よみがえる音色

先週の金曜日から今週火曜日までの五日間は、我が町 阿佐ヶ谷の七夕祭り。毎年この時期は地元でライブをやるのですが、今年は金土と二日間やってきました。

       阿佐ヶ谷祭り2阿佐ヶ谷祭り1
       商店街は凄い人出で、歩けないほど

金曜日は毎年やっているシェ・ルーで弾き語りライブ。土曜日はこのブログでもおなじみの蕎麦処 道心でライブをやってきました。
残念ながら写真を撮っている暇が無かったのですが、道心では先日亡くなった香川一朝さんも吹いてもらった場所なので、演奏しながら一朝さんの音色を想い出しました。

kotou5今の若手が使っている楽器は、同じ尺八といえども、楽器自体がかなり進化していて、音量もバランスも昔のものとはずいぶん違います。加えて皆しのぎを削るように精進していますので、音には力がみなぎっていて、もちろんびっくりするようなハイテクニック。皆さん個性はそれぞれですが、とにかくパワフルな演奏が現代尺八の特徴です。

それと比べると一朝さんの尺八は常に淡々と、静かに演奏するのが持ち味。ちょうど前回まで書いていた木田と竹山の三味線の違いのようです。
太い弦を張り、たたきながら大きな音でパワフルに押しまくる木田のスタイルは正に、今の若手尺八のそれと共通します。一方、一朝さんのスタイルは、竹山のように一見地味ですが、その音色は豊かで、月の光のように静やかに、ゆったりと響いて来ます。
若手でも本曲を熱心に勉強している人もいますが、みなさんやはりパワフルですね。横山勝也先生の影響もあるのでしょうが、一朝さんは横山門下でありながら、パワーに寄りかからない、独自の本曲のあり方を提示したと思います。今日はライブをやりながら、私の記憶の中の一朝さんの音色がまざまざと蘇ってきました。

一朝さんの音色は、音が出ているというより、空間に満ちているようでした。一緒に演奏している頃は、時に頼りなく感じた時もありましたが、今、若手の連中と一緒にやってみて、漂うような、満ちるようなあの音色が、いかに魅力的で素晴らしいものだったか、今更ながら実感出来たのです。

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仲間たちと一朝さんの満ちる音について話しましたが、そういう演奏をするには、やはり年季が要るとのこと。当たり前ですね。それを私は今頃になって感じられるようになったのという訳です。本当に情けないですね。いったい何を聞いていたんだ・・・・。

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一朝さんのあの淡い月の輝きのような音色はもう響くことはありませんが、きっと若手の連中は次の時代の音色を響かせてくれることだろう、としみじみと想った夏の夜でした。


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