久しぶりにMet Live viewingに行ってきました。作品はヘンデル作曲の「ジュリアスシーザー」。いつにも増して素晴らしい作品でした。4時間半にも及ぶものでしたが、全く飽きることはありませんでした。

とにかく満足!観終わった後のこの充実感は気持ち良いです。
今回は全ての出演者のレベルが一様にハイレベルでした。誰か一人が舞台を引っ張るというのではなく、其々が魅力的に輝いている。その中でもクレオパトラ役のナタリーデセイは、やはりオペラ界を代表するスターですね。もう技術ではなく、その先を歌う事の出来る数少ない歌手と言えるでしょう。彼女の歌声は、音楽という枠を乗り越えて、そのままこちらの心に飛び込んでくるようでした。その他セスト役のアリス・クートと、コルネリア役のパトリシア・バードンの二重唱にも震えるほどの感動を覚えました。
加えて今回は演出が半端ない!!派手という事でなく、頭が柔らかいというべきでしょうか。とにかくMetならではの斬新なものでした。ナタリーデセイは振付をしながら歌うシーンが多くあり、そのブロードウェイばりの演出にびっくり。その他ラストシーンでは、死んだはずの登場人物も出て来て、全員が並ぶという大変面白い演出でした。
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どんなものでも支持されて行くものは、常に世の中と共に進化して行きます。ヘンデルというバロックを代表する古典作品でも、新しい演出で現代に甦り、現代の人を魅了するのです。形が変わり続ける事は世の常でありますが、時代に合わせ形が変わるからこそ、その精神と魅力が受け継がれて行くのではないでしょうか。
ダーウィンの進化論でも、強いものが生き残るのではなく、環境に対応できるものだけが生き残る、と書かれていますが、今日本の中で伝統と言われ、しっかりと伝承されている歌舞伎などを観ると、古典を継承しながらも、時代の変化にフレキシブルに対応しているのが葉はっきりと判ります。だから現代に受け入れられ、現代の人々に支持されて行くのです。琵琶楽はどうでしょう??。

世界の一流を見聞きすることは、私にとって一番の刺激であり勉強です。一流に触れると自分自身が良く見えてきます。自分の良い所やウィークポイントは勿論の事、自分の中の意外な視点や感性、嗜好、志向etc.自分という存在が、優れた芸術作品によってあぶり出されていくようです。

私はこれからの10年で自分の音楽を確立し、充実させていきたいと思っています。その為にも自分の中の「こうでなければ」「こうしなければ」という小さなこだわりを徹底的に排除して、ありのままの自分でありたい。正に正念場です。
Metはいつも私に感動と導きを与えてくれる。何時か私も、聴衆にそんな感動を持って迎えられる舞台をやってみたいな~~。