今年はしっかりと春を謳歌してます。いよいよ桜も本番ですね。お花見と称して、散歩に食事、呑み会・・何でも来い!という感じですが仕事もしていますよ!!。しっかり演奏の仕事も入っていますし、何と言っても曲作りに関しては、毎日頑張ってます(見えないと思いますが・・)。今年は薩摩琵琶の方に特化していて、ソロ、デュオの作品をいくつか作っています。秋頃には舞台でお聞かせできると思いますのでご期待下さい。

昨年の長瀞
私が若かりし頃就いていた師匠 潮先郁男先生は、私がプロとして活動を始めるにあたって「プロでやるのなら、音楽とは全く違う趣味を持ちなさい」というアドヴァイスをしてくれました。まだ私はその頃20歳か21歳になったばかりだったと思います。正直意味がよく判らなかったのですが、今になって本当にこのアドヴァイスの意味が身に沁みてよく判るのです。
私が「この人は良いな」と思う音楽家は、色々話してみると、皆さん音楽とは別の世界を持っている事が多いです。スポーツだったり、ラジコンやジオラマだったり、山歩きだったり色々です。鉄っちゃんなんか結構多いですね。そういう専門とは違う世界がある事で、先ずは気持ちがリフレッシュされストレスが減ります。他のジャンルの仲間との交流も気分を大いに解放してくれますね。しかしそれだけではないのです。違う世界を持っていると、別の視点で音楽に接することが出来るのです。

仕事で毎日演奏していると煮詰まってくる時期は必ずと言ってよいくらいにあるものです。特にある程度弾けるようになって、お仕事も出来るようになると、自分のやりたい事が判らなくなる時期は誰しもあるものです。そんな時、別の世界を持っていると、改めて自分を見つめ直すことが出来るし、現状の自分の姿が客観的に見えてきます。
色々な方向からの視点も出て来て、色々な角度から音楽に接することが出来るのです。「こういうものだ」「こうでなくてはいけない」という凝り固まった思考は、一生懸命になるほど自分の中にこびりついて来るものですが、視点を変えることの出来る人は、心がほぐれて、音楽が改めて新鮮な輝きを持って自分の中に響きだします。結果的に気持ちが豊かになり、レベルも上がるものです。
また色んな世界に接していると意外な共通点なども感じることが多いですね。それがまた音楽に新たな発見をもたらします。そんなことを実践している方は、皆音楽そのものに対してとても柔軟で且つ視野が広い。勿論肩書きやなんかでは判断しないですね。

トビリシ、ルスタベリ劇場公演
邦楽家でも魅力ある舞台を務める事が出来る先輩方々は、関連した能や歌舞伎、他クラシックやオペラ、演劇、ジャズなどにも勿論詳しいですが、自分の専門以外の事にも大層詳しいです。その人なりのまた別の世界も持っている事が多いですね。年配の作曲家で、大きなバイクに乗ってツーリングするのが趣味という豪快な先生も居ます。勉強するというよりも、何かを追求して行けば、自然と他のものに対する興味もどんどんと湧いてくるのでしょう。気持ちはよく判ります。
芸人のいい訳で、酒を呑むのも芸の肥やし等と二言目には口にするのですが、実際、色んなところに出かけて行って、色々な人に会い、話し、常に刺激を頂くことはとても大事なのです。
ウードの常見さんと 音や金時にて
世の中のものは何にでも繋がりというものがあると思えば、小さな世界しか知らない人と、色々な世界を知って、多くの人と出逢い、コミュニケーションが取れる人とでは、自ずから出て来るものが違うのは当たり前です。
オタクさながら自分の世界だけで生きていたら、他の価値観や感性を受け入れることが出来ない。そういう狭小な心根はそのまま舞台での姿となって出て来ます。
音楽は世の中に響いてこそ音楽として成立します。音楽は経済や政治とも密接に関わっていますし、日々の暮らしの変化と共に音楽もどんどんと変わって行きます。流行歌だろうが芸術音楽だろうが関係なく、どんなものでも世の中と共に在るのが音楽です。感性を解放するためにも色々な世界を知るというのは良い事ですね。

私は年を追うごとに色々な世界と関わりを持つようになりました。最近また今までに無かった世界に触れることが出来ました。まあ極端に違う訳ではありませんが、出来る所まで関わってみようと思います。これがなかなか面白いのですよ。
皆さんも是非Another Worldを持ってみませんか。