
100回を節目として体制を変えて、毎月ゲストを迎え開催しているのですが、これまで色んな方が出てくれました。小さな会ですので充分なギャラも出せないのに本当に有難い事です。来年もほぼスケジュールが埋まりまして、内容も少しづつ変化してきています。同じ曲を演奏しても毎度同じ事をやるのではなく、常にその時々で変化して行くというのが私のスタイルであり、そのスタイルと精神は琵琶樂人倶楽部に於いても同様なのです。
先ず今年から古典講座の回をまたやり始めましたが、来年も平家物語、源氏物語について独自の考察を演奏と共に聴いて頂く回をやります。またずっと前に川崎能楽堂で毎年やっていた「アンサンブルまろばし」のレパートリーを、新たなメンバー(筝・尺八)で再現する回も予定していて、どんどん面白くなって来ています。毎回私がやりたい事だけをやりたいようにやっているのですが、ハイレベルなゲストの方々のお陰もあって、やる度に内容充実になって行きますね。また来年は新たなアルバムもリリースする予定で、オムニバスの二枚を入れると12枚目になりますので、これも一つの節目と考えて私の真骨頂である現代琵琶樂の新作の上演もどんどんやって行こうと思っています。
今月は私のメイン活動である現代作品の演奏です。もう最近では毎度の演奏会のパートナーと言ってもよい程に共演を重ねているVnの田澤明子先生、そしてMsの保多由子先生のお二人を迎えての演奏です。意外な事にこの3人の組み合わせでの演奏は、今回が初めてなんです。演目は昨年来再演を重ねている「Voices」この曲は震災詩人と呼ばれている故 小島力さんの詩に私が曲を付けたもので、昨年新横浜のスペースオルタで行われた震災関連の演奏会で初演しました。小島さんの素朴ながら生々しい言葉とどう対峙しようか随分考えて作曲したのですが、とても良い形になって嬉しい限りです。初演時には小島さんの娘さんも駆けつけてくれて、私にとっては一つの転機になるような作品となりました。初演は能管とMs&琵琶のトリオでの演奏でしたが、その後はフルートや尺八等とも演奏しまして、来年も3回程再演の予定が入っています。先日Vnとリハーサルもやりまして、なかなかの仕上がりになっていますので、ご期待ください。
「長く続いていますね」としょっちゅう言われるのですが、琵琶樂人倶楽部は会場が25人も入れば満席という小さな名曲喫茶ヴィオロンを借りて毎回開催していることもあって、特に集客活動をしなくてもまあ何とか毎回それなりにお客様が来てくれるので、毎月の運営がストレスになるようなことは全く無いのです。もう丸16年もやっていると私のライフワークですね。お稽古した曲を演奏する場ではないので、いつも自由に琵琶に興味を持つ方々や、様々なジャンルの芸術家が集ってきてくれるアートサロンのような感じになっています。だから毎回楽しいのです。私自身も毎月新鮮な気持ちで取り組んでいられますし、様々なゲストと演奏するので結構色んなチャレンジがあって、リハーサルもしょっちゅうしています。経済面に関しては収入にはならないのですが、この場から多くの繋がりが出来上がり、仕事にも繋がり、大きな視野で見ると琵琶樂人倶楽部は結果として私の活動を支えるベースになっているのです。2019年放送のeテレ「100分de名著」も琵琶樂人倶楽部に番組ディレクターが直接来て、出演の依頼をしてくれました。毎回終わってからゲストやお客様と軽く打ち上げに行くのですが、そこで色んな話が聴けるのも楽しいですね。
左の写真は2009年の11月。2周年の時の写真です。私が弾いている琵琶は五絃の錦琵琶の改良型なのですが、その錦琵琶の伝統を継承している都派の代表 都錦鳳先生にも出て頂きました。有難いですね。本当に色んな方が出てくれてかなり活発な交流をしてこれたことに感謝しかないです。この御時世で琵琶奏者としてこれ迄生きて来させてもらっているというのは、奇跡みたいなものだと常々思っていますが、約25年程琵琶で活動させてもらって、やはり次世代を育てなければいけないなという事です。幸い私の所には20代30代40代50代60代の方が集まってきているので、彼らに是非次世代を託したいですね。とにかくこれ迄、作曲と演奏の両面でやって来て良かったなと思っています。流派の曲がどれも私にはピンとこなかった事もありますが、琵琶をという自分にぴったりの相棒を得て以来、湧き出るように曲を創り、9枚(+オムニバス2枚)のオリジナルアルバムとなってリリースして来れたのは、本当に嬉しい事です。最初の頃は演奏も歌もへたくそだったことと思いますが、そんな私に声を掛けてくれた方々には頭が上がりません。ただ私は上手さを聴かせるのではなく、常に自分の作品を聴いていただく事をやって来ました。それが今でもずっと続いているのです。来年10th(オムニバスを入れると12th)アルバムもぜひとも完成させてリリースしたいです。
琵琶樂人倶楽部はそんな私のやり方を実演する場であり、支える場であり、「媚びない、群れない、寄りかからない」のモットーを主張する場でもあります。また近代~現代に成立した薩摩・筑前の琵琶樂と、樂琵琶や平家琵琶の古典の琵琶樂の違いもしっかりと伝えたいので、流派の曲=古典という安易な宣伝にもはっきりと意見をして、レクチャーにもどんどん力を入れていきたいと思っています。こうした姿勢は、勿論これからも変わりません。今後も琵琶樂人倶楽部をベースとして、自分の考えに乗っ取った活動を展開して行こうと思っています。
11月8日(水) 第190回琵琶樂人倶楽部「琵琶と洋楽器の新たな世界」
場所:名曲喫茶ヴィオロン
時間:19時00分開演
料金:1000円(コーヒー付)
出演:塩高和之(薩摩琵琶・樂琵琶)ゲスト 田澤明子(Vn)保多由子(Ms)
演目:二つの月~Vnと琵琶の為の
Voices~Ms、Vn,琵琶の為の 小島力の詩による
花の行方
君の瞳 他
是非お越しくださいませ。お待ちしています。