夢の中へⅡ

昨年末に続き、英国ロイヤルバレエの衛星中継によるLive viewing「ジゼル」を観てきました。

ジゼル2ジゼル1

私はバレエ通でもなんでもありませんが、一流の舞台というものはやはり素晴らしいのです。普段バレエを観ない方にも是非お勧めしたいですね。私もバレエ、モダンダンス、日舞、フラメンコなど踊り関係の方とは毎年一緒に仕事していますが、こうして本格的なクラシックバレエをじっくり見る機会は少ないので、楽しみにしていました。

ジゼル2今回の主役ジゼルはボリショイバレエのプリンシパルだったナタリア・オシポワ。相手役のアルブレヒトはカルロス・アコスタ。素人の私が観てもそのレベルはずば抜けていて、もうただただ感激!特にオシポワは全てにおいて無理が無く、どこまでも軽やか。2幕では霊となって表れて、まるで宙に浮いているようなふわりとしたしなやかさでした。彼女の役柄は疑う事を知らない純真な村娘の役なのですが、表情といい踊りといい実にそのものになりきっていて大変素晴らしかったです。後半、恋人のアルブレヒトに裏切られた事を知って気がふれてしまう場面なども大げさな所が無く、とにかく自然体。

こういう方の舞台を観ると、この役に取り組む並々ならぬ姿勢を感じますね。ただ上手に踊ろうなんて浅い意識ではない。徹底的に研究し、ヴィジョンを見据え、自分なりの哲学を持って取り組んでいるのでしょう。技術を感じさせない飛び抜けた技術。凄い!これが世界の一流なんですね。何かを表現する時に、技術というものがいかに大事で、これ見よがしな中途半端な技術では表現は出来ない、ということを改めて思いました。洗練された技術とはこの事なんですね。

そして今回も崔由姫さん(昨年見た「くるみ割り人形」でも活躍 右写真)がパ・ド・シスとして大活躍。崔由姫2将来のプリンシパルを期待させてくれるような素晴らしいものでした。他日本人では森の精霊の女王ミルタの従者役で高田茜さんも頑張っていました。もう一人、ミルタ役をやった小林ひかるさんは、女王の冷徹なイメージを作り過ぎたのか、ちょっと表情が硬かったのが残念でした。ミルタはジゼルに次ぐ大役で、ソロの部分も沢山あるので、目立つ役柄でもあると思いますが・・・。次回作に期待してます。

会場はほぼ女性のお客様で一杯でした。男性の姿は少なかったです。邦楽の会でも男性はあまり聴きに来ないです。大体9割方女性です。残念でなりませんね。男女共に文化に関心を持って楽しんでもらいたいのですが・・・。ロイヤルオペラハウスには、男性も女性も溢れかえる位に集っていましたよ。
もっと日本の男性にも文化というものに関心を持ってもらいたい。日本ではまだ文化芸術を軽視する風潮をひしひしと感じます。私は文化こそが国家を形作り、国家を国家たらしめるものだと思っています。その上に経済や政治があってしかるべきではないでしょうか。そして先ずは自国の文化に誇りを持って欲しい。その上で海外の素晴らしい文化もどんどん観て聴いて、豊かな心になって欲しい。文化こそが人間同士の交流を可能にするとも思います。文化は国家の基盤となるもの。日本にはどういう文化があるか。これからはそこをこそ問われるようになる、と思っているのは私だけではないと思います。

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現代は基本的にどんな分野でも挑戦できる機会があります。だからこそこの風土に育まれた感性を持って挑戦して頂きたい。NYに行ってジャズやブルースのミュージシャンと仲良くなって、お友達に入れてもらって喜んでいるようなコンプレックス丸出しの小さな意識ではなく、ジャズだろうがバレエだろうが、そこに新たな眼差しを向け、独自のスタイルと魅力を築き上げる位になって欲しいものです。今回観た日本人の方々はきっと、そんな新たな魅力をバレエという舞台で、世界に向けて発信できる方々だと思っています。

少なくともどんな分野でも一流と言われるように成りたければ、憧れて、かぶれているような低い意識レベルではだめだですね。日本人としての確かなアイデンティティーを持ち、広い視野と深い哲学を持っていなければ、最高峰の技術には到底届かないし、相手と同じ視点しか持てないとしたら、それは明らかに意識レベルが低いという事です。背負ってきたものが全く違うのですから、アメリカ人イギリス人と同じという事はありえない。それはいつまでも己を見つめることが出来ない、憧れを超えられないただの低レベルの勘違いです。

ヤンリーピン1私が尊敬するプロ中のプロ ヤンリーピン
世界中何処に居ようと、どんな分野で仕事しようと、自立した一人の人間として、その人なりのアイデンティティーを持って立ち向かえばよいのです。卑屈な精神、視野の狭い村意識、そんな中に居たら一流どころかプロとしてやっていけない。残念ではありますが邦楽界を見ればそれは明らかです。
どこかの記事に書いてありましたが「頭のてっぺんから足の爪先までプロ意識で貫く」。どんな分野でもこれがプロのスタイルというものではないでしょうか。

一流の舞台は本当に素晴らしい。こういう舞台を観ることが出来るのは人生の幸せです。政治やイデオロギーでは一部の人としか手をつなげないけれど、文化だったら世界中の人と判り合える。是非日本を世界に誇れる文化国家にしていきたいですね。

そして日本からも世界最高峰の舞台を発信したいのです!!。

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