北鎌倉古民家ミュージアムでの、CD発売記念演奏会、無事終わりました。
ライブの時の写真が無いので、レコーディングの時のものを。
今回はCDに収録された曲と、録音されながら、ノイズの関係で収録を見送った曲を演奏しました。演奏会場は、こんな展示ホールをお借りしました。
ここは古い農家を移築した美術館なので、太い梁や柱がふんだんに使われていて、静かでとても落ち着いた雰囲気なのです。また北鎌倉という土地が更にしっとりとした風情を感じさせてくれます。
庭もとても良い感じで、変に手が入っておらず、自然な感じが実に気持ち良いです。
毎年ここで演奏しているのですが、楽の音が響くと、庭から聞こえて来る虫の声や、落ち着いた空間から生み出される何とも言えない空気感が、かえって際立つようで、現世の次元を超えた空間が立ち現れます。
今回はオープニングとエンディングが、CDと同じように私の楽琵琶独奏でしたので、特に一音がゆったりと響き、最後まで精緻な空気感に包まれました。
それは正に夜音(よと)という言葉がよく似合うものでした。きっと平安時代の琵琶弾きは、こんな静かな秋の夜に琵琶を弾き、それを皆が聞いていたのではないでしょうか。
寒くも暑くもない、ちょうど良い今頃の夜は、琵琶の音にぴったりです。自分でもますます楽琵琶の響きが好きになってきました。
良い季節に、素敵な場所で演奏の機会をいただけるというのは、幸せですね。
この場所と北鎌倉という緑豊かな静かな街、そして足を運んでくれた皆様の多くの縁に包まれて響き渡る楽琵琶の音には、小さな「我」や「欲」等微塵も感じませんでした。
自分の想いや感覚を表現しようとする音楽も良いですが、もっと大きな世界に身をゆだねられるような音楽も良いものです。
現代では人間が何でも出来ると思い込んで、強い意志と行動力で願望を実現する事が美徳とされますが、それがどうも奢りのようになって、バランスを崩しているように思えてなりません。
私達は、多くの縁、この大地、地球に生かされてこそ存在している。我々を存在たらしめるものを「はからい」と言う人、「神」と言う人、色々な言い方はあるかと思いますが、目の前の喜怒哀楽を超えて、もっと「大きな世界に包まれ、身をゆだねている」と、ふと思わせる夜音が、心地良い演奏会でした。