紀州ツアー第二弾。
今回は玉津島神社での演奏の前に、久しぶりに子供の寺 童楽寺にも伺いました。

以前より高野山での演奏会の前後にここに寄って、子供達や地域の人に琵琶を聴いてもらっていたのですが、高野山公演をお休みしてからはちょっとご無沙汰していました。
この童楽寺には大変志の高いご住職が居て、色々な事情で親元では暮らせない子供たちを預かっているお寺なのです。これまでにもここでは様々な子供たちに出逢いました。以前仏画の得意な子が私に書いてくれた弁財天の絵は、今でも我が家に飾ってあります。彼はどうしているかな~~。小さな、民家を改造して作ったようなお寺なんですが、笑顔の溢れるあったかいお寺なのです。
今回はこの童楽寺を卒業した若者も駆け付けてくれて3年ぶりの再会を祝いました。元気な姿でまた会えるというのは本当に嬉しいものです。今は職業訓練校に通って仕事を探しているようです。頑張れ!!
こういう場所があるというのはとても嬉しいです。またぜひ伺いたいと思っています。
玉津島神社奉納演奏の後には、先月に続き再びのアートキューブホール。玉津島でも演奏した日本書紀の衣通姫の歌と允恭天皇の歌の二曲をやってきました。途中は質問コーナーなどもあり、演奏会というよりはレクチャーコンサートという趣で、おしゃべりしながらのコンサートでした。ちょっと調子に乗り過ぎて雑学をしゃべりすぎたかな??
コンサートが全部終わってからは、海南市の山中にある蒲公英工房で一晩泊まってきました。まあ新潟の十日町の古民家も素晴らしかったですが、ここは上行きますね。山の中ではあります
が、玄関から前面がど~~んと開けていて、茅葺屋根の別棟もあるという素晴らしい環境。大変明るく、絶景なのです。夜は星々が無数に輝いて、空が近くに感じるほど。それに野生の熟し切った柿の甘い事!!
私の撮影ですので、この素晴らしさを表現するのは難しいのですが、将来はぜひこういう所に住みたいですね。
夜は動物の鳴き声や、虫の声、木々がざわつく音などに囲まれ、周りは街灯も何もないので、全くの闇に包まれます。この闇が何ともいいんですよ。都会には絶対無いのが、このまっさらな闇なのです。
昔の人はこの闇があったからこそ、星を、月を眺め、虫の声を聴き、木々のざわめきを肌で感じて、詩情を掻き立て、感性豊かに暮していたことでしょう。闇の中に居ると五感が鋭敏になって、動植物は勿論の事、山そのものが生きている事を実感できます。その中で我々人間は生かされている。そんなことを想わずにはいられませんん。

私がやっている音楽は、自然であることが大きなテーマです。だからマイクやアンプは極力使いません。場の響きと相まって音楽が鳴ると思っていますので、演奏する場にもこだわります。お寺や、雰囲気と響きの良いホール・サロンなどを狙って演奏会をやっているのも、琵琶の音がよりよく響き、聴いている人にしっかりと音楽が届くように考えているからです。場と音楽がおだやかに共鳴し合う事が、私の音楽の大前提なのです。それには音楽を演奏する場というものも大切な要素です。場に溶け合い、陽光にも闇にも溶け合い、聴きに来ている人皆に溶け合い、それでやっと音楽は音楽となります。どうだとばかりに肩書き並べて吐き出すような音楽では、何ものとも溶け合わないのです。

先月からの紀州ツアーでは、何処で弾いても琵琶の音が響き、届きました。音響的にはホールが一番でしたが、その他の所も、場に居る人々と共鳴し、琵琶の音はしっかりと鳴り響きました。
音楽を届けるというのは、いい仕事です。これからもいい仕事をしていきたいですね。