先日3日間に渡り、箱根小涌谷の岡田美術館にて「今甦る古の音色~琵琶で語る平家物語」と題した演奏会をやってきました。

岡田美術館 http://www.okada-museum.com/
この辺りは国立公園になっているせいか、樹木も勝手に切っていけないような条例があるそうで、色々な木が溢れ、山の風情が自然で気持ち良いのです。箱根は色々な美術館がありますが、この岡田美術館が出来たことで、正に美の山になりましたね。岡田美術館はまだまだ開館して間もないのですが、その規模は驚くべきものがあります。収蔵品は質、量共に本当に素晴らしく、ここはこれから東洋美術コレクションの世界的中心基地になって行くだろうと感じさせるに充分な美術館です。お勧めですよ。
過去の作品のコレクションもさることながら、若手の作品も色々とあります。中でも「風・刻(かぜ・とき)」という、福井江太郎氏により風神雷神図を創造的復元をされた、横幅30メートルにも及ぶ巨大な壁画作品が有名です。今回は、初日が2階に展示されている尾形光琳の大作「菊図屏風」の前で演奏、2日目と3日目はその風神雷神図を背にして野外で演奏してきました。
箱根は、以前にも「やまぼうし」というギャラリースペースで何度か演奏させて頂きました。その時はなかなかゆっくり箱根を満喫する余裕も無かったのですが、今回は3泊して箱根の山の風情や食事も満喫させてもらいました。小田原からも近いので海の幸も豊富ですし、空気も良いし、ぜひまた行ってみたいですね。
今回も共演は何時もの相棒、笛の大浦典子さんでしたが、もしまた機会があったら、次は樂琵琶も持って行って雅Reflectionsコンビで雅楽も演奏してみたいです。

芸術には先ず何よりもまず感性ありきです。そして感性を育むのが風土、この風土から感性が生まれ芸術が花開くのです。更に芸術を育てるのが社会です。宗教や政治も大きく芸術の発展に関わっていますし、環境ということも大事です。経済的なバックボーンも勿論大いに必要です。しかし現代では皆がエンタテイメントになってしまい、売れないものには手を出さないようになり、芸術に対するスポンサーという存在が少なくなってしまいましたね。大変残念です。
こんな時代にあって、岡田美術館には芸術を支えて行く要素がしっかりと揃っていて、人的レベルも高い。本当に次世代の芸術の為に必要な要素が溢れていると感じました。

近代からの邦楽は流派や協会、連盟等組織を作ってやるようになりました。能や長唄など長い歴史のあるものは、流派や組織というものの内に大きな知識・経験・知性・見識等が家に蓄積されていると思いますが、明治以降の新興の邦楽は今大きな節目を迎えていると思います。
戦後は特に、○○連盟や○○会等という形で現代邦楽の活動が始まりましたが、同志が集まり演奏会を開くところで終わってしまっている。社会の中に入っていけてない。これでは自己満足以上にはならず、いつまでもドメスティックな視線から抜け出せないと思うのは私だけでしょうか。
琵琶のような独奏楽器は常に単独で動き、自分の力で多くの人と繋がって行くのが自然な形だと私は思います。
とにかく大きな視野を持ち、世界に目を向けて行かないと、何時まで経っても珍しい以上の認識は得られず、衰退して行くばかり。お稽古事を脱する事は出来ません。邦楽に携る我々は意識そのものを変えるべき時に来ていると思います。

さわやかな箱根に渡る風を身に受け、岡田美術館の在り方を目の当たりにして、あらためて自分の方向性を考えさせられました。