私と尺八の吉岡龍見さんの演奏会の様子。良い感じでしょ?。古民家を再生した空間は邦楽にはドンピシャなんです!!。
平野さんは先日国立劇場の公演にも出演され、これからが楽しみな今、大変のっている演奏家。今後は御自分でも演奏会を主催して活動を展開して行くようで、今回がその第一歩となりました。こちらは6月9日の開催です。乞うご期待!。

水無月は何故か皆さん勢いが良いです。

若き日 高野山常喜院「塩高和之演奏会」にて
良い舞台をやりたい。納得する内容の舞台を創りたい。ただその一心で、今までやってきました。特にこの水無月は色んな想い出があります。数々の失敗も経験しましたが、はっとするような特別な瞬間にも何度も出逢いました。舞台というのは観るほうも、やる方も何にも変えがたい魅力があります。私は舞台に立つという事がとにかく喜びなのです。熱狂、興奮、静寂、超越・・・。あの瞬間がたまらないのです。エンタテイメント音楽では無いので、お金とは無縁ですが、毎月何度も何度も舞台に立って、それを生業としている今の、この人生はとても気に入ってます。

忘れられない舞台もあれば、もう一度やってみたいと思うものもあります。しかし舞台はその場だけで成立する、いわば「生もの」。過去を引きずってはいけないのです。
舞台はいうなれば異次元の夢の空間。場の大小ではなく、どんな所でも舞台は日常から離れた場所なのです。私たち舞台人は、夢の世界を表現し提供する者なので、夢の世界を創りだす為にも、毎回新鮮な気持ちで舞台立ち向かいたいのです。芸術家として作品を創り出すことはとても大事なことですが、それと同時に我々は「生」の舞台を務めることもまた同じように大事なのです。観客との同時進行の時間性を持つこと。これが他の芸術ジャンルの方々と大きく違う所です。

この水無月の頃に多くの声をかけてもらっているのも、何か意味があるのでしょう。毎年こうして勉強させてもらっているんだな~と、今年もしみじみしています。これからも素晴らしい作品はもとより、充実の舞台を創って行きたいですね。
芥川
今回はちょっとおまけ
水無月になると芥川龍之介の「相聞」という詩を何時も思い出します。

また立ちかへる 水無月(みなづき)の
  歎きを誰(たれ)に 語るべき
沙羅のみづ枝に 花咲けば
かなしき人の 目ぞ見ゆる
方丈記公演にて

私はこんなロマンチックな想いに浸っている暇は当然無いのですが、いつかはこういう詩を詠める様なゆったりとした日々を過ごしたいですね。その時に我が身から流れ出る音楽が楽しみです。

しっかりお仕事してきます!!。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.