梅雨に入りましたね。琵琶には厳しい季節なのですが、私はこのしとしとと降る雨が好きで、この風情を楽しんでいます。
世の中嫌な事件が立て続いておりますが、嬉しいニュースも飛び込んで来ましたね。ロイヤルバレエのプリンシパルに高田茜さん、平野亮一さんが選ばれました。私はバレエ通でも何でもないですが、こういうニュースは元気が出ますね。
高田茜さんは一昨年のジゼルの舞台を拝見しましたが、こうして日本人が世界の舞台で活躍する姿を見るのは、正直な気持ちとして実に嬉しいものです。まだ26歳だそうなので、これからが楽しみです。ジゼルでは小林ひかるさんや崔由姫さんもがんばっていたので、今後の夢も広がりますね。活躍を期待しています。
最近は2014年に木田真理子さんがブノワ賞、今年もオニール八菜さんが同賞を受賞しましたし、ローザンヌのコンクールでは毎年のように日本人が入賞しています。何故バレエの世界ではこうも日本人が活躍できるのでしょうね。音楽界も頑張って欲しいです。

それにしても世代交代が良い形で行われ、新しい時代へと変化して行くのは良いことですね。ロイヤルバレエでは熊川・吉田の時代から、日本人プリンシパルはもう20年ぶりだそうですが、世代を超えて有能な人材が出て来るというのは本当に素晴らしいです。日本のバレエも底辺が広がり、定着してきたということでしょうか。邦楽界もそうなって欲しいものです。
ルーテルむさしの教会にて
私は今やっと「日本」という小さな枠からなんとなく「世界」という視野が開けてきた所。こんなに長く音楽をやっていて、正に亀のようなのろさですが、致し方ない・・・。これまで少しばかりヨーロッパやシルクロードなど海外のツアーなどもやってきましたが、CDに関しては、私が参加した(ロンドンシティー大学でのライブ録音)石井紘美先生の作品集がWERGOレーベル、NAXOSレーベルで世界に出たくらいで、なかな
か意識が世界まで向かなかったのです。ここ数年、やっとこれまで国内で出した7枚のCDなどがネットで世界に配信され、売り上げは少ないものの、多くの国の人が聴いてくれて本当に嬉しく思っています。また私の作品を台湾の演奏家たちが何度かリサイタルにかけてくれたりして、世界への入り口が少しばかりですが見え、私自身の意識もようやく変わってきました。ロイヤルバレエで活躍している若者達の足元にも及びませんが、意識が変わると行動も変わるし、物の見え方捉え方も変わりますね。この年になってやっとこういう意識を持てたということは、これが私のペースなのでしょう。人の何十倍も時間がかかるというのは性分というか運命というか・・・・。
しかしながら年を追うごとに感じるのは、時間というものの無情さです。人間の肉体に与えられた時間にはどうしたって限りがある。そんな個人の有限な時間に対し、世の中は刻一刻と変化し続け、価値観も法律も常識も…何もかもが変化し続けて、私達を待ってはくれません。
私はもう肉体的な限界も間もなく来るだろうし、どこまでやれるか判りませんが、意識だけは年を追うごとに鋭くなって、今年から新たなシーズンが始まったような感じがしています。これまで10年周期位でシーズンが変わって行くのを感じていますが、今年に入り、また新たな世界が生まれつつあるのをひしひしと感じます。結局最初に私が志向していた世界が一回りして、甦ってきた感じです。それも変遷を経てきた分、多くの充実を伴って形が創られて行くような、そんな気分なのです。きっと自分らしい音楽が出来上がると思います。

先日、17年に渡って若手を応援してきた伊達佑介先生主催のMjamというライブシリーズが幕を閉じました。私は1stCDを出した時から15年お世話になりましたが、ここは私を育ててくれた場でもありました。個人的な小さいことではありますが、何だか一つの時代が終わるかのような気分でしたね。こうした小さなことも個人的にはとても大きな変化であり、移りゆく時代を感じさせます。世の中に不変ということは無いとは解りながらも、そのスピードの速い変化に簡単には付いて行けない自分というものを感じずにはいられません。
これからは、他の人よりは随分と遅いペースではありますが、自分本来の歩みを持って世界に目を向けて行きたいと思います。ロイヤルバレエの若者のようにはとてもいきませんが、私なりの世界へと歩み出していきたいですね。