創るということ2019

今年は年明けから舞台が続いています。先週、日舞の花柳面先生とシアターXにて「時の記憶」という新作を上演して、昨日は琵琶樂人倶楽部で「薩摩琵琶三流派対決」をやってきました。

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年明け早々に新作の上演というのも気持ちが引き締まって良いですね。面先生とは久しぶりの共演でしたが、さすがの存在感で私自身も充実した演奏をすることが出来、とても良い舞台となりました。多分この作品はもっと練り上げ、また大きくして、あらためて舞台にかけることになると思います。ご期待ください。
琵琶樂人倶楽部は毎年年明けに石田克佳さんを迎えて、薩摩琵琶三流派聴き比べをやるのですが、終わってからの新年会が楽しみなんです。今回も月心さん、愛子姐さんなどおなじみの琵琶人が集り新年の幕を空けることが出来ました。皆さん熱い心を持っていらっしゃるので、琵琶談義もなかなかに盛り上がりました。

今年も幸先の良いスタートを切る事が出来て嬉しい限りです。そして今年は例年になく創作の年になりそうです。色々と構想がありますし、発表の場も考えておりますので、自分の思う琵琶楽のスタイルがより明確になる一年になると思います。

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キッドアイラックホールギャラリーにて
よく「どうすれば曲が創れますか」という質問を頂くのですが、何時もどう答えればよいか迷います。知識や技術の面は勉強すればよいと思いますが、それだけではなかなか自分の想いを表現する作品は創れませんね。先ずは何をやりたいのか、どうしてそれをやりたいのか、そんな問いかけを自分自身に向かって深めていかないと、その時々で格好いいと思う表面の形だけを作って終わってしまいます。またお勉強の成果を見せ付けるような作品もいただけません。人それぞれにやり方はあるかと思いますが、この辺は何か物を作るときの根本かと思います。まあ自分の中にどれだけ強い衝動を持っているか、そこに全てはかかっているんじゃないでしょうか。

また何かを創るには、膨大なまでの無駄な時間が必要です。世間的には遊んでいるように見えるかもしれませんが、朝からごろごろしたり、Youtube観てボーっとしたり、散歩に行ったり、旅行に行ったり、お酒を飲んだり・・・衝動が湧き上がるまで、のんびりしていられるようでなくては、発想も浮かびません。私が梅だ桜だと追いかけては歩いて廻っているのは、そういうことなのです。そんな風に無駄ともいえる時間を平気で過ごす事が出来ない人は、創作よりも別の方向に向かう方が良いかと思います。

1吉野梅郷
今年の梅はどうかな・・・?

日本人はとにかくきちんとしているのが好きで、枠外のものを認めようとしないし、自分が枠外に行ってしまうと気持ちが落ち着かず、何も出来なくなってしまいます。もちろんそれには良い面もあるのですが、芸術的には、体裁ばかりつけているようでは何も創り出すことは出来ません。グローバルな視点から見ると、日本人は一人で何事も決定して、自分で責任を持って行動する事が大変苦手な民族と言われているようですが、音楽の世界を見てもなるほどと思います。ものを創り出すには、先ずは自分自身が精神的に自立している事が大事ですね。どこかに所属して、自分の位置が見えていないと自分が保てないようでは、世の常識を軽々と飛び越えて行くことは出来ない。自由で大らかな、そしてぶれない心が是非欲しいものです。それが何より作品創りのベースだと思います。

柿田川6ぶらぶらしているように見えても、常に次の構想は頭にあるし、アイデアも頭の中にしっかりあります。ただそれが動き出さない時にはのんびりしているしかないという訳です。しかし一旦動き出すと、泉が沸きあがるようにアイデアが形になり一気に譜面を書き上げます。出来上がってしまえばそれを、どんどんと推敲して行くことが出来ますので、その時が来るまで待っているのです。日々稼ぐ事も必要ですが、「その時」が待てないようでは、物は創れません。何事も目先のものを追いかけ、毎日きちんと仕事をこなして満足しているようでは、何かを生み出す事は難しいですし、かえって心は貧相になるものです。

また一方で、音楽活動をするということ自体が自己顕示欲があってこそですから、上手に弾いたり、有名になったり、お金を稼いだり、限りなくそういう欲に振り回されてしまうと、本当に自分の表現を忘れてしまいがちです。私の小さな目で見渡しても、自分の音楽を心底やっているな、と思える音楽家はごくごく僅か・・・。ちょっと活躍して喜んでいる程度。私はそんな風に見えます。

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カリブ海、船上より

琵琶楽には新作がほとんどありませんし、特に芸術音楽として発表されるものは皆無といってもよいかと思います。是非囚われの無い自由な感性で、次世代の琵琶楽が生まれて行って欲しいものです。創作心が湧かず、ぶらぶらしたい時には声をかけてくださいまし。同じような仲間とつるむのも時には良いものです。

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灰野敬二・田中黎山各氏とサウンドシティーアネックスT1スタジオにて

年を重ねるごとに自分の歩むべき道が明確になってくるのは嬉しい事です。私はどうひっくり返ってもエンタメ系の感性は持っていないし、もう若い頃からそういう芸能系の音楽は嫌いでしたので、その手の仕事はお断りしています。これ迄ルールもしきたりも関係なく、自分が思うようにやって来たからこそ今があると思っています。もっとわがままに自分らしく今年も駆け抜けたいですね。

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