今週は山形の鶴岡市にある本鏡寺にて演奏してきました。山形はもう15年ほど前に米沢の置賜文化ホールで演奏して以来ですので、とても楽しみにしていました。

今回は新潟まで新幹線で行って、新潟から特急いなほに乗り、羽越本線に入って鶴岡に向かいました。日本海側を走るのですが、日本海は乗り鉄としては実にぐっとくる風情なんです。私が育った駿河の凪の海とはまた違い、ごつごつした岩が海岸線近くに在って、これが良い感じなんですよ。ずっと眺めていられますな。考えてみれば日本海側は随分と行っているんです。九州・山陰・北陸と結構色んな街に行ってます。長門から遊覧船で少々荒れた海に出たのも面白かったし、良寛さんの足跡を訪ねて行った出雲崎も良かったです。中でも新潟から村上まで車で連れて行ってもらった時に見た、海に沈む夕陽は忘れられませんね。感動しました。日本の風景は海山共に飽きる事がないですね。

鶴岡は歴史のある街で、お堀や城跡などが駅の近くにあり、古い建物も結構残っていて、落ち着いた古の風情が好きな人には魅力的な街です。今回、街はあまり散策する時間が無かったですが、今度行く機会があったら是非街をぶらついてみたいです。
演奏会の後は地元出身の詩人 茨木のり子さん縁の「新茶屋」さんで打ち上げ。次の日には念願の羽黒山にも連れて行って頂き満喫。斎館という所で精進料理も頂いて来ました。勅使の間という素晴らしいお部屋を取って頂いて、料理長の方が直々に料理の説明に来てくれましたので、ゆっくりじっくりと味わってきました。
ああいう自然の中に身を置くと身も心も整いますね。都会に帰ってくると、やはり東京は空間が全く無く、ひずみが半端ないなと感じます。未だに右肩上がりの経済成長こそが発展だ、豊かさだと世界中が血眼になって争っていますが、もうそういうセンスでは次の時代は訪れません。きっと多くの方がそう思っているのではないでしょうか。次世代の哲学と感性が必要だと感じてなりません。
出羽三山は是非とも行ってみたい所でしたので、演奏会は元より、念願かなって良い旅となりました。今度また行く機会があったら、次は月山に行ってみたいです。
有難い事に、月に1,2度はこうした演奏会に恵まれ、毎月の琵琶樂人倶楽部も順調にやらせてもらっています。年を追うごとに、この道で生かされている事に感謝を感じますね。目下の目標は秋に予定している10枚目となる(オムニバスを入れると12枚目)オリジナルアルバムのレコーディングで、着々と中身を充実させるべく進めているのですが、とにかく納得できる充実した活動をやって行きたいですね。
私が日々何をしているかというと、色んなものや身の回りのもの等、自分が気持ち良く居られるように整えているのです。まず一番は楽器のメンテナンスと譜面の見直しです。楽器の具合が整っていないというのは仕事の上では勿論の事、精神的にもよくありません。後は撥先の様子を見たり、ノミを研いだり(ついでに包丁も)と色々やる事はありますね。こういう事が面倒だという人は琵琶弾きには向かないかもしれませんね。
その他、いつも思いついたことをノートに書き留めていて、あれこれのんびり考えているんですが、新たな曲のイメージや構成、イメージ初演時のシミュレーションなど書き綴ったり、次のアルバムのリリース時期や、この先どんな感じで展開して行きたいのか、いつも自分で書いて自分で確認しながらやっています。本当に有難い事に、自分で思う以上に様々な形で声を掛けてもらっているので、ノートに書いた内容が自然発酵して、更に発展して、その都度書き直したりしながら日々の行き先について思いを巡らしています。こんな日々がもう25年程続いています。
身の回りを気持ち良くしておくことは私には大事な事で、どんなものでも必要以上に持たないようにしています。まあこうして日々自分の身の回りを含め、音楽活動をやってゆく上で、より良い形で居られるように日々整えるのが、長く続けられる秘訣です。
活動内容も、よく考え今後を見据えて行かないと、自分が納得してやりたい事を実現して行けません。舞台人は日々舞台に立っていると楽しいし、目の前は充実しているので仕事をこなす事で満足してしまって、自分のやりたい事を見失ってしまう人が多いものです。作品を遺せない人もとても多いのです。
今回の鶴岡公演は、知らない内に東京で溜まっているストレスを開放し、本来の心身を取り戻し、整えることが出来ました。有難い経験でした。
さて、来週の琵琶樂人倶楽部では毎年の恒例となりつつある平家琵琶の会です。今年も津田惠月さんに演奏してもらいます。演目は「大原御幸」。ここは平家物語の中でも屈指の名文と言われるところで、文章を読むだけで平家已然音古典とつながって行く素晴らしい場面です。難しい事はさておき、こういう所を実際に耳で聞いて頂く事はなかなかないので、是非お越しくださいませ。また今回は「大原御幸」だけでなく、そもそも平家物語とは、という入門編的なレクチャーもやります。
2024年6月12日(水)
場所:阿佐ヶ谷ヴィオロン
時間:19時開演
料金:1000円(コーヒー付き)
出演:塩高和之(レクチャー)ゲスト 津田惠月(平家琵琶)
演目:大原御幸 祇園精舎
お待ちしています。