石州・長州路を行く

益田グラントワでの「戦国の宴」は無事終わりました。

島根グラントワs今回は、私には珍しくグループでの演奏。美術館のイベントでしたので、いつもの演奏会とは随分違いましたが、若手のメンバーとの演奏で、DSCN0849中でも「志人」(シビット)さんという現代の語り部の方と面白い共演が出来ました。(右写真)。新しい才能はどんどん生まれてくるのですね。皆さんとても柔軟な感性を持っていて、今回の舞台は良い経験となりました。視野が世界に向いている人はやっぱり素晴らしい。こういう人たちと舞台をやって行きたいですね。

この公演の後、ちょっと予定が空いていたので、萩、長門へと足を運んで、楽しんできました。
山陰はなかなか行く機会が無かったので、今回の公演の後は、是非色んな所を見て回ろうと思っていました。公演もさることながら、終わってからの旅行もとても楽しみにしていたのです。先ず演奏会の前、旅の最初に新山口から山口線の普通列車に乗って益田まで行ったのですが、湯田温泉を過ぎてから長門峡、津和野辺りまでは、両側に山が見え、里にポツリポツリと石州瓦の家があって、絵に書いたようななんとも良い風情なのです。ちょうど天気も晴れてきて、出だしから実に気持ちが良くなりました。津和野に来た頃から少し雨が降ってきましたが、ローカルな路線はどこの県に行っても素晴らしい景色が拝めますね。今回も一人だけ駄々をこねて陸路で行きましたが、やはり鉄道で行った甲斐がありました。

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公演後は萩へ。実は萩は初めて行きました。時折霧雨のような雨が降る中、静かな町を歩き回りました。上の写真は萩の指月城跡の裏手に広がる海です。城下町の風情があり、しかもすぐ近くに海があるというのは素晴らしい!!。街の中は維新で活躍した人の看板が目立ち、維新で売り出し中という感じでしたが、私はそういうものより町並みや城跡、港の方に惹かれますね。写真が無いのですが、中心部から少し離れた所には港があって、そこから見える萩の内海が美しかった。山陰の海は大小の島々がすぐ近くにあって、それが夕方の日差しの中にかすみ、本当に心癒される風景でした。素朴ではありますが、こういう体験こそ旅の醍醐味ですね。
そして萩では東京に長く住んでいたというおばあちゃん二人に遭遇。色々お話を聞かせてもらいました。一人の方には帰り際にもばったり。何かの縁でもあるのかな?と大笑いでした。こういう出会いも楽しいですね。

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そして萩からバスに乗って長門市の仙崎の港へ。ここから遊覧線に乗り、「海のアルプス」と言われる青海島を巡りました。この日はちょっと波が高いので遊覧船は外海には出れなかったのですが、外海との境界線に来たところで船がものすごく揺れて「こんなに内と外では違うのか」とびっくりしました。この海を渡って大陸と交易をして、人や物が行きかったのかと思うと、感慨深いものがあります。上の写真は外海に出る手前の岩です。大小色んな岩がごつごつとあって、ちょっと他では見れないワイルドな風景でした。とにかくこの風景を観ることが出来て大満足です。

山陰は派手さは無いけれども、しっとりとしていて魅力的ですね。益田から萩へは海岸線を通る山陰本線で行きましたが、この沿線沿いも勿論大小、岩や島があって実に美しいのです。これは我が静岡では拝めない貴重な景色ですね。見ているだけで、自然に抱かれているという気持ちが沸いて来ます。勿論海が近いので魚も美味しい!。特に萩で食べた「平太郎」という小さな魚はお酒にぴったりで、気に入りました!!!。また山陰に行く機会があったら、今度はぜひ内陸の津和野もゆっくりと観て回りたいと思っています。

帰りはいつもの定番で奈良に寄って帰りました。時間も無く、あまり回れませんでしたが、高畑の先にある柳生街道の入り口「滝坂の道」を歩いてきました。

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こんな感じで、ちょっと幻想的な雰囲気がいいんですよ。以前柳生の里には行ったことがあるのですが、バスで行ってしまったので、その里へ続く道をぜひ歩きたいと思っていたんです。
6道の途中にはこんな磨崖仏がいくつかあり、人々がここを通って奈良の都に出て行った営みの歴史を感じます。以前歩いた「山の辺の道」も素晴らしい景色でしたが、この「滝坂の道」は山の中を行く道で、ちょっと孤独で何かが出てきそうな神秘的な風情が私の好みにぴったり!!。
都会に住んでいると見えないですが、日本には素晴らしい歴史を感じさせる場所が無数にありますね。なんたって世界一長い歴史を持つ国ですから。奈良平安から、中世、近世、近代と観るべきものはいくらでもあります!!!。
土地に生きる人々の営みを感じる素朴な場所には何ともいえない風情を感じます。淡々と歴史を刻んでいるからでしょうね。歴史は積み重なってこそ歴史となるもの。作為を持って無理やり売り出し、張りぼてで飾り立てても、賑やかし以上になりません。私はそういうものには何も心惹かれないのです。

音楽も文学も歴史を重ねた古典はやっぱり味わいがあります。先日も、とある方と源氏物語の「野々宮」について楽しくおしゃべりしましたが、人間の価値観は時代と共に変われど、それでも尚、現代にも通じる奥深さこそ古典の魅力だと思います。その時々でのイデオロギーや流行ではなく、人間の根幹の感性を土台としているものだけが古典として残ってゆくのです。古典のようなふりをして、宣伝し格好つけているものが如何に滑稽か・・・。観光バスのルートになって、派手な看板を立てて土産物屋でグッズを売っても、それは所詮上塗りのメッキでしかないのです。
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二月堂の階段
私の音楽はあくまで私の創ったものではありますが、現代の形と感性を持っていながらも、土台には千年以上に渡る琵琶楽の魅力を何かしら湛えているものでありたい。そして形だけ過去をなぞったものでもありたくない。
そんな現代に息づく音楽を創り、演奏して行きたいですね。
心洗われる旅となりました。


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