最近は何をやっているかといえば作曲です。夏は演奏会も少ないし、この暑さでは外にも出られませんので、私がやれる事といえば作曲する位です。今手がけているものはデュオ曲を3曲、独奏曲を1曲位ですが、ふと様々なイメージが頭に色々浮ぶので、同時進行でこの4曲の譜面を日々書いて推敲しています。
ウズベクスタンの首都タシケントにあるイルホム劇場にて 「まろばし」演奏中 指揮 アルチョム・キム
まあこの中から実際にレパートリーになって行くのがいくつあるか判らないですが、とにかく創り続けて行く事が私の音楽活動です。今あるレパートリーをもっと練り上げて行く事も大事ですが、それも常に考察を重ね、研究して深めて行かなくては、ただの手慣れたお稽古事に陥ってしまいます。作曲にしても練習にしても創造性を常に持っていないと音楽家では居られません。
今迄作曲したものはゆうに100曲は越えていると思いますが、ヴァ―ジョン違いなども含めレコーディングまで持っていけた作品が7・80曲ほどあります。しかしその中でもよく演奏するものは更に限られてきますね。なるべく多くの機会を作って、これ迄創った作品を取り上げているのですが、メンバーもレコーディング時とは変わってくるので、その都度、多少の編曲も加えながらリハーサルもしてやってます。毎月の琵琶樂人倶楽部がその良い機会になっています。
どんな演奏会でも常に演奏するのは最初に作曲した「まろばし」位でしょうか。未だに「まろばし」は演奏する度に刺激がいっぱいで、その時々でどんな展開になるか判らない。だから飽きるという事がないし、この一曲から多様なまでの世界観を味わう事が出来るのです。
Viの田澤明子さんと8thアルバムレコーディング 於:FEIスタジオ
琵琶での演奏活動はもうそろそろ30年に手が届く位迄来て、アルバムも10枚が出来上がりましたが、創り上げるととたんに、また次の世界が開け見えて来るのです。8thアルバム「沙羅双樹Ⅲ」では、Viの田澤明子先生と録音した「二つの月」を収録したのですが、レコーディングしている最中から確かな手ごたえを感じていたので、直ぐに次のそのまた次のアルバムのアイデアが浮んで来ました。今年リリースした10thアルバム「AYU NO KAZE」は、私の想う世界を良い感じで表現出来たと実感していて、一つの到達点に来たと思っていますが、それでももう頭の中は次のアルバムの構想が浮んできてノートにあれこれ書き込んでいます。
こうした創作の原動力は色々あるのですが、曲を作る大きなきっかけが言葉なのです。今回は独奏曲を創る過程で「彷徨ふ月」というタイトルを思いついた事で、イメージが一気に明確になり、そこから色んなストーリーや情景・色彩等々次々に見えて来て、この曲を創り演奏する意味が見えて来ました。元々月のイメージが漠然とあったのですが、この「彷徨ふ月」というタイトルは、8thアルバムに収録した独奏曲に付けたもので、上記のViとのデュオ「二つの月」のモチーフを使って、それを独奏曲にしたものだったので、収録語色々と考え、「二つの月~琵琶独奏」というタイトルに変えました。それで「彷徨ふ月」というタイトルが宙に浮かんだままになっていたので、それを今書きかけの譜面のタイトルに据えた所、瞬く間にイメージが広がってきました。8thアルバムに収録した独奏曲との関連性も出てきて、延長線上にあるような一つの流れも感じています。不思議なもので、言葉一つでイメージが湧いてくるんです。
「Voices]を歌ってくれたMsの保多由子先生と Photo新藤義久
タイトルは私にとって作曲の重要な要素の一つです。タイトルが付く事で曲にストーリーが生まれ私の中に一つの命として動き出すのです。今年リリースしたアルバムの中の「Voices」も、小島力さんの歌詞のインパクトもさることながら、「Voices」というタイトルを思いついたことで音が溢れ出してきました。言葉はたった一言で大きなイメージを与えてくれるのです。私は歌の曲はあまり作曲しませんが、言葉の持つ世界やイメージは、作曲する上でとても重要な要素だと感じています。
世の中には良い言葉が沢山あります。日々の読書は欠かせないですね。