浄化

先日、私が敬愛してやまないクリスタルデュオ・ブレイズのお二人から新作のCDが届きました。

クリスタル

HP:http://www.happy-blaze.com/profile.html
佐々木リエさん、山内メグさんの二人によるクリスタルボウルデュオは、和久内明先生主催のイベントで何度も御一緒させてもらっているのですが、いつ聞いてもその音色に包まれて身も心も浄化されます。クリスタルボウルそのものの音色もさることながら、演奏する二人の音に対する純粋な姿勢が、そのまま響いてくるように思えてなりません。

クリスタルデュオブレイズ

音楽活動をすれば、自分を売り込まなくてはいけないし、受けが良いかどうかも気になるものです。プロとして舞台に立つ以上、お金を頂かないと生活が成り立ちませんので、ただ楽しいだけではやっていけません。好むと好まざるにかかわらず色々なものと戦わざるを得なくなります。レベルが上がれば上がるほ
ど、他人とも自分とも熾烈に接する事も多くなり、又ならないようではまだまだとも言えます。
しかしながら、そんな戦いをするうちに、いつしか音楽以外のものに囚われ、偏狭で勘違いしたプライドに身を固め、純粋さを失って行くのです。

若い頃はライブハウスで頑張っていた人が、知らない内に「先生」と呼ばれ、どこかの大学辺りにこじんまりと収まっている例などもよくあるものです。邦楽家は特にそういう人が多いですね。私は「そうは成らんぞ!何処までも舞台に立って生きるのだ!」なんて毒を吐きながらやってきましたが、それがまた意地やこだわりを生み出します。なかなか音楽に純粋な姿勢で対峙し続ける事は難しいのです。

11-1

40歳頃の私は、絶対に負けられないという強すぎる程の意識が、すでに自分でも感じなくなるほどに私の心身に絡みつき、いつしか私は声に変調をきたすようになっていました。自分の肉体と戦う事しか知らなかった私は、その原因が自分の心に在るという事が判らなかった。まだ若さや体力はあったし、ある種の鬼気迫るような迫力もあったかもしれませんが、高音が突然出なくなったり、思うように演奏出来なかったり…失敗ばかりが続き、「何故なんだ」といつも自分の演奏にフラストレーションを抱えていました。

y30-2若き日
そんな頃、私の良きアドヴァイザーH氏と出会い、少しづつ私のがんじがらめの心は解きほぐされ、やっとこさ、音楽家としてなんとかこれまでやってくることが出来ました。そして人間はけっして肉体的な生き物ではなく、精神的な存在という事をやっと認識し始めたのです。

H氏の「愛を語り届ける」という言葉が私の思考を大きく変えました。最初は何だかピンと来るものも無く、ふーんなんて具合に聞き流していたのですが、H氏は「気負いを捨てて、もっと素直に音楽に接した方が良い」といつも一つ一つ繰り返しながら何度も何度もアドヴァイスをしてくれました。きっとその頃の私の姿は、気負いとケレンと上昇志向でがんじがらめに凝り固まっていたのでしょう。
そしてやっと私が何かを感じ始めた頃、H氏は突然虹の彼方へと旅立って行きました。まるで「愛を語り届ける」という一言を伝える、その為だけに私の前に現れたかのように・・・・・。

H氏の言葉を聞いた正に同じ頃、私はクリスタルデュオ・ブレイズの演奏に接したのです。「欲」等という言葉は、およそ彼女達には似合わない。そんな発想すら無いので
しょうね。何の気負いも無く、どこまでも素直な姿勢で音に関わっている。彼女たちがクリスタルボウルという楽器を選んだのも頷けます。楽器が彼女たちを選んだのかもしれません。多分私のような俗欲に侵された人間では、ああいう音色も音楽も流れ出ては来ないでしょうね。

bowl03

H氏は既に居ませんが、あの「愛を語り届ける」という言葉は、今、クリスタルデュオ・ブレイズのお二人が奏でる音となって、私の体に響いています。

明日は夏至。心を浄化するにはぴったりの日です。このCDを聴きながら、穏やかな心をもう一度自分の中に見い出して過ごしたいと思います。


和楽器 ブログランキングへ

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.