花粉が舞い飛ぶ日々の中、ぬくぬくとくすぶっていたのですが、昨日は雨で花粉の心配も無かったので、たまには外に出て見聞を広げようと思い立ち、Met Live Viewing ヴェルディの「エルナーニ」を観てきました。
左の男性ががエルナーニ役のマルチェッロ・ジョルダーニ。相手役のエルヴィーラには新人のアンジェラ・ミードという若手のお二人。ここに以下の二人のベテランが加わり重厚な舞台となっていました。
この方はカルロ王役のディミトリ・ホヴォロストスキー。独特の発声による見事なバリトンでした。
そして写真が小さいのですが、このバスのフェルッチオ・フルラネットが本当に素晴らしかったです。さすがの存在感。今回一番のお気に入りです。
ヴェルディの作品は大げさな感じではあるのですが、歌手の方も気合いが入るようで、「ヴェルディ歌い」と言われるヴェルディ専門に歌う方がいる位、特別なもののようです。日本人にはちょっと理解しがたいような展開、濃~い表現等満載ですが、言語も何も飛び越えて酔いしれることが出来ました。歌に関しての考察はまたいつか書きます。
Metの舞台を目指して世界中からオペラ歌手が集まり、オーディションでしのぎを削って役を獲得している。そんな新人が、主役としてドミンゴやパバロッティなどの超一流と共演するのです。肩書きではない、実力でトップにまで行ける、こういうシステムは実に素晴らしいです。受賞歴や肩書きで、格がどうのこうのと言っている所とは大違い。
もちろん監督はじめ、美術や演出のスタッフも最高の仕事をする。もう凄いクウォリティーに仕上がらない訳がないのです。そして劇場には溢れんばかりの観客が待ちに待っている。客席に居る観客の顔を見ると、オペラを愛し、Metを愛し、「これこそが我々の文化なのだ」と叫びたい位の喜びに満ちて、その時間を謳歌している。
この熱気、この充実、これこそが舞台!!。オペラが、音楽が人々と共にあるというのは本当に素晴らしいです。
日本では、音楽をやっていると「良いご身分で」なんて言われてしまうお国柄。特に邦楽は働く必要のない人がやって居る、というような現状が未だ続いています。少しばかり活動しているだけで、「プロです」なんて顔してまかり通る、そんな状態なのです。
今の日本の伝統芸能は、実はほとんど明治期に出来上がったものですが、日本人自体がそういうことも全く知らない。誇りを持ってオペラを味わい楽しんでいる観客とはあまりにも違いすぎると思いませんか。
私は、現代でも過去でも大衆芸能が人々と共にあるなんてのは、マスコミに操作された幻想でしかないと思っています。どんなタイプのものがあっても良いと思いますが、単なる流行ではなくて、我々が何代にもわたり、誇りに思えるような音楽が、この日本の社会の中に無いのがおかしいのです。
その場が盛り上がればよい、楽しいが一番・・・、そんな程度の音楽で満足ですか?私は嫌です。
Metのオペラを待ち望む観客のように、日本人が自国の音楽を誇りに想い、そしてそれを楽しめる。そんな国になって欲しいのです。
今日は元気をもらった!!