すっかり秋の風情になりましたね。
夏の暑さが苦手な私としてはやっと自由に動き回れる季節が来て嬉しい限り。また秋は色んな演奏会が本当に沢山会って、琵琶奏者としても充実感が溢れてきます。
先日は映像のヒグマ春夫さんのインスタレーションにて演奏してきました。5日間のインスタレーションでしたが、5日間ともダンサーの杉山佳乃子さんが踊り、毎日演奏する人が変わるという面白い企画でした。最終日には久しぶりに私の1stアルバムのメンバー3人が揃って、10年以上の時が一気につながって盛り上がりました。また面白い事が始まるるような予感がしています。
ここ数年、特に去年よりまたアート系の場における演奏の機会が増えてきました。私は元々こういう所から活動が始めた事もありまして、色んなジャンルのアーティストが集う現場こそが自分の居場所であると思っています。「琵琶楽を芸術音楽にしたい」という永田錦心の言葉を私なりに実践して行くには、自分ひとりでやっていても何も成就しません。心ある芸術家との旺盛な交歓と連携が不可欠です。凝り固まった世界から琵琶という楽器を解放させるためにも、今後はアート系の舞台に積極的に出て行こうと思っています。

兵庫県立芸術文化センターホールにて
今迄多くのものに導かれ、その時々で自分なりに色んなことを考え、実践してきましたが、やはり自分にとって一番自分らしいことをやるのが良い結果をもたらすと実感しています。負けず嫌いで意地を張って、「負けたくない」の一心であれもこれもやっていては、たとえ一度上手くいったとしても後が続かない。逆に自分に出来ない事を自覚する方が、良い部分を伸ばせると思っています。それは何もコンプレックスを持つという事ではなく、自分を知るということなのです。
また自分の信念というものを持つ事で、逆にそれに囚われて、視野を狭くしてしまう事も十分に気をつけなければなりません。活動をしていれば自分の方向性も見えてくるし、考え方も固まってきますが、自分の嫌いなところ、興味のないところに価値を見出さず、避けて、排除しているだけでは了見の狭い偏屈な音楽しか出てきません。どんなものでもそれを支持する人がある以上、何かしらの魅力があるのです。
良寛公演より
なかなかこうしたバランスを取るのは難しい。だから活動をすればするほどに、自分の器というものを問われているんだと感じます。上手いとか凄いなんて言われる所で留まっていては、いつまで経っても小さな村社会から抜け出せません。どれだけ魅力ある音楽であり舞台であるか、そこまで行かなくては舞台人とはは言えません。
時には凝り固まった権威や組織と戦う事も必要でしょう。永田錦心やパコ・デ・ルシアなどを見てもそう思いますが、しかし一方では音楽に対する純粋な愛、ひいては人間に対する深い想いというものが溢れていないと、音楽は成就しないのです。こういうところの器が必要なのです。
この秋は色々な仕事をさせてもらっています。この幅こそ今の私には必要。エンタテイメントの舞台には行きませんが、秋風に乗って豊かな世界が響き渡るよう、良い仕事をして行きたいと思っています。

明日20日(木)は第5回目の日本橋富沢町樂琵会があります。今回は樂琵琶の特集。私にしか出来ない、樂琵琶の深遠な世界を聴いていただこうと思っています。是非御贔屓に。