今年も一年お世話になりました。
この一年は、震災はもとより色々なことがありました。上手く行かないこともあったし、とても満足行くこともありました。とにもかくにも私個人としては自分の「原点」を再確認し、その第一歩を踏み出した一年でありました。
先日、思いがけず中学の同級生と再会しましたが、ブラスバンド部でコルネットを吹いていた少年は、朝から音楽三昧で、ギターを弾くかラッパを吹くかの毎日でした。今は楽器が琵琶に変わっていますが、今でもさほど変化していません。とりあえず自分らしい道を歩いているようです。
今年は楽琵琶のインスト(器楽)アルバムを出したことで、自分のスタンスがはっきりしました。私の音楽はやっぱり「かたり」や「うた」ではない。これがはっきりと確信出来たのです。
ファーストアルバムの「Orientaleyes」で目指した、琵琶のインスト音楽こそがやはり私の音楽です。表現はどんどん変わっていってますが、インストという部分は変わらない。10年の紆余曲折を経て、今回の「風の軌跡」のCDで再び原点に戻ってきたのです。
薩摩琵琶をやっていると、弾き語りをやらなければならないという、ものすごい強烈な呪縛があるのですが、それがこの一年で吹っ切れました。私は琵琶奏者です。歌手ではありません。うたも語りもやりますが、それはあくまで私の音楽の一部分。やはり琵琶の音を聞いてもらいたいのです。弾き語りも琵琶の重要な伝統ですので、その部分は語りの名手に今後の展開をお任せしたいと思います。
先日の杉並公会堂で、舞台上、背中かから響いて来る「アベベルムコルプス」の弦の響きに、す~と身も心も浄化されるような気分でした。そこには人間の情念やら、想いやら、そんなものをはるかに超えた世界がありました。宗教音楽といって良いのでしょうか。いずれにしろ生涯で一度はこんな音楽を作り、演奏したいものですね。
仏教も神の存在も所詮人間の作り出したもの、という方も居るでしょう。しかし人間界の喜怒哀楽のような世界では無く、もっと普遍的に人種も民族も越えて感じ合える、人智を越えたものを感じる音楽の素晴らしさは、誰もが認めるところだと思います。そこにアベベルムのように万国の人が感動できる「歌」ならぜひ入れてみたいですね。
琵琶は古よりシルクロードを渡り、色んな国で様々な音楽を作り出してきました。もう一度そんな琵琶の原点に立って、色々な国でその音色を響かせたい。それが私の仕事だと思います。
楽琵琶では「うた」が無いせいか、いつも喜怒哀楽という世界を何なく飛び越えていける。これからは薩摩琵琶でも、楽琵琶のようにインストの分野を確立したいと思います。
楽琵琶も薩摩琵琶も、その楽器としての魅力を世界に向けて響かせたいですね。単なる伴奏楽器では終わらせたくない!!
来年からのヴィジョンももうしっかりと見え始めました。すぐには何でも実現しませんが、もう何ものにも囚われることなく、がんがん行けそうです。乞うご期待!!
来年も宜しくお願いいたします。良いお年を。