
私は、日舞や地唄舞などの日本のものや、舞踏なんかの創作ものに関しては毎年共演していましたが、バレエは、サイガバレエの創作舞台で何度か少し弾いただけで、どこか縁遠いものでした。しかしある時、友人にロイヤルバレエのライブビューイングに誘われて、行って観たら、これが素晴らしいのなんのって!!もうすっかり魅せられてしまいました。その後パリオペラ座やボリショイバレエなどの映像も観て、自分の興味の中にしっかりと焼きついています。なかなか生の舞台やライブビューイングをやっている時に時間を作れないのですが、是非世界の一流の舞台をこの目で見たいですね。ロイヤルバレエでは今、プリンシパルを日本人が務めているという事もあり、この映画には大変興味を持っていました。
ポルーニンさんは、ウクライナの地方都市の普通の庶民の家に生まれながらも、小さな頃からその才能を見出され、バレエのレッスン代の為に家族は両親も祖母も皆、海外に出稼ぎに出て彼の学費を稼いだそうです。
彼は、いつか皆が一緒になれることを願い、英ロイヤルバレエスクールで人一倍の研鑽を積み、世界の頂点へと向かって行くのですが、結局両親が離婚。目標・目的となるものが彼の中で崩壊して行きます。そうした中で天才ゆえの様々な葛藤を抱え、ロイヤルバレエのプリンシパルを捨て、突然退団を発表し大ニュースとして世界に流れました。
彼の全身にはタトゥーが入っています。そんなバレエダンサーは他にいないですね。それだけ彼の心は満たされなかったのでしょう。随分薬にも頼ったようです。
その後は行き場を見失いながらも、ロシアの著名なダンサー、イーゴリ・ゼレンスキーに招かれロシア、ドイツで活躍。しかしそれでも心は彷徨い続け、もうバレエを止めようと考え、最期のラストダンスとして、この「Take me church」を選び(この曲を選んだということも凄い!)、ロイヤルバレエ時代の親友に振り付けをお願いして、このダンスをYoutubeで公開しました。これが契機となり、ここからまた新境地を開いてゆくというところで映画は終わります。
私は年を取ったからでしょうか、今迄多くの人に出会ってきて、一人の人間が生きるということを最近良く考えます。様々な人生を間近で見るにつけ、我が身を振り返ってみるのですが、この映画を観ていて、私は彼のように自分の人生に向き合い、自分の人生をまともに生きているだろうか、という想いが沸いて来ました。



