先日、浜離宮ホールで行われたピアニスト中島由紀さんのリサイタルを聴きに行きました。

2年前のリサイタルは、ツアー中で聴きに行けなかったので、今年は何としても行きたいと思っていましたが、本当に行ってよかった。未だに体中に彼女の音が満ちている。それ位の充実ぶりでした。
以前の彼女の演奏とは全然違いました。勿論以前も素晴らしかったけれど、今回は音が煌めいているかのように会場に満ちていたのです。生命感が溢れるとはこういう事なのでしょう。特に第2部で弾いたドビュッシーの「ベルガマスク組曲」等は、ほとばしると言った方が合っているほどに、曲がまるで生きもののように自由に舞っているようでした。
とにかくタッチのコントロールが細部に渡って効いていて、自由自在にあらゆる表現が飛び出してくる。そしてダイナミック!。けっしてこじんまりした小さな演奏ではありません。あくまで自然に、曲のありのままの姿が流れ出て来るのです。ここまで作り上げて行くには、ありとあらゆる努力と研究があったのでしょうね。それにきっとここ数年、彼女は何か精神的な充実を得たのではないでしょうか。そうとしか思えないような驚くほどのレベルアップでした。元々技量も経験も積んできた方ですが、ここに来てそれが花開いたような気がします。
先日聴いた灰野さんもそうですが、人生と音楽が一致している、そんな風に感じました。そこ迄行くには技術だけでなく、人間としての経験も重ねる事が不可欠だろうと思いますが、彼女はそんな音楽家としての人生をつかんだという事でしょう。きっと多くの物を通り越して、自分なりのペースで音楽を人生として生きているのでしょうね。
こんなに豊かなピアノは初めて経験したかもしれません。今迄クラシックは弦と歌ばかり聞き入っていたのですが、俄然ピアノに興味が湧いてきました。家に帰って思わず、リヒテルやグルダ、グールド、館野泉なんか引っ張り出して聞いてしましました。
私はとても彼女のようなレベルにはいけませんが、結局は自分のやるべき事をやるしかないと思います。自分のやり方で自分の道を歩むことが一番自分らしいし、またそれしか出来ません。素晴らしい音楽家に接すれば接する程、自分の行くべき道を進もうという想いも強くなります。
本当に素晴らしいコンサートでした。これ程にピアノを堪能したのは生まれて初めて。また一つ音楽の世界が広がり、視野が開けました。ありがとう!!