今年も一年色々ありました。ありがたい事に毎年毎年良いお仕事を頂き、クオリティーも仕事量もどんどんと上がって来ている事に感謝以外の言葉が見つかりません。
今年は年明けに、スウェーデン在住の盟友グンナル・リンデルさんと再会し、たっぷりと語り合いました。今はお互いそれぞれの道に進んでいますが、まだまだコンビネーションはばっちり。本当に楽しい時間でした。
また同じ頃、哲学者の和久内明先生、能の津村禮次郎先生との出会いから、戯曲公演「越の良寛」に至り、良寛の足跡を辿る旅にも一緒に行かせてもらいました。来年はこの舞台の再演も決まり、気合も更に高まっています。
そして何より今年は江戸手妻の藤山新太郎先生とは本当に色々な所でお仕事をさせて頂きました。手妻に合わせての作曲に関しても、今までと違う分野でしたので良い経験になりましたし、料亭や見番、国立演芸場等々私の知らない世界で演奏出来たのは嬉しかったです。

和歌山では田中黎山君のリサイタル他、色々と演奏会をやりました。今後は和歌山コネクションが広がって行くと思っています。邦楽以外のジャンルでは、今年も郡司敦作品の初演をクラシックの音楽家と演奏し、他に、フラメンコダンサーの川崎さとみさんとの再会から、彼女のリサイタルで樂琵琶を弾いたのも刺激的な体験でした。
琵琶樂人倶楽部もおかげさまで7年目に入いり開催も70回を超えました。これだけ続けられた事に充実感を感じています。来年もまた1年スケジュールが決まり、さらなる充実をしていきたいと思います。是非ご贔屓に。
そして今年は、Refrectinsの相方である、大浦典子さんと本当に沢山の仕事をしました。定例の北鎌倉古民家ミュージアムは勿論の事、「腰の良寛」の舞台、川崎さとみさんのリサイタル他、地方公演でも御一緒して、いずれも充実の演奏会をやる事が出来ました。
書き切れない程まだまだたくさんの演奏会に恵まれたことに感謝しかありません。こうして一年を振り返り辿ってみますと、どう考えても、生かされているという実感が心の底から湧いてきます。私はどんな仕事でも全て私の作った曲を演奏しているので、いわゆる営業仕事は一切やっていません。そんな我儘なやり方をしている私が、こうして音楽家として生きて行く事が出来るのは、正に「はからい」以外の何物でもない、と思います。
音楽家というのは、常に綱渡りをしているような稼業なので、お教室のお師匠さんになって、こじんまり納まって行く方が多いです。若い頃は面白い事をやっていても、ある程度の年齢になると、何とか流師範みたいな看板を前に出し、流派名でリサイタルなんかやる人も居ますね。それも一つのやり方でしょう。そういうやり方を否定はしませんが、私は正直残念に思います。40代から50代60代は心身共に充実し、一番良い仕事が出来る時期。邦楽は年齢を重ねないと表現出来ないものも沢山ある音楽ですから、50代60代こそ、色々なものから解放されて、自由に独自の活動が広がって行くのが理想的な姿だと思います。是非多くの先輩達には素晴らしい音楽をもっともっと世の中に響かせて欲しいと思います。
私は私のやり方をこれからもやって行きます。邦楽の世界とは随分違うかもしれませんが、それが私の道なのだとつくづく思うようになりました。

人間生きていれば色々な事があります。嬉しい事楽しい事の陰には、辛い事も多々あるのが世の常。上手く行かない事もあるし、誤解されることもあります。疎遠になる方もいます。特に今年は親しい人の突然の訃報もあり、大変な衝撃を受けました。人生に目標を持って、努力を重ね生きて行くことは出来ますが、自分の力で生きているなんて思うのは、大きな誤解であり、奢りであるという事を、多くの事から改めて学んだ一年でもありました。
そんなこと、あんなこと、色々とありながらも、また「はからい」という悠々たる風の中を舞うが如く、来年を生きて行きたいと思います。
今年もお世話になりました。また来年もよろしくお願い申し上げます。