夏の放蕩三昧は大分抜けてきたんですが、スケジュールの合間を縫って相変わらずの観劇三昧の毎日です。先日Met Live Viewingのアンコール上映「カルメン」を観てきました。やっぱり良いオペラは観ると何だかスカッとしていい気持ちです。今回は後半でカルメンが言った「私は自由に生きて、自由に死ぬの」これにビビッと来ました!!
主演はラトビア出身のエリーナ・ガランチャ。もうカルメンはこの人以外に考えられない、という位にキャラから姿からぴったりでした。実に格好良い!!メゾソプラノは魅力ある人が多いな~。ジョイスディドナートと共にこれからもずっと聴いていきたい歌手です。
相手役のドン・ホセにはロベルト・アラーニャ。この人も正にホセにぴったり。今までの印象だと、ホセはただの情けない男という感じでしたが、彼の演じるホセはその姿に悲しみがありました。二人はもう「カルメン」ではコンビで何度もやっているそうで、実力はもちろんですが、いきがばっちり合っていましたね。
毎度のことですが、Metはレベルが高い。今回も脇役が本当に素晴らしかったです。なんと
3時間前に電話で代役を言い渡されたというエスカミーリョ役のテディ・タフ・ローズ。ホセの許嫁役ミカエラにはバルバラ・フリットリ。どちらも魅力ある声で、役にぴったりとはまります。ミカエラのアリアなんか惚れ惚れして聞いてました。
今回はスパニッシュダンスを踊る演出がありましたが、ガランチャのダンスはなかなか堂にいったものでした。こうした演技の細かい部分でも手を抜かない。全ては最高の舞台を作る為に、惜しみない努力をしていますね。今回はカルメンやホセの姿を観ていて、自分の普段表に出てこない部分が見えるようでした。カルメンみたいな人が目の前に現れたら、私はどうなってしまうかな???
日本の舞台もこれ位勢いが欲しいな、といつもオペラを観ると思います。
能は動きや感情表現を極限までそぎ落とすものの、描き出すものは仏教的な世界観で、観ている側を幽玄の世界に誘います。オペラは逆に表現がちょっと極端ですが、描き出すものがどこまでも現実に生きる人間ドラマに徹しているので、自分の人生が重なって、その世界に入り込んでしまう感じがします。其々に素晴らしい魅力があるのですから、是非我々の方からも、この日本の芸術舞台の素晴らしさを、魅力を世界に向けて発信して行きたいものです。
日本はまだまだ「芸術やるならギャラは要らないだろう」という考え方が企画側にも演奏家側にも根強くあります。それではレベルの高い作品は生まれようも無く、人材も育たない。観客も納得しない。もう10年前から声を大にして言っていますが、アイドルの卒業ライブやじゃんけん大会を垂れ流しするようなエンタテイメントの仕掛け人はもういらない。経済面芸術面をしっかりとクリアしてレベルの高い芸術舞台を作る事が出来るプロデューサーが必要なのです。今、そんな人が出てこないと、日本は文化の面はもちろん、国自体も落ちて行くだけでしょう。文化無き所に国家はあり得ないのですから。
もっと日本に舞台を、音楽を満ち溢れさせたいですね。