沙羅双樹Ⅲ

相次いでやってきた台風も過ぎ、秋らしい天気になってきましたね。
私は只今、次ぎのCD「沙羅双樹Ⅲ」のレコーディングの真っ最中です。今回で8枚目のリーダーアルバムとなるのですが、このアルバムは初心に帰るという意味も含めまして、薩摩琵琶のみの作品でまとめました。このところ樂琵琶のCDが続き、樂琵琶では一応の成果を出したと感じておりますので、この辺でもう一度薩摩琵琶とがっつり向き合って、初めて琵琶を手にした頃からずっと追い求めている「現代の琵琶楽」というところを追及しようと思い、取り組んでみました。

こちらはヴァイオリニストの田澤明子さんとのデュオ「二つの月」レコーディング中のワンショット。昨日既に録り終わりました。私は田澤さんのリサイタルや演奏会に何度も通って聴いていて、私自身が彼女のファンでもあるので、もう何の心配も無くお任せしました。やっぱり一流というのは凄いものですね。本当に素晴らしい演奏をしてくれました。来年からは田澤さんとのライブや演奏会なども企画して行きます。乞うご期待!。

この曲は元々1stアルバム「Orientaleyes」でチェロと琵琶のデュオでやったのですが、時を経て新たに編曲をし直しました。チェロとのデュオも素晴らしい作品となったのですが、自分が50代となって、30代の頃とは明らかに音楽的志向が変わってきているので、この曲を再演するに当たって、単なる焼き直しではない作品にするためにも、今回の相手はViしかないだろうと思っていました。これまでも何人もの素晴らしいヴァイオリニストの方々と共演させてもらって、Viの音色に魅せられて来たということもありますし、Viと琵琶の音色できっと作品が創れるだろうと感じてもいました。初めて田澤さんとリハーサルをした時、「これはいける!!」と実感しましたね。やっぱり田澤さんのViは本当に素晴らしい。けれんが無く素直で、且つ情熱的!!!。今回の目玉曲です。

左がプロデューサーの千野さん。右がエンジニアの野口さん
今回は、以前より配信を担当してくれているFEIレコードに、CD制作の段階からお世話になることにしました。私は配信自体はかなり早い段階からやっていて、特に台湾、ロシア、中国、アメリカなどで、お陰様で静かな好評を頂いているのですが、もう世界がマーケットになる時代に入り、活動のやり方も変えざるを得ないことを考え、録音そのものから変えてみたのです。これまでのCDはホールを借り切って、高性能なマイクによるワンポイント録音でやっていたのですが、今回からは今後のネット配信などの展開も考えて、スタジオでの録音にしました。マイクはマルチですが、楽器ごとにブースに入っているわけではないので、個別のやり直しなどが効かない、ほぼ一発録音です。

やることはホール録音と同じなのですが、ホールのように会場自体に響きがないので、弾いていて大分感じは違います。また今まで自主プロデュースだったのに対し、今回はFEIレコードの千野さんがプロデューサーとして現場に居てくれるので、色々とアドヴァイスをもらいながらやっているのが大きいですね。更に今回のエンジニアさんは、なんと私の作曲の師 石井紘美先生の門下生でもあったという方。なんというお導きでしょう!!石井先生は現在ドイツにお住まいですが、日本に居る頃は音響技術の学校で教鞭もとっていたのです。そこで色々と教わっていたとの事。不思議な縁を感じます。

自分が新たな方向にチャレンジすると、色んな偶然や出会いなどシンクロニシティーが起こりますね。録音やプロデュースのやり方を変えるのは、色々と考えるところがありましたが、やっぱり一歩足を踏み出して良かったと感じています。

9.11詩と音楽の夕べ ルーテルむさしの教会にて

今回はCD収録曲だけでなく、私の作曲作品の尺八二重奏の録音もします。これは配信のみとなりますが、こちらの曲も実は「二つの月」。この「二つの月」は今回、Viと琵琶のヴァージョン、琵琶独奏のヴァージョン、そして尺八二重奏のヴァージョンの3種に編曲してやってみました。
曲は9.11のテロが起こった時に書いたもので、二つの相容れないものが出会い、探り合い、反発し、それらを経てお互いの違いを認め合い、最終的に共生への道を辿るというストーリーで、「共生」ということがテーマとなっています。3ヴァージョンとも編曲というよりは一つのモチーフを夫々自由に展開してゆくという曲創りになっています。また9.11ということだけでなく、「共生」が私自身のテーマでもあります。
この「二つの月」を色んな形でやってみたいとずっと思っていましたので、今回は思っている形3つを一気にやってみることにしました。

1stからずっと全曲自分の作曲作品を収録してきて、やはり現代邦楽という自分の基本とする分野での作品発表を今後確実にして行くべきだと、ここ数年考えてきました。1stを出した時から16年。1stで入れた「まろばし~尺八と琵琶の為の」、そして上記の「二つの月」の2曲を新たな形で収録し、自分の原点に帰り、これからセカンドステージが始まると思います。まあ16年経って一巡した感じですかね。今後ももっともっと良い作品を創って行きたいと思います。是非是非御贔屓に。

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