初心忘るべからず

昨日は、阿佐ヶ谷のギャラリー田村にて、「塩高和之琵琶独演会」をやってきました。

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私が琵琶の活動を始めた時は~もうずいぶんと前ですが~東京ではなく大阪を中心に始めました。最初のCDを作った会社が大阪だった事もあり、とにかく小さなサロンコンサートを毎月5,6本やっていたものです。
当時色々とアドヴァイスをくれていた(もちろん今も)邦楽のプロデューサーさんが、「20人、30人位のお客さんの前で、ゲストを入れず一人で演奏しなさい。それも毎月のように」と、会う度に言ってくれまして、その方の助言を信じ(?)、せっせとやっていた訳です。
それはもちろん場数を踏むという意味もあったのですが、その恩師曰く、「小さいスペースでは上手い下手よりも、表情、所作、ちょっとした会話、それら全てがお前の音楽として受け取られる、だから演奏技術だけでなく、人を魅了する人間力をつけて来い!」と、いつもいつも説教されてました。今思えばありがたいことです。

今でもこういうサロンコンサートは大阪・東京でやっていますが、最近では一人ではなく、誰かゲストを入れたりしてやることが多くなりました。それも良いのですが、やはり自分で全ての責任を負い、且つ内容的にも充実したものをやる、そんな初心の頃にもう一度立ち返ろうと思いこの独演会を企画したのです。

5喜多村こちらは私の活動をお手伝いしてくれている、オフィス遠の音の喜多村さん。今回も事務的な事は彼女に任せたので、演奏に集中できました。

大阪でも、毎年の高野山でもマネージャーさんが夫々いましたが、やっぱりこういうプロデュース側の方と、しっかり連携をしてゆく事は大事だな、とあらためて思いました。

今回は、初めての場所での演奏ということもあり、オリジナル色はちょっと押さえて、琵琶の紹介という事も兼ねて、スタンダードナンバー的なラインナップにしました。

薩摩琵琶弾き語りで「祇園精舎」「城山」「壇ノ浦」、
独奏(唄なし)で「風の宴」、
楽琵琶で「啄木」
平家琵琶で「祇園精舎」
ラストはリクエストに答えてアンコールとして、楽琵琶で「春陽」

祇園精舎は薩摩の語りと平家の語りではずいぶん違うので、その辺のところも聞いていただきました。ラストに弾いた楽琵琶の「春陽」も、今までで一番気持ちよく弾けました。薩摩琵琶の方は絃が安定しなくて、ちょっと厳しかったですが、まあそういう時にこそ、私の実力が出るというもの。

お客様も、いつも聞きに来てくれている常連の方から、久しぶりの方まで沢山聞きに来てくれてありがたかったです。

4秦世和こちら錫の作家の
秦世和さん YABURE-SUZU – Hada Seiwa’s original tin works (yaburesuzu.main.jp)
「破錫」といって、独特の作風でがんばっている、これからの日本文化をになうアーティストです。伝統的であり、且つモダンセンスな作品を発表しています。

                                         6花川梅朝
こちらは日舞花川流の若き家元後嗣 花川梅朝さん。花川流は、長唄の初代寶山左衛門のご子息が始めた流派で、大きな流派ではありませんが、しっかり確実にがんばっています。私は四世寶山左衛門先生に随分お世話になり、先生が率いていた福原流とはお付き合いが深いので、何かと共通点が多く、話が盛り上がりました。

お客様の中には女子高生から80代のおばあちゃままで、色々な年代の人が来てくれました。男性も結構多かったですね。
いつも思っているのですが、普通の方にどんどん聞いていただきたいのです。もちろんマニアの方も大歓迎ですが、現代社会の中で普通に生きている方に、現代の感覚で聞いてもらってこそ、生きた音楽だと思うので、Jポップを聞いている若者にも「いいね!」と言われるような現代感覚を持っていたいと思います。今回はちょっとスタンダードな感じでしたので、次回はぜひ、いつものように私のオリジナルで、塩高和之の世界をたっぷりと聴いていただきたいと思っています。やはり「琵琶」を聴きに行くのではなくて、「塩高の演奏」を聴きに行きたい、と言わしめなくてはいけません。でもまあ先ずは、若者に琵琶の魅力を感じてもらえると嬉しいですね。

聞きにきてくれた方とコミュニケーションを取りながら演奏するというのは、私の演奏家としての原点。これからはこういう独演会をどんどんやって行きますよ。乞うご期待!!

               日の出富士

18歳までですが、静岡に居た頃は毎日富士山を見ていました。静岡以外の事を知らず、その頃はあまりに当たり前過ぎて富士山を見ても特に何も感激しませんでしたが、今、東京暮らしの方が長くなると、富士山も違って見えてきます。これが私の人間としての原点

初心忘るべからず。

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