ただ風を思え

国立新美術館でやっている「具体」展に行ってきました。吉原治良率いる具体グループはこの間書いた日本のGolden ageの頃、社会を巻き込んで縦横無尽に活動を展開した前衛美術のグループです。

         gutai

「独創性を最も高く評価しなければならない。一切が自由で、方向は未知の領域であり、その発見だ」
この言葉通り、具体グループの作品は固定化された感覚、常識を覆し、来るべき未来を感じさせました。しかも今見ても全く色あせない。
こうした芸術作品に触れていると、音楽家がいかに保守的であるかが思い知らされます。エンタテイメントやショウビジネスと常に寄り添いざるを得ない音楽と、そういう影が無い美術を同じ土俵で語ることは出来ませんが、美術家の芸術的創造性と行動力はいつも自分の中に持っていたいものです。

         土方巽

時代を先導し、代表する人々は常に社会と共にありました。永田錦心、宮城道雄、土方巽、大野一雄、武満徹、黛敏郎、寺山修二、そして吉原治良etc.・・・。皆社会の中でその存在を表していました。固定化、形骸化された概念や形式では、推移し続ける社会とはコミット出来ません。どんな時も最先端であり続けることが、彼らの宿命なのです。

グタイピナコテカグタイピナコテカ
          ウズベキスタン イルホム劇場演奏会

目で見て、耳で聴き、鼻で嗅ぎ、舌で味わい、皮膚で回りを捉える。それは誰のものでもない自分だけの感覚であり、独自の感性へと繋がって行くのです。
「音楽とは叫びと祈りである(黛敏郎)」とは私の指針です。言葉では語りつくせない叫び・祈り、そして五感が感じたもの、そういうものが、時代を生きる感性と出逢った時に、音楽が生まれます。そして誰しもそんな音楽が沸き起こる泉のようなものを、心の奥底に持っているのだと思います。私は常にその豊饒に溢れ出る泉を自分の中に感じ、持っていたい。

          

Think of nothing things, think of wind
(何ひとつ思うな。ただ風を思え)by トルーマン カポーティ


和楽器 ブログランキングへ

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.