コロナも一段落着き、GWの観光地はかなりの人出だったようですね。コロナがもたらしたものは良い事も悪い事も含め大きな変化をもたらしましたが、いずれにしても新しい時代が動き出したという感じがしています。個人的にはもうこれまでのセンスの延長上にはもう居られない、という気分です。この3年間は私にとっては半ば強制的に今後の方向性を見直せさせられた時間でした。そしてそれは決して失われた時間ではありませんでした。
先ずはちょっとお知らせから
先ず今月の27日に久しぶりに季楽堂季楽堂 KIRAKUDOWにて、朗読家の櫛部妙有さんの会があります。演目は「傀儡谷」を再演します。この作品は琵琶の音色が良く合い、以前も大変評判が良かったものです。私のHPのスケジュール欄に詳細が載っていますので、是非お越し下さい。また会場の季楽堂は古民家を改築したこれまた素晴らしい場所なのです。お勧めですよ。
そしてもう一つレクチャーコンサートがあります。私は琵琶を始めた頃からレクチャーの仕事を多くしていまして、毎年大学や市民講座などでやらせてもらってます。来月も鶴見にある総持寺で「源氏物語と音楽」というテーマでやりますので、ご興味のある方は是非お越しください。笛の大浦典子さんをサポートに迎えて、演奏とお話でやらせてもらいます。詳しくは私のHPのスケジュール欄を御覧ください。
やはりこれから大切な事は、ヴィジョンの設定という事に尽きるかと思います。また年齢を重ねて来て、肉体的な変化も感じるようになってきた事も大きいかと思いますが、時間の捉え方が大きな結果の差を生むという事を、このところ実感しています。
例えば何か明確な目的があって、その為に3年間失敗し続けても人はそれを「費やした」と表現しますが、目的が漠然としたままで過ごした3年間は「失われた」と表現します。私はいつも書いているように、結構のんびり散歩したりゴロゴロしている事が多く、このGWもビールを飲みつつ作りかけの曲を書き直しました。3回譜面を書き直して結局完成出来ませんでした。でも無駄な時間を過ごしたとも思わないし、むしろ曲が成熟してゆく過程を実感したので、何だか新たなものが生み出せそうな気がしています。
30代の半ば辺りにやって組んでいたグループ Orientakeyes
かく言う私も20代や30代の頃は、「何か成果を出さなくては」「活動をしている実感が欲しい」と常に焦りが拭いきれずネガティブな感情に支配され、日々失われて行く時間に追い詰められていました。30代半ば過ぎから琵琶で活動を展開し、色んな所を飛び回って大ホールで演奏したり大きな企画イベントに出演したりすようになって、とにかく嬉しかったし充実感も出て来ましたが、振り返ってみると、結局私はちょっと人より器用に弾けるから声を掛けられたに過ぎないと思えてなりません。エンターティナーの方は舞台に立つ事こそが第一なのだと思いますが、私は同じ舞台人と言えど、エンタティナーではないので、最後には舞台に立つ事よりも自分の作品をどれだけ創り出し、それを遺して行けるかという事が本当の私の目的なんだなと感じています。
私個人は有り難い事にこの3年間、実は結構忙しくて、地方公演も沢山ありましたし、ライブ・レコーディング・レクチャーと飛び回っていました。お仕事を頂いて舞台に立てるというのは音楽家としてとにかく嬉しいの一言ですが、この3年間を通してみて、激流のような世の流れを肌で感じながら、やはり作品を創り遺す事に意識を向けざるを得ません。
これまで作曲作品を録音リリース出来た事には、とても喜びを持っています。ネット配信により世界に作品が出て行く時代になったことに感謝しかないですね。私の作品はほとんどが器楽曲ですので、世界に出す時に一番のハードルになる日本語に関する心配が無いのが幸いしています。隔月で売り上げレポートが来るのですが、この3年間で随分と上がりました。先月は今迄の最高の売り上げだったようです。とはいってもショウビジネスという訳ではないので微々たるもので儲かりはしませんが、海外の方に聴いてもらっているのが本当に嬉しいです。ここ5年程で世界がマーケットだという事を実感できるようになり、視野が大きく広がった事は今後の私の活動に大きな、そして大事な要素となったと思っています。そのお陰で自分の作品を改めて見直し、今迄やって来たことが、間違っていなかったと実感しています。
先月非公開の極プライベートな演奏会があり、Vnの田澤明子先生と二人で演奏しに行ったのですが、最後に演奏した拙作「Eaynak~君の瞳」は会場の抜群の響きもあいまって今迄で最高の演奏でした。その時に自分の作品が熱狂を持って受け入れられた事を実感し、改めて自分の作品の可能性を発見しました。田澤先生の演奏はそれはそれは素晴らしく、ちょっと狂気を感じる程のエネルギーを発していました。そして彼女が本当に第一級の演奏家であるという事も改めて認識しました。あのレベルに至るまでどれだけの努力と時間を費やしてきたのだろうと、毎回演奏を聴く度に思います。田澤先生の演奏を横で聴きながら、やはり私は琵琶の演奏は勿論ですが、琵琶の器楽曲を書いて、琵琶樂な新たな世界を作って行く事が使命なんだと感じました。
本番はこれからという感じですね。色んな事が皆さんそれぞれにあったと3年間だと思いますし、もしかするとある種の分断が社会の中に生まれたような所もあるかもしれません。今の社会は日本も世界も本当に様々な問題を抱え、国同士でも一個人同士でも判りあえない事が多々あると思いますが、この3年間は実りのある次代への必須な時間だったと思っています。これからが楽しみです。