風の行方

私は風がいつも気になります。何とも形容しがたいのですが風を身に受けると、様々な感覚が湧き上がってくるのです。時々「あの時の風だ」と、過去のある瞬間がデジャブのように蘇って、時間を超えてそこに行ってしまうような感覚を覚えます。私は日ごろから陽の光や雨、雪、曇り空等、その時々の天気気象によって本当に色んなものを感じてしまう方なのですが、なかでも風は一瞬で私の感覚をどこかに連れ去って行きます。不思議ですね。私の曲名に風が多いのも風に敏感なせいです。風という存在には、国境は勿論、常識やルール、更には時間、時代も越えて行くようなイメージがあり、何物にも囚われない自由の象徴でもありますので、私にとって音楽を創り出す時のイメージの源泉なのです。

風を感じたライブ ダンス:牧瀬茜 ASax SOON ・Kim各氏と キッドアイラックアートホールにて

今年は、少し視点を変えつつ色んな活動をして行こうと思っています。昨年より時々書いている声と琵琶の作品をもう少し膨らまして私のソングブックのようにまとめてアルバム化したいと思っています。声楽家は10thアルバム「AYUNOKAZE」で素晴らしい声を聴かせててくれた保多由子先生に加え、30年近く前に作曲した琵琶二面と声の作品「太陽と戦慄~二面の琵琶と女声の為の」(初演:両国国技館ホール)を歌ってくれた南田真由美さんにも参加してもらってと思っています。もう一人くらい語りの人も入れたいですね。 他には私の本筋である現代邦楽の作品集も考えています。すでにViとのデュオは新たに1曲出来ていて、他にも構想がいくつか出て来ました。

それともうすぐリリースされる「REFRACTIONS for BIWA, TÁROGATÓ and ELECTRONICS」のようなちょっと前衛的なライブもやっていきたい。という訳であれこれとまだまだやりたい事は次々と湧いて出てくるのです。

メゾソプラノの保多由子先生と琵琶樂人倶楽部にて

私の場合、大体いつでも物事は並行して進行して行くので、今年もとにかく旺盛に作曲をして行く事になるでしょうね。年齢を重ねて来たからかもしれませんが、ライブであちこち飛び回るよりも、作曲して作品を遺して行く事にかなり意識が向いてきました。ライブは毎月の琵琶樂人倶楽部の他、月にもう一つか二つ納得できる内容の演奏会を続けていきたいですね。ライブハウスみたいな所は今の私には向かないので、小さくとも静かな落ち着いた場所での演奏が増やして行きたいです。とにかく色んな曲が誕生するのは実に嬉しいのです。

こんな風にワサワサやっていると、それが形になって表れれて来ると同時に、自分の行くべき道もどんどんと明確になって行くのです。アルバムを出し始めた25年程前にもう道は見えていたのですが、現代作品だけでなく、樂琵琶を使った創作アルバムや薩摩琵琶弾き語りのアルバムを出したことで私の中で幅が出来て来て、それが昨年リリースした10thアルバム「AYUNOKAZE」に繋がって行ったのです。

私の作品は伝統邦楽とは随分違いますが、前衛ともまた違うと思います。西洋の前衛は私には、どんどん無機質な方向に走って行くように思えて、人間ばかりが強調されてなかなか風土や大地が見えて来ない私は海でも山でもジャングルでも皆それらは生命体であり、人間と共に呼吸し、人間はその中で共に生きているというような感覚でいるので、いわゆる現代音楽からは大分離れてしまいました。アルボ・ぺルトが出てからまた面白くなって聴き出していますが、人間と人間ならざるものという区別をもって相対するものには捉えたくないのです。現代文明は自然に対し容赦なく破壊し、人間に都合良いように変えてきました。かつての日本にあった里山のように人間と動植物が共存できる空間はなくなり、人間第一主義で何でも物事を考え、便利の名の下に、自分以外のものの破壊と排除を推し進めて来た結果が今のこの現代の地球の姿ではないでしょうか。その感性ではもう間もなく生命としての地球は死んでしまう。風も自由に吹き渡ることが出来ませんいつまで経っても覇権争いをするような感性では次の時代は望めませんだから忠君愛国や軍国的な歌詞などは全くもってナンセンスだと思っています。私に何が出来るという訳ではないですが、どこまでもこの風土と共に生きる感性を次世代へと繋げて行きたいですね。繋げるためには形を変えて行く勇気と創造力が必要なのです。

2011年相模湖交流ホールにて 6thCD「風の軌跡」録音時 笛の大浦典子さんと

さて、週末は静岡県袋井市メロープラザにて、笛の大浦典子さんと共に演奏します。戦の歌ではない琵琶の音楽を是非とも聴きに来てください

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