先日、かねてから話に聞いていたストリングラフィ・アンサンブルの演奏を聴いて来ました。

公演チラシより
この楽器を発明したのが水嶋一江さん。水嶋さんは作曲家なので、全体に曲が良く出来ていてアレンジも面白い。この日は最初にミニマムっぽい水嶋さんの現代作品をやってくれたのですが、演奏時のパーフォーマンス性もあるし、色々と可能性を感じました。またアンサンブルがピタッと決まっていてリズム感もいい感じ。相当練習しているな、と思っていたら、1日8時間位やっているそうです。頭が下がりますね。この情熱が琵琶の世界にも溢れているといいですね。水嶋さん以下メンバーが生き生きと演奏している姿がスカッとしていて気持ち良かったです!!。皆さんそれでいて本当に謙虚で、とても好感が持てました。
この日はスタジオでのライブで、外国の方もいらしていたので、比較的ポピュラーな選曲でしたが、英語でのレクチャーも充分こなせるし、この楽器の表現力と高いアンサンブルの力があれば、凄い音楽が作れそうな気がしました。新しい楽器ですので、認知されるためにもポピュラリティーはとても大事な事だと思いますが、是非芸術音楽の分野でも存在を示して行って欲しいと思います。この日演奏してくれた水嶋さんの作曲作品もなかなかのレベルだと思いました。
皆さんも是非一度体験してみてください。気軽なスタジオライブは毎月やっているようですし、8月には全労災ホール・スペースゼロにて大きな演奏会を開くそうです。

作曲やプロデュースの面で色々と考えるべき部分も多く大変だと思いますが、是非この志を貫いていってほしいと思います。こうした問題は琵琶のような伝統楽器も同じく抱えていると思います。現在の状況を見れば、過去に胡坐をかいて予定調和なことしかやらなくなったから、衰退したのは明らか。もはやどこへ行っても「珍しい」存在でしかない琵琶は、ストリングラフィーと同じく、今後の作曲や活動のやり方を、つまりは器を問われていると思います。
常に時代と共に「創造」して行かなければ、いくら歴史がある楽器といえども世の中に響き渡りません。音楽はどこまでも生ものなのです。常に時代と共に在ってこそ音楽。琵琶もストリングラフィーも、同じ土俵に立っていると思いました。
新しいものを世に問うには、人を納得させるだけのものが必要です。旧来の価値観で上手云々というよりも、新しい価値観を感じさせてくれるようなものに人々は惹かれます。でなくては時代は動かないのです。永田錦心やジョンレノンのように、旧来の価値観での上手い下手を超えた、新たな価値観やクオリティーが必要なのです。それが新しい時代を創るのです。

やっぱり絃は良いな~。情感が溢れているし、表現がダイレクトに伝わってくる。私が薩摩琵琶に出会って気に入ったのは、音が伸びることです。ギターはディストーションをかけないと音は伸びませんが、私の琵琶はサワリを長く調整していることもあって、そのままでディストーションがかかっているような音が出る。ヴァイオリンのようにはいきませんが、和音も出るし,パーカッシブな表現も出来るし・・・、ストリングラフィーの多彩な表現を聞いていたら、かえって琵琶の音色を再認識しました。樂琵琶はまた違った意味で魅力的なのですが、とにかく絃が歌うというのは表現者として嬉しいのです。
ストリングラフィーには大きな可能性があると感じました。それに絹糸の響きにはどこか人を惹きつけるものがあるんでしょうね。
また一つ視野が開けました。