先日、ティアラこうとうにて舞踊作家協会主催の公演「ただ在りて~白道の章」をやってきました。

出演は日舞:花柳面 花柳面萌、 モダンダンス:萩谷紀衣、芸術監督:萩谷京子、美術:藤原ゆみこ、そして私の樂琵琶というメンバーでした。過去から未来へと続く道という副題で、静かに歩み続ける人間の営みが美しく描れた魅力的な舞台となりました。
ティアラこうとうでは、もう何度も演奏していて、いつもでしたらノーマイクでやるのですが、今回は途中にCD音源を使ったので、あえて琵琶にもマイクを立て、リヴァーブも少し深めにかけてもらいました。これがとても大きな効果を生んで、静寂精緻、幻想的な空間が出現しました。
舞台は、完全暗転の中から樂琵琶のハーモニックスが鳴り響き、そのまま静寂の中で「虹の唄」を弾かせてもらいましたが、あの空気感は「良寛」公演のラストシーンにも似た、澄み渡った湖面のような状況を感じました。今回は「虹の唄」の他、私の樂琵琶の独奏曲「春陽」「Khamsin Dance」を踊りと共に演奏させて頂きました。曲の持つ世界が広がり、イメージが更に更に大きく広がり、記憶に残る素晴らしい一日となりました。

樂琵琶に取り組み始めて、早10数年。「良寛」の公演をはじめやっと納得のいく演奏と舞台を務める事が出来るようになってきました。薩摩琵琶では何度もそんな瞬間を経験しているのですが、やっと薩摩琵琶と樂琵琶が私の両輪として回り出したと感じています。
最初に樂琵琶に出逢った時、「何が出来るかな?」という程度の印象で、大したイメージは湧いて来ませんでしたが、私は子供の頃からの筋金入りのシルクロードオタクでしたので、その延長で雅楽を捉え、更に笛の相方 大浦典子さんからのアイデアを一つづつ曲にして行って、今のスタイルに至りました。樂琵琶でのファーストアルバム「流沙の琵琶」を出した頃は、正直まだまだ樂琵琶が自分のものに成っていませんでしたが、よくこのブログにも出てくる私のアドヴァイザーH氏が私の樂琵琶に対し、熱烈なエールを送ってくれて、力強く背中を押してくれました。今こうして樂琵琶で演奏活動をして行けているのもH氏のお蔭だと感じています。2枚目の「風の軌跡」では自分の世界観が出来上がって、3枚目の「The Ancient Road」でやっと自分のスタイルが確立したと思います。次作は通算8枚目のCDとなりますが、今度は薩摩琵琶で自分の世界を明確に描きたいと思っています。

「舞台を創る」という発想は琵琶を弾き出した頃から強く持っていました。演奏会をやればやるほど、「曲を上手に弾く」というような浅く狭い意識では、どうにも自分の音楽を伝えることは出来ないと常々感じていました。クラシックでもロックでもジャズでも、一流の舞台を観ればプログラム全体が一つの世界になっていて、2時間なら2時間の空間を丸ごと聞かせ魅せてくれる。そこまでするからこそ、一曲一曲の素晴らしさも伝わるのです。
演劇や舞踊と音楽とはやり方も何も違うのですが、単にエンタテイメントにするということでなく、一つの空間を創り出すということは、プロなら当たり前のことだと思っています。
演劇や舞踊との舞台は私にとって本当に素晴らしい勉強の場であり、多くのことを学ばせて頂いてます。勿論演奏会という形に於いても、自分の世界をもっと明確に表現して行きたいです。それが毎回確実に表現出来るようになるのが一つの目標ですね。
今回も得難い経験をさせて頂きました。素晴らしい踊り手、演出家、舞台のスタッフに感謝!!!
こう思える仕事を毎年させてもらうというのは本当に幸せです。「舞台こそ人生」